第一部☆火星の王女 第十三章☆決別
「第5地区がひどくやられてる。食糧の備蓄を狙い撃ちだ」
ケインがメーヴェから下を見下ろして言った。
「アラン王子が軍隊を率いてドーム外で戦っておられます」
メーヴェの通信器から執事の声がした。
「戦況は?」
「かんばしくありません。先程王も応援に向かわれました」
お義父様が城を離れている!
その事実にミリーは今しかチャンスがないことに気づいた。
「ケインお義兄様。私……」
「わかってるよ」
ケインはメーヴェを塔の群れに向かわせた。
「火星は地獄だ。きみはこんなところから抜け出さなくちゃならない」
メイが幽閉されている塔へ、内部の回廊をロカワ氏とエバが駆け上がって行くのが見えた。
「メイを人質にするか、重要事項を聞き出すつもりなんだわ!」
「いくぞ」
「ええ」
ミリーとケインは通信器をオフにして、メイのいる塔にメーヴェを乗り付けた。
「メイ!」
「ミリー・グリーン!」
小型爆弾で塔の壁に穴を開けると、メイを乗せて、メーヴェで飛び立とうとした。
その時。
尖った棒を無数に撃ち出す武器でロカワ氏がケインの足を狙った。的中して、ケインは足に大怪我をして倒れ込んだ。
「ケイン!」
「大丈夫だ!行ってくれ!」
「でも……」
「きみの足手まといにはなりたくないんだ。さあ早く行って!」
「ケインー!!!」
ミリーとメイを乗せたメーヴェはふわりと舞い上がった。
「ロカワ様!なにか武器は?!」
「ミリーに危害は加えられない」
「なんですって!」
ロカワ氏とエバが言い争っているうちにメーヴェは軌道エレベーター目指して飛び続けた。
進軍中の王がめざとくミリーたちを見つけた。彼は軽々と射的をするように身構えた。しかし、気まぐれから撃つのをやめて仰ぎみると、興味をなくして進軍を続けた。
ミリーはメイをつれて空港へ向かった。
幸い外部から入ってくる者には厳重だったが、出ていく者にはそっけなかった。
「戦争を終わらせましょう」
「はい。ミリー様」
「ミリーと呼んで」
「はい。ミリー」
「これが火星。では金星は?私は金星を目指します。あなたはどうしますか?」
「ミリーについていきます」
ミリーは微笑んでメイを見た。
第一部☆完