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機械仕掛けのカプリッツィオ!  作者: 胡桃リリス
第三章 覚醒、シャンティーノ
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3-1 少女の思い出/ワイバーン強襲

大変お待たせいたしました。第三章スタートです。

 ――――えぇ、あの時の事は、今でも鮮明に覚えています。

 あの頃はまだ森に住んでいましたから、危険も多くて。

 森の中にいれば飛龍に襲われないと言われますが、そんなことはありません。私も幼い頃に、両親や村の大人たちから口酸っぱく教えられていましたし、実際に襲われたこともあります。


 そう……こんな良く晴れた日の事でした。

 理由はよく覚えていませんが、私は言いつけを忘れて、一人で森の中を歩いていました。幸いなことに、魔物に出会うことなく、どこかでもいだ木の実を齧っていました。そう、美味しい山桃でしたね。上機嫌だったことを覚えています。

 そんな時でした。少し強い風が吹いてきて、辺りが暗くなったんです。雲が日を覆ってしまったのかな、と思って上を見上げようとしたら、雷鳴を思わせるような唸り声と、羽音が聞こえてきたんです。

 目に飛び込んできたのは、羽ばたきながら私を睨む、赤黒い鱗を持った飛龍でした。


 どうして飛竜の臭いに気付けなかったのか、それもよくは覚えていません。

 森の木々や枝葉のおかげですぐに跳びかかられなかったのが幸いでしたが、あの時の私はすっかり腰が抜けてしまって、身動きが全く取れませんでした。

 逃げ出さずに震えているだけの子どもなんて、恰好の獲物ですからね。どうすれば私を捕まえて食べることができるのかを飛竜が探るには十分な時間でした。

 そして、とうとう飛竜が飛びかかってきました。矢じりのような歯が幾つも並んでいる口の奥の暗闇を見て、私はようやく悲鳴を上げました。


 もうダメ、そう思った時に……そうです、あの方たちが現れたんです。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 時空のトンネル(?)を抜けた先は、異世界の空だった。

 何ともファンタジーの定番な展開だが、物理法則さんはしっかりと働いており、俺たちが乗るゴーレムは重力に引かれてパラシュート無しのスカイダイビングを始めた。


「っ!!」

「着地の衝撃に備えて!」


 中尉の檄が飛ぶ。それよりもゴーレムを飛ばしたいが、こいつに飛行能力はない。中尉が使える風魔法で何とかならないだろうか。


「無理」

「だったら!」


 イメージを浮かべると、光の線がコックピットの床を走るのとほぼ同時に、ゴーレムの落下速度が緩くなった。

 ゴーレムの足裏から反重力フィールドを発生させるイメージだったが、上手く行った。


「凄い……」


 中尉が小さく感嘆する声を聞いているうちに、ゴーレムはもう一度反重力フィールドを使って衝撃を和らげ、しっかりと地面に着地した。


「着地成功、損傷なし……」

「助かったぁっ」


 俺と中尉は安堵の息を吐き、周囲の状況を確認しようとしたところで、


「祝、あれ!」


 中尉の声に顔を上げれば、二百メートルほど向こうで、巨大な赤黒い体をした生物が森の上でホバリングしていた。

 その姿を見て、俺は感嘆の声を上げずにはいられなかった。


「すげぇ、ドラゴンか」


 ワイバーンタイプか。どうやら、この世界も前の世界同様、中々愉快そうな場所のようだ。一人でこっちに来なくて本当に良かった。中尉には感謝しかない。

 ところで、ワイバーンはこちらに一瞥もくれず、木々の天辺すれすれを羽ばたきながら、何かを狙う様に首を細かく動かし、何やら一点を見つめてばかりいる。狩りの途中だろうか。


「祝、子どもがワイバーンに襲われている」

「は?」


 まさか、近くの村の子どもでも襲われているのか。


「助ける」


 中尉がそう言ったのと、俺がゴーレムを走らせたのは同時だった。


 反重力フィールドの威力を調整し、少し助走したところで、一気に跳躍させる。子どもを巻き込むといけないので、あまり高くせず、木々の上を滑るように跳ばせた。

 ワイバーンが顔を木々へ突っ込もうとした丁度その時、その隙だらけの胴体にゴーレムの低空ドロップパンチが炸裂した。

 ワイバーンの巨体が吹き飛び、木々を巻き込みながら地面を一度跳ねるが、すぐに体勢を立て直して両足で立ち上がると、こちらを睨んできた。


 着地した俺たちはワイバーンを警戒しながら、子どもの安否を確認する。ゴーレムの背後、枝葉の隙間から見えたのは、小さな人影だったが、その姿を見て、俺は驚きながら色々と納得した。


 本当にこの世界は豊かで愉快な連中がいっぱいいそうだ。


 さて、一度助けようとした命だ。ここで見捨てるのは少し、いや一生後悔するくらいに寝覚めが悪い。絶対に助けよう。


お読みいただきありがとうございます。

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