表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスト・エンジェル  作者: yukke
第2章 二度目の高校生
17/130

初めての友達

 入学式は順調に進んでいた。

そして、3人の新任の教師が紹介された。

そう、3人共俺の中学・高校の頃の同級生。

どうやら、昨年度にこの学校は定年退職した者が3人も出たらしい。その為、新しくこの3人が選ばれたようなのだがよりにもよって何故この3人だ。

担任になる柳田は科目は生物を担当するらしい。


 そして、体育教師を務めることになる藤本武(ふじもとたけし)。短髪のスポーツ選手のような髪型に、体格はがっちりしている。背は柳田とそう変わらない。そして、何より熱血漢な男だ。

挨拶の時に他の人もそう感じただろう。

「良いか! 青春は1度だ悔いの無いように、先生がしっかり指導してやる! 担当は体育だが、皆の青春についても担当するからな!」


 相変わらず、熱すぎて訳が分からないですよ。

知り合いだからなのか、見ていて痛々しいし恥ずかしい。


 そして、もう1人が数学を担当する、鷹西沙耶(たかにしさや)

物静かで、真面目なタイプの彼女なら先生と言うのも頷ける。

腰までスラッと伸びるそのストレートロングの髪は艶もあり、とても綺麗であった。胸も10年以上たち更に成長しており、Eは軽く超えてそうな大きさだった。

男子が全員ざわざわとしていたな。

メガネをかけているので昔は清楚だった感じが、今は大人の魅力も兼ね備えた美人な女性になっていた。


 そして、入学式は滞りなく終わった。

しかし、解せないのが視線が終始天使の羽根が生えてる西澤さんではなく、俺に向けられていた事だった。

そして、俺達は教室へと戻る。


 教室内は最初のわだかまりはどこへやら、西澤さんに羽根の事についての質問を投げかけていた。

勿論、触りまくってる人もいた。

西澤さんは、中学の時はこんな扱いを受けていなかったのだろう、目を泳がせながらも若干嬉しそうに、皆の質問に答えていた。

というか、触れてもくすぐったそうにしていなかった。

俺だけなのか、くすぐったくなるのは。

すると、ようやく担任も戻ってきた。


「よし、皆席に着け~HR(ホームルーム)始めるぞ~」


 柳田がそう言い、クラスの皆は席につきだした。


「さて、じゃぁ早速だが。皆自己紹介から始めるぞ~」


 そして、出席番号順に各々自己紹介を始めた。

俺は、余計な事は喋らないでおくか。

皆、出身の中学まで言ってないのは助かった。一応、言わなきゃならない場合の対策は考えてはいたが、言わないならそれはそれで助かる。


 自己紹介を終えた人には、拍手や同じ中学の友達みたいな人から茶化されたりしていた。

俺も、周りに合わせて拍手をしていた。

そして、順番は俺の前までやってきた。


「あ、あの。西澤朋美……です。半年程前から急に羽根が生えちゃいました。あの、それと。こんな性格なので、そのっ迷惑かけちゃうと思いますけど、仲良く……してください」


