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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【三話】貪食と喜悦。
31/269

(31)最大の功労者へ感謝を

《本当にあの化け物を倒したのか⁈》

「うん。仇、とったよ」

《ありがとう、本当に。なんてお礼を言えばいいのか》

「それからね、ユウからガイストさんに話があるみたい」

《俺に?》


ガイストさんは不思議そうな顔で俺を見た。


「はい。ガイストさん、貴方のことです」

《……?》

「結論から言いますね。あなたは、隊長さんの最期の命令を果たせたようですよ」

《そんなはずは無い。現に俺は》

「まあ聞いてください。あの魔物は、腹が減ると周囲の命を食ってエネルギーにしていたんです。人間も対象です。でも、あいつに襲われたはずの貴方の遺体には欠損はおろか、傷一つさえ無かったんです。怪我した足を除いてね」

《……?》

「つまり貴方は、あいつに襲われはしたものの、殺されたわけではないんです。あいつは命を食います。命だったから貴方を追ってきた。でも、食われる前に命じゃなくなったのだとしたら?」

《命じゃなくなった?》

「要するに、肉体から魂が抜けたなら? 残った体は命ではありませんよね。だから奴の興味から外れた。そう考えると一つ、辻褄の合う答えが見えてくるんです」

《答え?》

「貴方の能力です」


能力はまだすべての人類に備わっているものではないし

持っている人間も偶然発見しなければ自覚できない。


ガイストさんは、強いて名付けるのなら「幽体離脱」のような能力を

自身が持っていることに気が付かないでいた。

それがあの時、自責の念と悔しさで開花し、気付かぬ間に肉体から脱出できた。


「見せてもらった記憶では、最後に意識が途絶えましたよね。亡くなったとは限りません。それに、貴方が死を自覚できなかったのも、本当は死んでいないからとも考えられます」

《俺の能力が覚醒して……。でも、そうだったとしても俺は結局、何も出来てない。王都への報告も——》


「いいえ、貴方は十分すぎるほど情報をくれましたよ。俺たちにね」

「うん。敵の特徴とか、本当に助かったよ」

「だな」

「そうね。ご協力、感謝するわ」

《お、俺は……あいつを倒す力に……君たちの力に、なれたのか……》


うれし涙。


悲し涙。


悔し涙。


様々な感情の雫で地を濡らすガイストさん。震える声で彼は続けた。


《俺の肉体は、もう腐ってるんだろう?》

「うん、残念だけど」

《いや、いいんだ。もう、未練は無いからな》

「ガイストさん?」

《君たちには世話になったな。ありがとう。へへっ、いくら言っても足りねえや》


その言葉と共に、ガイストさんはこの世から姿を消した。


「居なくなっちゃった」

「……そっか」


寂しいが、ガイストさんがその道を選んだなら仕方ない。





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