3-3 ファダサス竜騎士とワイバーン・レルト
「あ!」
子どもが声を上げ、次に何やら大人たちに対して訴えかけているのが聞こえてきたが、ほとんどの奴らは無視して俺たちを追いかけてきているようだ。足音と怒りの声が凄い。
振り返り、怒りの保護者集団の様子に冷や汗を覚えていると、子どもが俺たちを心配そうに見ていたので、
「じゃあな!」
シュタッと手を挙げて叫んで、もう振り返ることはせず、走ることに集中した。
足場の悪い森の中を、中尉が周囲の動物の思考から読み取った場所を通ることでどうにかこうにか進んでいくと、緩やかな丘が見える草原へと出たが、人狼たちによる怒りの追跡は止まらない。
普通、縄張りっぽい場所から出たらそこまでだろう。狼なのにオコ○ザルなのだろうか。
「捕まったらどうなります?」
「二人とも殺される。安心して、私も普通に殺されるだけ」
「ある意味安心しましたが、やっぱり全く安心できませんね!」
中尉曰く、あの人狼さんたちは薄い本(十八禁の方)のような習慣はなく、普通にまともな文化と思考を有しているらしい。よかった、よくないけどよかった。
だが、このままでは捕まるのも時間の問題だ。
「ゴーレムを出したままにしておけばよかった」
「今からでも出せますよ」
そう言った直後の事だった。
向こうの空から、何かがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。それはすぐに形がはっきりとわかるほど接近してきた。
「あれは……!」
ワイバーンだ。まさか、さっきの奴が俺たちを助けに来てくれた……じゃないよな。
早くゴーレムを呼び出さないと不味いな。
「うぅん、大丈夫」
中尉が言い終わらないうちに、後ろの方で乾いた音が聞こえてきた。振り返ると、俺たちと人狼たちとの間の地面が穿たれているのが見えた。
すると、人狼たちはワイバーンを見上げると、先ほどまでは違った唸り声をあげ、森の方へ帰っていった。
ワイバーンを見上げると、先ほどの個体よりも小柄だった。大体五メートルほどだろうか。他にも、その頭部や背中には、鎧のようなものが取り付けられていた。
まさか……。
「そう。あのワイバーンと、乗っている人は味方」
ワイバーンが俺たちから少し離れた場所に着地した。
その背中から小柄な影が飛び降り、近寄ってきた。十代前半ほどに見える少女だ。薄緑色の服の上に、急所を防護するように金属の鎧と腰に剣を装備している出で立ち、そして手にしているマスケットから、彼女が騎士であることを伺わせた。
「○○、○○○?」
何やら心配されているようだが、言葉がわからない。中尉、お願いします。
「大丈夫ですか? と聞かれた」
なるほど。
中尉は右手の上に左手を重ねて胸の前に添え、微かに屈伸のような動きをした。
「助けていただき、ありがとうございます」
それを見た少女騎士は目を見開くと、銃を左手に持ちかえて降ろし、揃えて広げた右手を左胸辺りに添えて頭を下げた。
「○○○――ました」
あ、途中から言葉がわかるようになった。ふむ?
疑問は今は置いておこう。騎士のお嬢さんは頭を上げると、手はそのままで続けた。
「私はイーナ女性騎士団所属、デレリュ・ファダサス竜騎士であります。こちらは、私の相棒レルトです」
ファダサス竜騎士と名乗った少女は、右手でおとなしく待機しているワイバーンを示した。
なるほど、ファンタジー世界の竜騎士か。マスケットも持っているし、二重の意味で竜騎士だな。
「私はシャデュ・デワデュシヂュ」
「俺は文睦・祝です」
「……でわで……でわ……」
「シャデュでいい」
「申し訳ありません」
ファダサス竜騎士は頬を赤くして咳払いして、「それで」と言葉を改めた。。
「コボルトたちから追われていたようですが、何かあったのですか?」
お読みいただきありがとうございます。
第三章メインキャラ登場です。




