ありえへん世界
唯君は何だかご機嫌な様子。
はぁ……一体どこに連れて行かれるんだろうか……
「「いらっしゃいませー」」
と、入って行ったのは都内の高級デパート…
「お荷物をお持ちいたします」
「えっ⁉︎いや、大丈夫です…(財布入ってるし…)」
「失礼いたしました」
「いえ、とんでも無い…」
ひえーーー
こんな所に連れてこられるなんて……
何をさせられるんだろう……
ブルブルッ……怖すぎる。
「焦りすぎだよ?先輩?」
クスッと笑いながら唯君は言うけど、庶民にとって……お財布の危機は、命の危機なんですよ! byひなの
ちょっと名言っぽい……笑
そんな事をしているうちに、
「ここに入るよ?」
「え?ここ……」
連れて来られたのはなんと……
「女の子の服とか売ってる所だよ?」
「そうだよ?まさか、先輩……まだ僕が先輩になんか奢ってもらおうとしてると思ってないよね?」
「いや、そんな事無い……よ?」
「まあいいや…」
「唯様!お久しぶりです。ようこそいらっしゃいました。」
「うん、柏木店長。好きに服持って行ってもいい?」
「もちろんです」
「え?知り合いなの?」
「うん、そうだよ。ここのブランドは海外ブランドなんだけど、日本支店の経営責任者は僕の母さんなんだ」
「えーーー!こんな、高級ブランドを?」
恐るべし唯君ファミリー…
「先輩、こっち来て?」
「あ、はい…」
唯君が高級な服をごっそり持って来る。
え?まさか……
「先輩、これ着てみて!」
「えっ……」
「良いから……」
無理やり服を持たされて、奥にあるフィッティングルームに連れて行かれる。
「……」
こんな高級な服。着れないし……
チラッと見えるタグに目がいく。
気になって恐る恐る値段をチェックすると…
「はぁぁ⁉︎」
チュニックが1枚、30万⁉︎
ワンピは50万⁉︎
ありえない……マジすか……
「どうしたの?」
ドア越しに唯君の声が聞こえる。
「だって……桁が……」
「あぁ、大丈夫だよ?それ、タダだから」
「え?そんなわけ……」
「言ったでしょ?僕の母さんが経営責任者だって」
にしても、勝手に持って行って大丈夫なのだろうか?
「後から連絡するし、何回も言うけど大丈夫だって……だから早く着替えて?」
「あ、うん……」
でも、こんな高級な服、似合わないよ……
まぁ良いや……取り敢えず着替えよう。
持って入った薄ピンクの花柄ワンピースを取り敢えず着てみる。
「うわぁ……スカートとか、何年ぶりだろう……」
そうなんです。私、制服以外にスカートを持っていない、パンツ女子なのだ。
「先輩、着替え終わった?」
「う、うん…」
ゆっくりと、重い扉を開ける。
「……」
唯君、無言が怖いです……
「ど、どうかな?」
恐る恐る聞いてみると、
「すっごく似合ってるよ?やっぱり孫には衣装だね!」
そ、そうだよね……
服が良いんだから当然だよね……
そしてちなみに、"孫にも衣装"です。
「じゃあ、これも着てみて?あと、これも持って!」
なぜかテンションが上がっている唯君に、両手一杯に服とバッグを持たされた。
「早く着替えてね?時間無くなるから」
その原因は貴方ですけどね!
「はいはい……」
しぶしぶフィッティングルームに入って着替える。
そして……
「やっと全部着終わった!」
「そうだね?お疲れ様!」
ふぅ……疲れた……
「店長!これ全部持ってくから、僕が来るまでに包んどいて?」
「かしこまりました」
え?ちょっと待って……
「あれ、もしかして全部私の?」
「そうだよ?ほら、次に行くよ!」
「えっ⁉︎いや……」
次って……まだ買うの?
しかも、お金……
「ここ入るよ!」
「う、うん……」
ここは!
クリスチャンル○タン……
もしかして、
「次は靴だよ?ほら、これ履いてみて?そこまでヒールは高くないから」
「う、うん……」
どんだけ買うんだろう……
私は唯君になかば強引に連れて行かれて、この後も数件お店を回り、沢山のお買い物をしたのだった。
(大体、服9着、バッグ4個、靴6足くらい買ってたと思う。)