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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第2章 二度目の高校生
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天使の能力

「なるほど、あなたがその体になったのは、そんな原因があったのね」


 俺が夢の中の事を全て話し終え、母さんが難しい顔をして言ってきた。


「信じられない事だけど、その石が突然現れたんだしね。事実として捉えるしかないよね」


 望が俺の首に付いたネックレスを見ながら言ってきた。

今、オヤジ以外の家族がリビングに集まっていた。オヤジはついさっきどこかへ出かけた。今日は土曜日で休みなのに、いったいどこに行ったんだろう。

因みに、ブタはロープでぶら下げてます。ローストビーフみたいだが、あまり旨そうに見えないや。


「それにしても、迷惑な話ね。勝手に天使にされるなんて」


 母さんが、コーヒーを飲みながら俺を見てきた。

そりゃ、俺も勝手だなと思い憤りを感じてるが、相手が相手だしどうしようもできないよ。


「でも、そのパワーと能力が与えられてるんだし、羨ましいな~」


 望が、マヨネーズたっぷりのトーストを口に運んだ。というか、あれから望はこのトーストの食べ方にハマったらしい。

さすがに、見てたら吐きそうだ。


「ふぉうほう(そうそう)、明奈。能力っていったい何なの?」


 望、まだ口に入ってるのに喋るな。行儀悪いな。

俺は、ティッシュ箱を持ってきて望に手渡した。垂れてんの見てしまったしな。うん。


「ん、ごめん。いけるかなと思ったけど、無理だった」


 口の周りを拭きながら、望は続けた。


「で、能力ってさ~もしかして、魔法が使えるとかかな?」


「魔法ってまた突拍子もない。あるわけがないだろう。こう指を鳴らしたら炎が出たりとかか?」


 そう言って、俺は指をパチンと弾いた。すると。


 カランカラカラ


「えっ? なんだこれ?」


 急にテーブルの上に6面ダイスが現れた。

しかし、ダイスの面には何も書かれていなかった。もういろんな事があり過ぎて、これくらいじゃ驚かなくなっちゃったな。


「あら、明奈。これ、説明書じゃないかしら?」


 母さんが、ダイスと一緒に現れたであろう紙を手に取った


「ちょっ、貸して」


 俺は母さんからその紙を受け取り急いで広げた。



『 ーーエンジェルダイス 取り扱い説明書ーー』


『このダイスは、出た面の効果を相手や対象の物体に与えます。

まず、指を面に触れ相手や、与えたい効果を1つ思い浮かべて下さい。

すると、その面にその効果が浮かび上がります。それを6つ、全ての面に行って下さい。

必ず、全て違う効果を入れてください。

1つは、与えたい効果とは逆の効果を入れてください。(要するにハズレの面を必ず作ってください)

ダイスを振り出た面の効果が相手や対象の物体に与えられます。


※大抵の事は何でも出来ます。世界の歴史や、物理法則が変わるようなものでなければ大丈夫。そういう場合は表示されません。

人を別の物に変化させることも出来ますが、変化が大きすぎたら力を使いすぎになるので注意!

