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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【三話】貪食と喜悦。
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(32)貪食の罪

集落に戻ると、モルケライさんが待っていた。


「よく戻ってきてくれた」

「家畜数減少の原因はやはり魔物でした。討伐は完了しましたが、戦闘中にかなりの数の家畜が捕食されています。復興には少し時間がかかるかと思います」

「そうか。ありがとう。だがそれよりも諸君らの命だ。これから時間はあるかな?」


 連れられてやってきたのはレストランだった。

夕食も振舞ってくれると言うので、お言葉に甘えた。

そこで調査内容などの報告を行った。


「そうか、調査班は……。それにしても、何故そんな魔物がこのヴァルム地方に?」

「たまたまなのか、何か理由があるのか。そこまでは分かっていません」

「運が悪かっただけ……そう思いたいよ」


何が原因で何が起きていたのか。

それと、派遣された調査班はどうなったのか。


おおまかにその二つを報告した。



「すみません、二度もごちそうになってしまって」

「いいんだ、気にしないでくれ。君たちは命をかけて戦ってくれたんだ。対価としては足りないくらいだが、せめてもの気持ちだよ」


お礼と挨拶をし、帰りの馬車に乗り込んだ。

帰りと言っても、一回王城へ向かう。


任務完了の報告だ。


道中は居眠りをしてしまった。

馭者を務めるリーフさんには申し訳ないが。



 到着後、昼と同じようにして王のもとに。


「ほう、そのような魔物が。」

「それと事前に派遣された調査班ですが、メンバーは皆……」

「やはり、そうであったか」

「報告は以上になります」

「うむ、ご苦労。では、私からも話をさせてもらおう」


王からの話?いったい何だろう。

明日の任務とかだったら嫌だな。


「まずはこれを見てくれ」


王は、椅子の横から大きめの紙を取り出し、机に広げた。

それに書かれていたのはどこかの施設か何かの間取り図だった。


「……こちらは?」

「これは王都内にある屋敷だ。今は空き家になっていてね」

「はあ」

「この屋敷を、今回の君たちへの報酬とする」


……え? 


ちょっと待ってくれ。


今、王はなんて? 


この屋敷を? 


俺たちへの報酬に?


「え、えっと、つまりそれは、この御屋敷を我々にくださる、と?」


さすがに驚きを隠せない様子のお姉ちゃん。

全く同じことを返してしまっている。


いや、驚いているのはお姉ちゃんだけじゃない。

この場にいる王以外、全員だ。


「そうだ。もう準備は出来ている。すぐにでも転居を開始できる状態だ。君たちの使っていた屋敷は第一班が使う予定だ」


手が早いな……。

俺たちが今日の任務を成功させると信じていたようだ。


「し、深謝申し上げます」

「疲れているとは思うが、出来れば明日、すぐにでも転居作業を始めてもらいたい。昨日の成果を労った休暇を明日以降の三日間、君たちと第一班に与えることになっている。活用してほしい」


一班はクリスが居るところだ。

昨日の約束が早速果たせそうだな。


「それと、屋敷を与えるに至って、もう一つ話がある」


王は何枚かの書類を取り出し、お姉ちゃんに渡した。


「休めることが多い戦況だとは言え、君たちも多忙だろう。そんな中で屋敷の管理まで行うのは荷が重い」


ま、まさか……


「そこで、だ」


まさか、まさか……


「三名の派遣メイドと、一名の専属メイドを仕えさせることにした」


メイド。


……メイド‼


「その書類は一級資格を持つメイドのリストだ。その中から一名、専属メイドを選ぶといい」


メイドと聞いてそわそわしていると

アイシャが笑顔で俺の右手を握った。


ごめんなさい。


お姉ちゃんは一枚ずつ書類をめくっている。

やがて、一瞬目を見開いたかと思うと、その時見ていたページを王に提示した。


「この方でお願いいたします」

「ずいぶんと早いな。他三人は、それでよいのか?」

「異議はありません」


誰でもいいよ、と言いたげなリーフさん。

かく言う俺も、誰がどんな人間かは分からないし、お姉ちゃんの判断に従うことに。


「問題ありません」

「私も大丈夫です」

「そうか。ではこの者に連絡を入れておく。明後日には屋敷へ到着するだろう」

「ありがとうございます」

「以上だ。そちらから加えて何かあるか?」

「いえ、特には」

「そうか。ではこれにて終了とする。本日の任務、本当にご苦労であった」

「失礼いたしました」


各々挨拶を口にし、退室。



 城門から出ると、一気に緊張が切れた。


疲れた~とか。


眠~いとか。


それより前に出る言葉は決まっている。


「王都の屋敷! 豪邸よ、豪邸‼」

「ああ、あのボロ屋敷ともおさらば、だな。」

「……メイド」

「……ユウ?」


まっすぐな瞳で圧力をかけるのはやめてください、怖いです。


「ご、ごめんってアイシャ」


それにしても、王都に住む。

騎士のみならず、大半の人間にとって、これほど嬉しいことがあるだろうか。

豊かで活気あふれた土地での生活はさぞ楽しかろう。明日が待ち遠しい。



 馬車に乗り、帰路に就く。ああ、今日は本当に疲れた。

トラウマになりそうな一日だった。


出来ることなら、あんな魔物は二度と現れないでほしい。

勝ちはしたものの、精神負荷は間違いなく過去一番だ。

それに今、俺はとんでもない大問題を抱えている。


「おえっ……」

「ちょっとユウ、吐かないでよ?」

「だ、大丈夫です……多分、きっと……」


俺は馬鹿だ。あの魔物を倒した達成感と解放感から

つい夕食を食べすぎてしまった。帰りに馬車を使うことを忘れて。


元々馬車に強くない俺が、食べ過ぎた状態で乗ればどうなるか。

容易に想像できたはずなのに。


やっぱり、いつだって食べるのは「程よく」が一番いいな。


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