モブ、続・結婚式。
「リリアンさん、公爵様、ご結婚おめでとうございます」
「ロッテ先生!ありがとうございます」
「マイヤール夫人ありがとうございます」
「リリアンさん、この場で言うのもなんだけどこれからも精進なさい、貴女なら何でも出来るわ」
「ロッテ先生?」
「今後は貴女に任せます、私はゆっくり過ごすから活躍して下さい」
うん?今後への激励ですかね、少し言い回しが気になりますが
「はい、ロッテ先生の教え子の名に恥じぬよう頑張ります」
ロッテ先生はにこりと笑って頷くとヴィルヘルム様に向き直り
「公爵様、この子は私の可愛い最後の生徒です、少しおかしな所も有りますが、ずっと笑顔で居られるようお願い致します」
頭を下げてまで仰って下さります。
「先生・・・、ありがとうございます・・・」
「努力します、泣かせる事など無いように」
なんか今日はみんな泣かせに来てませんか、表情筋に限界が近付いて来てます。
いえ、もう鼻の奥がキテいるので多分取り繕えていないと思いますが・・・
「「リリ、結婚おめでとう、とても綺麗よ」」
ララとルル、そしてライラ
「リリアンおめでとうございます、まさか同世代で貴女が1番に結婚するとはね・・・」
「ありがとうございます、ふふっ、私も成人してひと月で結婚式を挙げるとは思ってもいなかったわ」
「ね、多分今でないとこの後聞ける時期を逃しそうだから聞くけど、貴女学園は・・・」
「うん・・・、未だ詳細も何もお話さえもして無いけど、多分辞めると思うわ」
残るにしても年数回だけ行って卒業とか?
まあ貴族にはそれなりにある事です、結婚して学園を辞める事は。
但し私の場合最速記録になりそうなタイミングの結婚式ですけどね
「「寂しい」」
「そう・・・」
「て、ちょっともう二度と会えない訳じゃないのだから、そんか顔しないで、遊びに来てよ」
「そうね、必ず行くわ、でも貴女から誘いなさいよね夫人様」
「「リリアン・クロイツェル公爵夫人」」
「ちょっと止めてよね!」
冗談めかして言っているけど、実際公爵夫人になった私が招かないと当然来訪なんて出来ないのよね。
それこそアポなしで突撃出来て、それが許される人間なんて片手で足りる人数になるわね。
王家の数人、のみ?
他の公爵位の貴族も居るけど、同じ公爵位でも序列はある
今代興った1番若輩の公爵クロイツェル家と言っても、当主は現国王の弟で実質は王家の歴史を持っているようなものだから、そして王家の歴史はこの国で1番古い家な訳で・・・
いえ、でも友達が友達の家に行くのに、そんな事私は気にしないわよ!
「いつでも、とは言えないけど気軽に来て欲しいな・・・」
「分かってるわ、まあ新婚の家に押し掛ける程私達は恥知らずじゃないわ」
「「当分は2人でごゆっくり・・・」」
「うん、ありがと」
・・・
新婚
2人でごゆっくり
忘れてた!今日は・・・
「・・・」
突然黙り込んだ私に
「「リリ?」」
「貴女、まさか・・・」
なにかに気付いたライラが私を引き寄せ小声で耳元で言う
「まさか夜の事忘れていらしたのっ?」
こくこく
「身の回りの準備は?」
「王家の侍女さんが全部・・・」
「じゃあ単純に事を忘れていただけね?」
こくこく
「どうせ貴女の事だから、ドレスの出来が良くて可愛い、とか、他の事に気を取られていたのでしょ」
う、図星です・・・
「だって、結婚式の時のドレスも今着ているドレスも王家の、と言うかラフィー義母様とエリザ義姉様の手配の物で、しかも手ずから刺繍入れて下さったのよ!可愛いでしょっ!」
この出来に感動しない令嬢は居ないわよ!