 急いでお辞儀をして、恥ずかしそうに俯きながら座ってしまった。

最後のは、なけなしの勇気を振り絞っての事だろう。周りからは暖かな視線と、拍手が贈られていた。

初めはどうなるかと思ったが、良いクラスになりそうだな。

さて、俺の番だな。

と立ち上がると、何故か急に周りが静まりかえった。

何か、特に男子の視線が多く注がれてるのは気のせいかな。


「えっと、橋田明奈です。高校生活をしっかりと楽しみたいので、皆さん仲良くしてください。宜しくお願いします」


 俺は、お辞儀をした後にっこりと笑顔を見せて席についた。

うん、男子数人顔が赤いですよ。風邪でも引いたのかな。

後、拍手無いのも気になる。

俺は、何かやってしまったのだろうか。

シーンと静まりかえった教室に、何人かの男子が呟いた。


「ヤバい、惚れたかも」


「あ、俺も。一目惚れだ、これ」


 ナンテイイマシタ

ほ、惚れただと。ちょっと待て、この学校にはもっと可愛い子がいっぱい居るだろう。何故、俺だ。


「はっはっ、このクラス1の美少女は橋田で決まりだな~」


 おい、黙れ。勝手に決めるな柳田。目の前の西澤さんもなかなか可愛いんだぞ、羽根も有るんだし彼女の方がまだ相応しいだろう。


「そうね、橋田さんみたいにレベル高いと嫉妬すら沸いてこないわ」


「しかも、化粧なんてしてないよね? もう、完全負けた~」


「どうやったら、そんな美少女になれるの?」


 遂には、女子までそんなこと言い出す始末。

おい、待て。やめろ、めちゃくちゃ恥ずかしいわ。


「えっ、何あれ。恥じらんでる姿めちゃくちゃヤバい」


「嘘、何か余りの可愛さに私までドキドキしてきた」


 やめろやめろやめろやめろやめろ。顔が熱い、絶対ヤバい。

俺は、慌てて顔を手で覆った。


「う~止めてよ~皆~」


 これ以上は、再起不能になる。何とか、皆に止めてもらうよう頼んだがそれもどこが良かったのか、「かわいい~」の嵐が降り注いだ。

俺は、突っ伏して耳を塞いで聞こえないふりをした。

早くもこのクラスでやっていけるのか、不安でしょうがなかった。


 今日は、HRだけで終わりのため早めの帰宅となる。

HRが終わった直後から、男子達が続々と俺の元に集まってきた。

やれ好きなタイプはとか、彼氏いるのかとか、好きな人いるのかと聞きまくる聞きまくる。正直うっとうしかった。


「えっと、ごめん。私、そういうのはあまり興味ないから」


 俺はやんわりと断った。納得したのかは知らないが、ある程度の質問をしたら離れていった。

やれやれ、女子になってから分かったが男子のこの態度はイライラしてくるね。


「あ、橋田さん」


「ん? 何? 西澤さん」


 前の席の西澤さんが、こっちを振り向いて話かけてきた。

西澤さんも、さっきまで女子や男子から羽根について色々質問攻めにあっていて、今ようやく解放されたらしい。


「朝は、ありがとう。橋田さんが、助けてくれなければ私はまた中学の時みたいに、いじめられていたと思う」


「そんな、助けたなんて。ちょっとイラッときたから、言い返しただけだよ」


 そうそう、それに相手に対して言い過ぎたかと思ってしまったくらいだ。

あれから和解は出来たけどね。


「ううん、そんなこと無いよ。私も、変わらないといけないと思ってたのに、情けない……よね」


 彼女は俯きながらしょんぼりとした顔になっていく。


「そんなに直ぐには変えられないでしょ。ここのクラスの人達は、いい人が多いみたいだし大丈夫だよ」


「あ……ありがとう」


 彼女は、はにかみながら恥ずかしそうに続けた。


「そ、それで。あの、よかったら……は、橋田さん。私と友達になってくれますか?」


「うん、喜んで」


 俺は、笑顔で返した。この子は、今まで会ったことが無いタイプの子だった。不思議な事に、俺は迷いも無く彼女の申し出を快諾した。

俺が、男のままならな~と変な考えが沸いてしまった。

ダメだ、俺はもう男には戻れないんだよ。

こんな事じゃダメだ。俺は、改めて覚悟を決め直した。


「何てことだ、このクラスに天使が2人も」


 今言った奴誰だ。一瞬、羽根を出してしまったのかと焦ったではないか。





 3階から降りて来た望“達”と合流し、靴箱で靴を履き替え、母さんの待つ校門にゆっくり歩き出す。


「で、この人達は? 望お姉ちゃん、どういう事?」


 俺は、望にじと目で見ながら言った。


「ご、ごめん。クラスの友達が会わせろって言ってきて」


 望は、両手を合わせて謝罪のポーズを取った。


「わぁ~、近くで見るとか~わいい~」


 ほっぺぷにぷにするな。


「足ほそ~い、スベスベ~」


 足を触るなセクハラ。


「おっぱいも丁度よく、最高じゃ~ん」


 胸をさわ……って何やってんだこの女子達は。


「うひゃいっ?! 何するんですか~」


 俺は、慌てて両手で胸を隠した。

後、男子達は何をじろじろ見てるんだ。

望のクラスの奴ら全員来たんじゃないかこれ。


「ねぇねぇ、妹さんは好きな人いるの? タイプ教えて欲しいな~」


 そして、さっきと同じ事を聞かれたよ。リピートさせるな。


「はいはい、明奈をそんな風に見る人は帰って下さい」


 望が、しっしっと男子達をあしらったので、男子達はここでリタイアです。

まぁ、その後も望のクラスの女子に触られまくったけどね。 


「ごめんね。悪い気はないみたいだから、許してあげて?」


「う~~、わかったよ」


 ようやく解放され、ふらふらになりながら校門に向かう。


「あらら、入学初日から人気者ね。明奈は」


 母さんが、さっきの俺の様子を見て微笑ましく思ったのか、素晴らしい笑顔を見せていた。

いや、こちらは前途多難ですよ。

すると、西澤さんが横から通り過ぎながら挨拶してきた。


「また、明日。橋田さん」


「あ、うん。バイバイ、西澤さん」


 彼女は、にこやかに手を振ってきたので俺もにこやかに手を振り替えした。


「へぇ~早速友達がね~しかも羽根生えてる子じゃん。何かしてあげたの?」


 望が、横から覗き込んで言ってきた。


「いや、ちょっとね。クラスの人達が誤解してたし、それを注意しただけ」


「そう、良いことしたわね。あなた、根は優しいんだから。しっかり気を付ければ、周りにいい人達が集まってくるわよ」


 母さんがそう言って来たのが、何か気恥ずかしかった。

俺は、そっぽを向いてとっとと駅に向かって歩き出した。


「あっ、待ってよ。明奈~何照れてんの~」


「照れてません」


 女になって良かったかも。なんて、思ってませんよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