第二部☆金星のリラ 第一章☆予知夢
金星の政治は上院と下院で行なっている。
議題は火星との戦争についてが大半を占めていて、今日も終わりの見えない議論が続いていた。
下院議員のリラは、若くてはつらつとしていたが、流石に連日の議論合戦に嫌気が差してきた。
「今日はここまで」
結論など出る由もない。
リラは長い髪を片手で払って、資料をまとめると議事堂を後にした。
「リラ。これからどちらに?」
「貯水池の視察のあと、家に帰ります」
物腰柔らか。完全に女性のように見えるが、実は青年の女装であることは他の議員には知られていなかった。
貯水池は長塀に囲まれているが、出入り口の指紋認証キーをクリアして中へ入った。
水質、水温、異常なし。ここは金星全土に飲み水を供給している場所だから、要所といえた。
「つっかれたー。ベランダのカウチで寝転ぼう」
家は数年前まで学校だった。校舎を改造していろんな人種が住んでいる。
ウイッグをとって、マネキン人形の頭に被せ、ブラッシングしておく。化粧を落としてすっぴんになると、女顔の青年の姿になった。
「兄さん?」
「ああ、パイソン」
「今日は仕事終わったの?すぐ料理を作るわね」
リラは、……リラシナはのへーっと力を抜いてベランダへ出た。
お気に入りのカウチに寝そべる。
『リラ!リラシナ!』
『金星のリラ』
少女の声が呼びかけてくる。
きみは誰だ?
赤銅色の長い髪。エメラルドの瞳。
ごおおおおおお。
上空を輸送船が飛行していた。
白昼夢にしては、何かを暗示しているようだ。
「来るか」
リラシナは両目を凝らして、ミリー・グリーンとメイの乗った輸送船を見送った。




