モブ、悶える。
目が覚めると自室のベッドで寝ていて、あら?ダンスの練習の後は・・・
?
・・・
!
わ、私、ヴィーに弱音を吐いてそのまま寝てしまうなんて・・・
え、あの後どうなったの?
何故、私は今お兄様の上着を握り締めて寝ていたの?
手の中にぐしゃぐしゃになった男物の上着があり、大きさとデザインから判断する。
茫然としていると、トントントンとノックが響く
「は、はい、どうぞ」
「失礼致します」
入って来たのは私付きの侍女サラ、サラは私の顔を見て安心したように言う
「おはようございますリリアン様、元気になったみたいでようございました、昨日はとてもお疲れと言う事でヴィルヘルム様が・・・」
あ、サラなら何か知っていそうね
「おはようサラ、私馬車の中で寝てしまってから何も覚えてないの、貴方は何か知ってる?」
と聞くと、サラは苦笑しながら語り始めた
モブラック邸に馬車が着き、私を抱えてヴィルヘルム様が下りてきた事。
取り敢えず全く起きる気配が無く、とても疲れていた様子であった事から、そのまま寝室に運んで貰った事。
ベッドに横たわらせたのは良いが、私がヴィルヘルム様の上着を握って離さなくて困ってしまった事。
ヴィルヘルム様とサラで困り果てて、仕方なく起こそうとしたところ、お兄様が来て「ああ・・・、任せて」と苦笑しながら
「アンいい子だ、こっちおいで」
と、優しく撫でながら何度も声を掛けていると、ヴィルヘルム様を離してお兄様に抱き着いた事。
昔からお父様お母様に抱き着いたまま寝てしまい、お兄様がそれを上手く離して寝かしつけていた事。
ヴィルヘルム様とサラがホッとしたのも束の間、今度はお兄様をがっちり掴んで離さなくなってしまった事。
昔はそのまま一緒に寝ていたが、流石に現在はその様な年齢ではない事からお兄様が上着だけを脱いで行った事。
ヴィルヘルム様が「何も気にする事はない、誰にでもそういう時がある、俺も気にはしない」と言伝を残して帰っていった事。
ほあああ!何やってるの私、はしたなっ、いえ恥ずかし過ぎるわ・・・
と言うか私抱き着き癖あったの!?
元々ハグとか抱っことか撫でて貰うのが好きな意識はあったけど、寝てからもなんて!
ひぃぃ、と羞恥に悶えているリリアンにサラが声を掛けてる
「リリアン様」
「はい!」
何か!?
「当面の間ご自愛下さい、誰もヴィルヘルム様をリリアン様から奪ったり致しませんから」
ああ、そんなに見える程何かに必死に見えていたのね、そして昨日ダンスから帰って来たと思ったら眠りこけていて、しかもヴィルヘルム様が何か含みのある事を言って帰ったから余計に・・・
最近失敗してばかりね、周りに心配ばかり掛けている気がするわ。
「うん、心配掛けてごめんなさい、最近同じ様な事を言われているわ、適度に休むようにする」
と返事をすると
「はい、それがようございます、それにお二人の間に割り込める者など居りませんよ、居たとしてもモブラック家と使用人達の名の元に全力で排除させて頂きます」
高らかに宣言するサラ
「ふふっ、ありがとう、でも無理はしないでね」
「はい、勿論ですとも」
ササッと身支度を整えて
「さて、お兄様とヴィルヘルム様に謝罪しなければいけないわね」
うん、眠りこけて離さないなんて本当に恥ずかしいわ・・・
「トーマス様は食堂に居ります」
朝食ね、丁度良かったわ
「おはようございます、お兄様」
「おはよう、アン」
お兄様は朝食を食べ終わったところのようですね
「お兄様、昨夜はご迷惑をお掛けしました」
「ああ、迷惑なんて何も無いよ、幼い頃のアンを思い出して懐かしくなったよ、最近は無かったけど昔はしがみついて離れないから一緒に寝たんだ、覚えてる?」
「い、いえ、全然、抱き着く事さえ知らなかったです」
「まあアンは1度寝ると気持ち良さそうに熟睡するからね、朝方になるとフッと力が抜けるから、大体その時に起きていたんだよ」
完全に抱き枕にしてましたのね私、ごめんなさいお兄様。
「僕は気にしてないから、それよりヴィルヘルム様には一言言っておいた方が良いよ、あんな困惑した顔は初めて見たよ」
苦笑するお兄様、ええ、ヴィルヘルム様を抱き枕にしていたと思えばお兄様を抱き枕にして熟睡しましたからね!
まあ困惑するでしょう、私どんな顔してヴィルヘルム様に会えば良いのかしら・・・
――――――――――――――――――――――――――
「・・・」
はい、気まずくて顔見れませんね、でも黙っていても仕方ありません女は度胸!
「あの!ヴィルヘルム様先日は失礼しました」
ピクと反応しつつ返すヴィルヘルム
「いや、それは気にしていない」
それよりヴィルヘルム様とは
「それは、失礼の上にご迷惑をお掛けしたので、真剣に謝罪をと・・・」
気まずくて目を合わせずに言うと、ふう、とため息を零してヴィルヘルム様は言う
「リリー、俺は迷惑だなんて思っていない、それより、だ」
あれ、気にしないと言いながら、何か怒っているような・・・
「ヴィー、何か怒っていますか」
「怒ってなど、いや、そうだな怒っている、疲れて眠った事はいいんだ、そっちではない」
「そっちではない?では、何を」
んん?眠りこけた事は良いの?何?
リリアンは思い当たる事が無く、ヴィルヘルムの態度に困惑する。
「いいか、二度と人の前で眠ってはいけない」
「はい?」
「あんな無防備な姿を晒して、しかもしがみつくなど」
え、そこですか!いえ、あの抱き着き癖、私も先立っての件で知って、これまで知らなかったのですが。
「ヴィー、あの癖は私も実は知らなくて・・・、お兄様によると家族の前で、っではなくて!そもそも人前で寝たりしません」
大前提として他人の前では寝たりしませんわ。
「だが先日は寝たではないか」
「あれは、ダンスと陛下への気疲れで疲労感とヴィーの腕の中が心地よくて、つい・・・、って何を言わせるのですか!家族とヴィー以外の前で眠りこけたりしません!」
私、そんなにやらかす人に見えますかね!?
思い返してみると
・・・
割と、見えます、ね・・・
「・・・、、兎に角!ヴィー以外の前では寝たりしてません、私が甘えられるのは家族以外ではヴィーだけです!」
友人は数人居ますが、眠りこけるかと言われれば
・・・、ララとルルの前では寝た気がします、ね・・・
あら!?私結構隙が多いの?しっかり者のつもりだったけど、あっれぇ!?
「リリー、他には誰の前で寝た?」
「ララとルル、いえ、あれはお昼寝、そうお昼寝です!」
「他には?」
「居ません!」
「・・・」
「・・・」
「リリー、君は意外と抜けている所がある、君自身はしっかり者のつもりかも知れないが、気を付けるように」
「・・・、はい・・・」
何ですかね、これ、余計な恥を掘り起こした気持ちでいっぱいです、恥ずかしいわ!




