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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第2章 二度目の高校生
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家族会議

 その日の夜、夕飯を食べ終わった俺達はリビングのテーブルに全員揃っていた。


「事情は母さんから聞いた。あき……な、聞く限りそのダイスはかなり危なそうだな」


 今、晃って言いかけたよね。まぁ、しょうがないけど。まだ1日しかたってないしな。


「とりあえず、無闇に使い何らかのリスクを負うと不味いだろう」


 オヤジの言うことは最もではあるな。俺はオヤジの言うことに耳をかたむけ、頷いた。


「いいか? そのダイスは人助けの時にのみ使え。いいな?」


「えっ? それだけでいいの?」


 あまりにも緩い制限で驚いた。


「ちょっと、あなた。いいの? そんな程度で」


 母さんが驚いた顔をしていた。もっとキツい制限を頭に浮かべてたんだろうな。


「良いも何も、明奈しか取り出し出来ないんだろうが。俺達が保管出来るなら、もっと制限もかけられるが」


「それは、そうですけど。そうだ、ちょっと明奈ダイス出してみて」


「え? 良いけど」


 母さんは何を考えてるんだろうか。深く考えないでおくか。

俺は指を鳴らしてダイスを出現させた。


「ほぉ、これがそうか」


 オヤジがダイスをまじまじと見つめてきた。


「明奈、それ使わずにそのまま消すこと出来るかしら?」


「えっ? う~ん、どうかな?」


 確かに、使わずに消すことは出来るのかな。

そう思いながら、俺はダイスに意識を集中させ消えろと念じて見た。

しかし、驚いた事にダイスは消えなかった。


「うんうん。ならこのまま私達が保管して置けば」


 あっ、出すんじゃなかった。そういうことか。

やばい、母さんがダイスに手をその前に取らねば。

しかし、母さんがダイスに手をかけた瞬間。バチっという音と共に、火花が散った。


「きゃっ!!」


「お母さん、大丈夫?!」


 望がいきなりの出来事に心配そうに駆け寄った。というか、俺にも何が起きたか分からず、きょとんとしてしまった。


「ふむふむ、なるほど。つまり明奈ちゃんにしか触れないということか~これはなかなか良いアイテムですなぁ」


 ブタがダイスを眺めて言ってきた。しかし、こいつの生命力はなかなかのものだな。


「ふぅ、なら尚更明奈にしか取り扱えないものになる。制限をかけるのは難しいな」


 幸い、母さんは怪我はしていなかった。よかった。

というか、消せないということは、これを消すにはダイスを振るしか……

俺は、無言でじっと家族を見つめた。





 数十分後。テーブルの上にはオヤジの晩酌のアイテム目白押しになっていた。

因みに、ブタや母さん望にも恩恵があるようにダイスの面をセットしたが。全て父さんに恩恵のある面ばかりが出た。

もう、今では手に入らない幻の名酒『ごっつぁんです』から、酒のつまみには最高の品々が揃っていた。お父さんいつもご苦労さまですってね。


「うん、なんだ。こういう使い方なら有りではないか? 母さんよ」


「いや、まぁそうですけど……」


 これは完全に母さんの負けだな。オヤジはかなり上機嫌で酔っぱらっていた。

最初いきなりえげつないのをやりすぎたのが良くないよな。

こういう食べ物を出すという軽い効果なら、ダイスも5回は振れる事が分かった。


「しょうがないわね、人に害を与える効果は守だけにしときなさい」


「ひぇ?! 何で僕はいいの~!!」


 ブタが、この世の終わりの様な顔をして母さんを見つめていた。情けないな。


「冗談よ。でも、明奈に何かしてみなさい。とんでもないことになるからね」


「き……気をつけます」


 ブタが縮こまってる。更に、情けなく見えてきた。


「さて、明奈。次はお前の体だが、もう元には戻れない事は確定か?」


「うん、ほぼ確実かな。だって、大天使の仕業なんだし人間が敵うわけないよ。多分、他の天使の羽根が生えた人達も治らないと思う」


 俺は、オヤジの顔を真剣に見つめて答えたのに。オヤジの顔はすっかりできあがっており、真っ赤だった。

このクソオヤジ。


「で、お前は覚悟を決めたと言うのか?」


「うん、直ぐには無理だろうけど。ちょっとずつね」


 そう、男に戻れないなら女になりきるしかない。でも、心は男なんだよな。この違和感をどうすればいいだろうか。


「そうか、お前がそう決めたなら父さん達は何も言わん。お前達も良いな?」


「私はあなたの言うことに反対はしないわ」


「分かったよ、お父さん」


「はいはい~」


 何だろう、オヤジってこういう時は頼りになるな。今まで考えたことなかった。


「なら、今日役所の方にも行ってきて正解だったな」


「え? どういうこと?」


 俺は首を傾げた。役所ってまさかだけど。


「元に戻れる可能性が低いなら、お前の戸籍を女に変更しなければならん。あと、歳もな」


 やっぱりね。そうか、戸籍も変えたら正真正銘俺は女だ。


「それと、もう一度高校生からやり直せ」


「なっ? なんで?」


 俺はびっくりして聞き返した。しかし、普通に考えたら何もおかしくはないか、どう見ても15歳くらいの女の子だ。この姿で働くとか無理だ。


「お前がバイトしていた、コンビニもどうせクビにすると言っていたからな」


 あ、とどめを刺されたよ。俺の、この性格が社会に受け入れられないと言うことか。

俺はがっくりとうなだれた。


「やはり、良い機会だな。覚悟したなら、その性格も直すよう努力するんだ」


「わ、わかったよ。オヤジ」


「明奈。そこはお父さんでしょ? やると決めたなら、家の中でもしっかりと女の子しなさいね。そして、あなたが一番年下になるのよ」


 げっ、しまった。と言うことは。

俺はゆっくりと、望と守を交互に見つめた。

2人ともにこにこしやがって。


「そう、望のことは望お姉ちゃんで、守のことは守お兄ちゃんね。わかった?」


「そ、そんな。直ぐには」


 俺は引きつった顔で母さんを見た。


「そうね、ゆっくりで良いけど。学校に行き直すなら、それまでにはしっかりしないとね」


 そうか、これから俺の試練が始まるのか。




 と思っていたら、急に体がむずむずしだした。


「えっ? なんだ?! なんだこれ?」


「あ、明奈!!」


「おい、どうした! 明奈! なんだその姿は?」


 なんだ、なんか服がだぼだぼに。

あれ、視線まで下がってる。オヤジと母さんそんな背が高くなかったぞ。


「明奈、まさか力を使いすぎた事でそんなことに?」


 望の声が震えてる。なんだ、俺はいったいどうしたんだ。

すると、望がリビングにあった手鏡を取ってきた。そこには思いがけない光景があった。

だぼだぼになった服に包まれ、明らかにさっきよりも更に5歳若く、10歳くらいの小学生の少女になった俺の姿があった。


「なんだこれぇ~~!!」


 あの天使次会ったら、容赦しない。

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