第二部☆金星のリラ 第四章☆再生槽を壊して!
火星の王の使いが金星に王女を引き渡すように言ってきた。
金星の議会は火星の王自らが金星へ出向くことを条件に王女を解放すると宣言した。
王は執事に再生槽を運ばせて金星に渡った。護衛にアランがついてきた。
金星の議会は火星の王女を王に引き合わせたが、王は「この女はミリー・グリーンではない」と言って、長剣をすらりと抜き放った。
ミリーに扮装していたメイはダガーを抜いて、王と相対した。しかし、とてもかなうような相手ではなかった。アランが前に出て、メイと小競り合いになった。
金星の議会の構成員はだれもどうしていいか分からずにいたが、
「加勢する」
リラがバタフライナイフで火星の王の胸を貫いた。
「クーデターだ!」と人々は大騒ぎした。
そのままだと、リラは連行されて、いずれ極刑にされるのが目に見えていた。
「よくも!金星人め!」
アランがリラに斬りかかった。
ギイン!
駆けつけたミリーが長剣でアランの剣を受けた。
「ミリー、お前は王に刃向かうのか?」
「お義兄様、覚悟!」
マルスの女神が降臨したように皆が錯覚した。
アランは頚動脈から血飛沫をあげて、どう、と倒れた。
「リラシナ!女装を解いてパイソンと一緒に逃げて」
ミリーがリラに言った。
「だけど、罪はつぐわなきゃ」
「罪じゃない。革命を起こしたのよ。あなたは英雄だわ」
「自分のためにやったんだ」
「逃げて。生き延びて!」
そう言ってリラの扮装を今度はミリーがした。
イヤリングの通信機でミリーはメイに連絡をとった。
「メイ、聞こえる?」
「ミリー・グリーン」
「お義父さまの執事が管理している再生槽を壊して!王が復活できないように!」
「わかったわ」
メイは火星の王家の死体を運ぼうとする人たちを追い越し、執事が隠していた再生槽の元へ向かった。
「させるか」
執事が土星製の武器を構えた。
「一度死んだのに、なぜそこまで火星の王に義理だてするの?」
「そういうお前も王の気まぐれで生き返ったくせに」
メイと執事は相対した。