また、自分や自分に関係のある事柄も表示されません。

よ~く考えて使おうね♪ 

           by君の愛しのミカエル様』



 最後の文面に少しイラッとしたが、つまりかなり万能なアビリティ系ダイスということか。

俺は、説明書とダイスを交互に見ながら難しい顔をした。


「1度使ってみたら~?」


「いや、誰にだよ」


 望を見ながら答えた。すると、望がある方向を指さしていた。

そこには、吊されたブタの姿が。

あぁ、奴になら問題ないね。実験台は決まった。

次はどんな効果が良いかな。

そう思案していたら、望が耳打ちしてきた。

ふむふむ、よくそんなの考えつくな。

そして、俺は指をダイスの面に触れその効果を思い浮かべた。

すると、ダイスの面にその効果が印字された。


『守のPCゲーム及びオンラインゲームのデータ全消去』


 さて、次は。と考えていたらまた望が耳打ちしてきた。

お前なぁ、そんなえげつないこと。まぁ、良いか。

再び、別の面に指を当て思い浮かべた。


『守、1週間本物のブタになる』


 ふむ、この調子で全ての面を埋めていけばいいのか。

でも、1個だけハズレを付けないといけない。この場合はブタに有利なものをか。しょうがないな。ブタにはこれが当たれば嬉しいだろう。


『守のフィギュア、実物大になる』


「ご、ご褒美ですかぁ!!」


 吊されたブタが上から見てやがったか。まぁ、いい。


「でも、他のはかなり悲惨だよ~?」


 望が小悪魔の様ににやにやしていた。

因みに、母さんは一部始終を仲の良い家族風景を見るように、のほほんと見ていた。これから始まる惨劇など知らずに。


「でも、ほんとに起こるのかなぁ」


 6面ダイスを全て埋め、まじまじと見つめる。


「まぁまぁ、振ってみたら分かるじゃん~」


 望が物凄いきらきらした目をしている。

ブタはずっとブツブツと「フィギュア、フィギュア」と呟いていた。そんなにスケートがしたけりゃ、次は氷のリングでも出してやるか。

そう思いながら、俺はダイスを振った。


 カラカラカラ


 ダイスが転がる音が部屋に響いた。皆真剣にその様子を眺めていた。そして、ダイスが止まり効果が決まった。


『守丸焼きになる』


 あ、思いつかないからって適当に考えたのが当たっちゃった。

すると次の瞬間、ブタの体は炎に包まれた。


「ぎゃあぁぁぁぁぁあ!!」


「わぁ、守お兄ちゃん良かったね。ちゃんとローストビーフになれたじゃん」


 望が、にこやかな小悪魔の笑顔をブタに向けていた。


「ローストビーフと言うかステーキだよおぉぉぉおお! 軍曹~! 僕、お星様になりま~す!?」


 最後のはいったい何だ。ブタがハマってるアニメのセリフか何かか。

そして数分後、ブタはこんがり上手に焼けました。

とりえず、地面に転がるブタをツンツンしてみて無事を確認してみた。

うん、生きてる。

あと、ダイスの上に数字が表示されて2から1に減ったが、何だろうこれ。


「ちぇっ、罰を与えるやつは命までは取らないんだね。残念残念」


 何が、残念なんですか。この子怖いよ。


「望、いい加減に守を人間として扱いなさい」


 さすがに母さんが望に注意をした。


「そりゃ、守は最近。明奈が望では叶わなかった、自分好みの妹系美少女になって、暴走しちゃってるけどね」


 あぁ、ブタにとって俺は理想の妹像なのかよ。余計に、寒気がしてきた。


「私じゃなくて良かったけど、何で明奈なの?」


「あ、そういや最近ブタが天使の羽根が生えた人をモチーフにした、アニメにハマってたっけ」


 俺は思い出したかのように口にした。もはやそれしか可能性はない。俺が女の子になり、更には天使の羽根まで生えたんだ。

そりゃ、理想だよな。


「まぁ、それで昨日から明奈の脱ぎたてパンツを洗濯機から探ったり、今朝は寝顔を撮ろうと、明奈の部屋のカギをピッキングしてたりしてたけど」


「ちょっと待って、今何て言いました?」


「あっ、いや大丈夫。ちゃんと未然に防いでるからね」


 そうじゃないですよ。しようとしてる時点で大問題ですよ。

俺は、テーブルのダイスに手をかけた。


「ダメよ、そんなに使ったら」


 母さんが止めようと手を伸ばしてきたが、もう遅い。


「問答無用」


 カラカラカラ


 ダイスは軽快に机の上を転がる。


『守、電気いすの刑』


 うん、悪くないのが出た。


「お、お母さん。何を言って……」


 ブタは、絶望的な顔で母さんを見つめたが。

母さんは、あなたが悪いと言う顔をしていた。

すると、突然電気いすが部屋に現れブタをガッシリと固定した。


「あ、明奈ちゃん冗談だよね~?」


 ブタが最後の懇願をしてきたが、もう面は出たんだよ。潔く諦めろ。

俺は、最高の笑顔でブタを見つめた。


「あ、明奈ちゃ~ん。分かってくれて」


「んな訳ね~だろ! 有罪ギルティ!」


 笑顔から、一気に怒りの顔になった俺は親指をピッと下に向けた。

その瞬間、電気いすから電流が流れた。


「ぴぎゃああぁぁぁぁぁ!」


「わ~、守お兄ちゃん。透けてて骨まで見えてる~面白~い」


 望が、再び小悪魔の様な笑顔でその光景を楽しんで見ていた。


「軍曹~!! 僕、お星様になれましたか~?! ピカピカ光ってますか~?!」


 ピカピカと言うか、バリバリと光ってるな。

そして、数分後。電気いすが消えてブタがうつ伏せに倒れた。

またツンツンしてみた。うん、生きてる。やっぱ命までは取らないみたいだ。


「はぁ、全く。これは私が没収……あっ」


 母さんがダイスに手をかけようとした時。ダイスの上の数字が1から0になり、フッと消えたのだ。


「なるほど、あれはダイスを振れる回数だったんだね。と言うことは常に2回振れるのかな?」


 俺は、説明書を再度確認したが。回数については何も書かれていなかった。


「ダイスに印した効果によって変わるのかもね」


 望が、俺の後ろから説明書を覗き込んできた。なるほど、どっちにしても何回か使ってみて確かめるか。


「その前に、お話があります。2人ともそこに座りなさい」


 母さんが、自分の前の席に指をさして俺達に言ってきた。

何だか、母さんが怖い。

ちょっと、調子に乗りすぎたかな。


「いいですか? 今後そのダイスには使用制限を付けます」


「え~?!」


 俺と望が声を揃えて言った。


「当たり前でしょ! そんな危険なものをポンポン使ったら危ないでしょう! それに、説明書の書き方からして無制限に使える訳でもないでしょう!」


 確かに、文面からしてそう捉えることもできるだろう。


「とにかく、お父さんが帰ってきたら、今日の事を話して明奈の今度の事についての家族会議をしますからね。いい?」


 こうなった母さんには逆らえない。

俺達は目線を合わせ、渋々返事をした。

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