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ふしぎな出会い

たましいと、たましいの


不思議な出会い。


ただ、こころの目だけが、


互いに見つめ合って居る。


小柄の物憂い乙女は、


無心に舞踊って居た。


遮那王は何とも言えない


ときめきを感じた。


この戸惑いが過去に二度あったのを遮那王は覚えて居た。


それは平家一門の屋敷で


戯れに暴れて退去せんと裏門を出た時。


ついこの間は


都の街中で白拍子を悪童の手から救った時だった。


今、目の前に舞う乙女こそ


遮那王のこころを騒がす元であった。


「遮那王さま。」


「…牛どの。」


「もう、舞は仕舞いじゃ」


「はっはっは。如何為された。」


一瞬、


よそ事を考えて居たらしく、


遮那王は二人を前にして、


真っ赤な顔を見せた。


そんな様子を見るといつもの遮那王らしくも無かった。


「都の花でござる。


白拍子の舞も良いものでござる」


すると先程の白拍子の姿が


遮那王の目に入った。


「いつぞやは、私共をお助け頂き、有難う存じます」



「はて、なんの事やら…」


突然の出会いに


しらばくれる遮那王。


「此のご恩は忘れませぬ」


「名を何と申す…」


隣り合わせた弁慶、


飛び烏は、


ふと顔を見合わせた。


「しずかと申します。」


「良い名じゃ。」


聞くと白拍子は赤面した。


「貴方様の、お名は…」


消え入りそうな小さな声だった。


「遮那王と申す。」


「又のお会いを楽しみにしとうございます。」


「判った。」


突然の出会い、


そして別れ。




遮那王は心なしか


焦りを感じた。


「では…」


すると居合わせた


別の白拍子が


「此で白湯など召されませぬか。」


これは遮那王にとって助け舟だった。


境内の休み処に手頃な腰掛けが有った。


「おお、これは良い。」


他の二人の白拍子も遠慮をして遠巻きに居た。


「…。」


小半時程、


静かに時が流れた。


「しずかは、いずこで生まれ、


  いずこへ参るので有ろうか。」


「…。判りませぬ。風の流れのまま…」


「はっはっは。人は皆、同じようなもの。


  いずこへ参るやら…。」


「いいえ、」


「…。」


「毎日の様に戦に明け暮れ、


  修羅の世故、人はまた舞を見とう成ります。」


「うむ。」


「我等は只、舞うだけが生き甲斐に存じます。」


「ふっ。羨ましい限りじゃ。」


「ほほっ。」


「はっはっは。」


 明日知らぬ 我が身と思へど 


 暮れぬ間の 今日は人こそ 


 悲しかりけれ




秋の肌寒い日、


遮那王一行は、


京の都 を見下ろす街道の峠で休息する事となった。


これから暫く都の風に吹かれる事は無いかと思うと、


流石の男達も心なしか侘し


い面持ちであった。


「ご出立の準備は如何でござりますか遮那王さま。」


吉次の声に振り返りざま。


「おお、吉次か。誠に世話になった。」


「いいえ今日は心ばかりの持て成しを


しとう成りました。あちらの寺の境内へ…。」


「うむ。では参ろう。」


一行が、やれやれと古びた寺の山門を入ると、


中庭には敷物が敷かれ、


何やら人だかりが有った。


「遮那王様。お恙無く…」


「お変わり無く」


「ご機嫌よう」


そこには一群の


花が有った。


忘れもせぬ


三人の白拍子達で有った。


「…。」


「覚えてござりましょうか。」


「はっはっは。忘れはせぬ。」


「遮那王さまの都の土産にございます。」



「はっはっは。吉次、忘れはせぬぞ」


と云う遮那王の胸は


何故か切ない想いで


はち切れそうだった。


やがて管弦の調べに


始まり、


静を始め白拍子達の


静かな舞は始まった。


我が君は 


千代に八千代に 


細石の 


巖と成りて 


苔の生す迄


流行りの歌に併せ


優美な舞を舞った。


舞人の一人、


静かの目は


確かに潤んで居た。


我が戀は 


深山隱れの 


草為れや 


繁さ増されど 


知る人の無き



誰の目にも


白拍子の


うぶな心は


窺い知れるもので


有った事だろう。


心なしか


朱く潤んだ目をした者も


居た事だろう。




「見事じゃ。


遮那王礼を云うぞ。」


言葉は語らず、


飾らず


胸迫る


餞だった。








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