「確かに凄いわよ、今のドレスも1級品、いいえ王家の方でもそうそうない仕立てにラファエル様の刺繍入りなんて、今後二度と無いわよ!でもね」
「「夜の事とは別」」
う。
「貴女大丈夫なの?」
「だ、大丈夫よ、今日という日の夜を忘れていただけで子供は沢山欲しいもの・・・」
「リリ」「子沢山?」
「リリー?」
女4人でごにょごにょしているのを不審に思ったのかヴィルヘルム様が声を掛けてきます
「大丈夫、何もございませんわヴィー、女性のお話です」
にこー、と笑顔で誤魔化します、と言うか深く聞くなと目で訴えます。
「あ、ああ、そうか」
伝わったようで何よりです、今日の夜の事忘れていましたなんて言える訳ないわよ・・・
「あまり長居してもいけないわね、リリアンまたね」
「「リリ、手紙送るわ」」
「ええ、またね」
さて、ヴィルヘルム様側のお客様も来ます
と言っても結婚式に招かれる方達ですから政治的なものは排除されているので、まだ気楽ですね。
社交界ではそうは行きませんが、今回までは気を張らずに居て問題ないでしょう。
「久しぶりヴィル、結婚おめでとう!リリアンちゃんもおめでとう!」
随分ざっくばらんな方です
「こういう場では弁えてくれ、だから嫌だったんだ・・・」
と言いつつもヴィルヘルム様も自然体で笑って話しています、親しい方なんですかね?
「えっと、初めまして、ありがとうございます」
「おっと、リリアンちゃん初めましてじゃないよ、俺野営の時居たよー」
「えっ」
「おい、お前らも来いよ」
ぞろぞろと体格の良い方達が集まって来ます、周囲はその迫力に気圧されて少し距離を取ってますね、私は別に気にしません、多分騎士団の方達、ですよね?
「やっとまともにヴィルの嫁の顔見れたな」
「ちっちゃいな、逃げられんなよヴィル?」
「どんな悪い事して捕まえたんだよ、白状しねえと騎士団がしょっぴくぞ」
「ここに居る全員あの野営に居たんだぜ、ヴィルに頼まれてリリアンちゃんの周りを固めていた女騎士の更に周りを固めて居たんだ」
「ええっ!?ヴィー!?」
「む、そんな事もあった、かな」
「こいつリリアンちゃんを守ってくれと言う割には絶対に近付くな、なんて言ってきてよ」
「・・・」
とぼけたヴィルヘルム様はそっぽを向いて何も語りません、耳が少し赤くなってますよ。
「ふーん、そうだったんですかヴィー?」
ニマニマ顔を覗き込むと
「野盗の心配がだな、、」
「そんなに心配だったなら止めてしまえば良かったではありませんか」
「いや、リリーが行きたそうだったから、無理矢理止めてガッカリされるのも・・・」
「もー、ヴィーが真剣に話して来たら、無視する程勝手な人間のつもりはありませんよ?」
ヴィルヘルム様の頬をぷにぷにつついて言います
あの時、最初は止められたけど、そこまで強く駄目だと言われた訳ではありませんからね。
「む、う、うむ、いや、リリーは我儘をあまり言わないから出来るだけ叶えたくて・・・」
「おふたりさん本当に政略結婚じゃないんだな、まさかあのヴィルに良い女が出来るとはな・・・」
「疑ってたのですか、式でキスもしてましたよ?」
「政略であるなら式でキスのひとつもするだろう?」
「・・・ヴィー?話してなかったのですか?」
「改めて話す機会が無くてな」
「そんな事で、まあ俺、・・・達は疑っててな、いざ式に来てみればヴィルはデレデレ、嬢ちゃんも隣で終始笑顔ときた、極めつけは王族と親しげに談笑」
ああ、事ここに至って初めて知り納得したと
「おめでとうヴィル!」
「うらやまっ、おめでとう!」
「幼妻!」
「俺にも嫁くれ!」
手荒な祝福を受けるヴィルヘルム様、何か後半は嫉妬が・・・
でもヴィルヘルム様も嬉しそうで、
バシッ、ゴッ、ドガ、
「・・・」
凄い鈍い音が聞こえますが大丈夫、ですよね?




