ある兵士の奮闘その3
「今回のことは、見回りの騎士が見つけたことになる」
なるほど。ウチは無関係ってするんだな。
村民は俺たちが色々したのに他の手柄になっていいのか、とちょっと不満そうだ。
「当家が関わっているとなると越権行為なので、国の機関がしたこととして下さい」
伯爵様が言うと、皆頷いた。
「それから薬のことだが。見た目が変化のあった者はいるな。ふむ。慌てて持って来たことにしよう。誰かに聞かれたら色々なものが混ざっていたようだ、と言えばいい」
国の機関がそんなんでいいのかってなりそうだが、他に誤魔化しようもないしなぁ。
「貴殿らが勇気を持って対処したことに感謝する」
「はっ」
「この後は、伯爵領の任務に戻るように」
「はっ」
「あ、そうだ」
リーダーとお偉いさんが、わりとかっこいいやり取りをしていたんだけど、ミア様が声をあげる。
「これ、浄化の石です。ここの近くの村の井戸に入れてください。病気になりにくくなります」
はい、と渡された袋はミア様は持ちきれずに地面に置かれた。持てない物が出てくるとは、便利な袋だな。
「浄化、ですか?」
「はい。こちらの土地から鳥とか動物が伯爵領に入り込んでいたら、何かしらの病気が持ち込まれるかもしれないので。これで手洗いうがいをして予防出来ます」
なるほど。今は薬までは必要ないけど、かからないように予防か。
「では、我々は領地に戻ります」
「ああ。君たちも薬を飲んでから移動するように」
「はっ」
そうか。俺たちもこの場にいた者ということか。
「使った薬を補充していってくださいね」
ミア様がはい、と薬を俺たちに手渡す。その袋ってどれだけ入るんだ?
「伯爵も薬を飲んだら戻ってくれ。あとは私が指示を出す」
「はっ。宰相様の指示通りに」
えっ?宰相様?こんな直ぐに宰相様が?
村民もざわついている。そりゃそうだろ。ただ心強いよな。俺たちもホッとした。
「あ、そうだ。移動する前に綺麗にしますね」
ミア様がくるりと指先を回すと、広場を中心に村がすっぽりと入る淡い光がゆっくりと広がり、しばらくしてから溶けるように光がおさまった。
おさまったんだが、村がおかしい。
薄汚れていた建物が、掃除したよりも綺麗になっている。いや、ネズミ退治の後、色々と動き回って泥だらけのはずの俺たちもキレイさっぱりだ。
「これで体についたものも、土地についたものも、綺麗になりました」
うんうん、と頷き納得したのか、ミア様はにっこり笑った。
「……ミア。やり過ぎ」
「でも、必要なことだよ?」
「ああ。うん。まあなあ」
ガシガシ頭を掻くアルフ様の気持ちも分かるが。でも、これから農作業が始まるし、直ぐにまた元くらいの汚れになる。今だけのキレイさだ。
「他に被害はないか?」
「あ、あの……」
村長はとても言いづらそうだ。
「実は、ネズミに食糧を食い荒らされていて……」
「えっ?種はどうですか?」
「……種も、いくらか」
えっ。それは大変だ。種がなければ、次がない。いや、続けていけない。
「ふむ。それは用意しよう」
「!あっありがとうございます」
村長だけでなく、皆が皆、土下座して宰相様に感謝を表している。
正直に言えば、この村に着いたときに隣の領なのに、侯爵領なのに、この様な寒村があるのかと驚いた。きっと領主に言ったところで、対策はとって貰えないのかもしれない。
薬で病気や以前の怪我が治り、ネズミの件は不幸だっただろうが、結果としてはきっと良かった。
俺たちが来たことは、無駄ではなかった。




