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破壊神と呼ばれた私は!  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
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第28話 蜘蛛料理楽しみだな〜


 ということで散々歩いてようやく町外れまで辿り着く。上を見れば空はもう暗い。まぁこの女を飯作りから遠く離せたことだけでも良しとしよう。こいつに手伝わせたらまたどんな異物を作り出すかわかったもんじゃない。


 家らしきものもまばらになって大分と空いた場所にたどり着く。ポツポツと木らしきものも生えてるが細身の枝に少しの葉達がこの土地の衰えを感じさせる。


「マイ君どこまで行くの〜?」


 後ろをのんびりと着いて来ていた女が痺れを切らしたのか声をかける。別に疲れてはいないだろうが幾分か腹が減っているのかもしれない。

 無言でアイテムボックスから人の顔程度のサイズはある干し肉を渡す。嬉しそうに食べ出したのでやはり腹が減っていたのだろう。いいおやつ程度にはなっただろうのでそのまま放置する。


「よし、ここらでいいだろう。」


 いきなり止まったせいか背中に女がぶつかる。結構強めにぶつかられたので少しよろけてしまった。


「今から何するの?」


 干し肉を慌てて飲み込みながら女が怪しげな行動をしている。多分ぶつかった時に俺の背中を干し肉で汚したのだろう。

 慌てているのが愉快なので気づかれないようにこっそり魔法で綺麗にしておく。もちろんコイツのことは許さない。


「あー、とりあえずここにさっきのやつ出すか。中身をくり抜くのも今やるべきか…こんなところまで魔獣が来ることは早々無いとは思うが…この蜘蛛が街中に突然出現した理由もわかってねぇしなぁ…」


 目の前で山のように大きい蜘蛛を見上げる。一応先に胴体と頭部の境目らしき場所を切りわけるか。

 ゴロンと転がった頭部は目があったであろう場所に穴が開き、茶色い液体を垂れ流しておりなんとも気味が悪い。

 女も流石に気持ち悪かったのかウヘェと言いながら蜘蛛の眼球穴あたりを人差し指で突いている。気持ち悪いのに触りはするのかコイツ。


「胴体部分はどうするか考えるからお前とりあえずこれの牙抜いとけ。」


 りょーかーいと何とも軽い言葉を聞き終えてから胴体の上に飛ぶ。

 家一つ分は余裕にありそうなサイズの黒い身体。中身は入ったままなのでベチャベチャしているが体表に生えていた毛は全て焼き払ってある。何かに使えるかと思ったが髪の毛のようなキューティクルがあり微妙な長さだったので面倒臭くて焼いてしまった。

 焼き払った後の身体はツルツルと光沢があり叩けばいい音がする頑丈なものだった。

 … 上手くすれば中身くり抜いたこれをこのまま建物に応用できるのではないだろうか?外骨格をそのままに地面の設置面を接合して台座を作って…


 そんなことを1人ぶつぶつと呟いていると何してるの〜?と雰囲気ぶち壊しの間抜けな声が真横から聞こえた。

 牙抜いていたんじゃねーのかよと言いかけて言葉が詰まる。ドン引きするほどに全身がベトベトの茶色で汚れていて言葉が出なかった。お前、俺があんだけ汚れた時は嫌そうな顔したくせに自分が汚れることは気にしないのかよ。

 無言でクリーンアップを4、5回繰り返してかけた。そんな姿で俺に近づくな。

 完全に綺麗になったことに喜びつつ、言いづらそうに俺自身にもクリーンアップをしてはどうかと提案してくる。あー、さっき背中を汚したのをまだ気にしてんのか。

 絶対俺にはかけないしお前に背中も見せない。そのまま汚したままだと勘違いしとけ。


 というかかなり早いが牙を抜く作業はどうした?飽きたのか?と、蜘蛛の頭の方に顔を向けて呆れた。あれだけ大量に生えていた牙が綺麗に抜き終わって並べられていた。


「一応聞くが…どうやって、抜いた?」


「え?手でこうやって抜いた。」


 素手で牙を簡単に抜くな!頼んだのは俺だがもうちょっと苦労しろよ!

 ピクピク痙攣する頬を撫でて戻す。コイツの異常さにはある程度慣れたと思っていたがまだまだだったらしい。並べられた牙を一つ残らずアイテムボックスにしまう。

 蜘蛛系の魔物の素材は元々かなり重宝されるのにこのサイズのこれだけのもの。売ってもいいし自分で加工する素材にするのもいいだろう。

 ふぅ…大きく息を吐きながら上を見上げる。既に数多の星が見えている。なんだか今日は長い1日だった気がする。

 国境壁を女に担がれて越えて、カナロムは無くなっていて、こんなところで昔馴染みに会った。

 振り返るとドッと身体が重くなった気がした。今日は本当に長い一日で本当に疲れた。もういいか、一回戻ろう。蜘蛛の胴体はこのまま放置しても魔獣の少ないこの地域でさして問題はあるまい。

 魔力を常時回復する目処が立ったとはいえ今日は少々魔力を使いすぎた。まとわりついていた眠気が急に重たくなった気がする。

…癪だが仕方ない。俺は疲れている。


「え⁈いいの⁈」


 腹が立つほど嬉しそうな顔をみて既に後悔が襲うが仕方あるまい。


「俺は疲れてんだよ、連れてけ。」


 子供の姿の俺を嬉しげに抱き上げる。ガキの何がそんなにいいのやら。


「走る?歩く?」


 ゆっくりと歩き始めつつ明らかにトーンの上がった声が無性に腹立つ。ただ眠気には勝てそうにない。


「…揺れない程度に、走ってくれ…俺は…少し、ね…る…。」


 言い終わったか分からないところで俺は眠りに落ちていった。




 マイくん寝ちゃったや。こんなに一瞬で寝るなんてそんなに疲れてたんだな…かわいぃいい…

 おめめを瞑ってスヤスヤ寝息を立てるだけで何でこんなに可愛いんだろう。眺めてたい気持ちをどうにか抑える。疲れてるならさっさとベッドで寝かせてあげなきゃね。

 マイくんを起こさないように慎重に早歩き程度のスピードで歩く。走ってって言われたけどこの時間を心ゆくまで堪能したいのも本心なのでこれはしょうがないことだと思う。うん。


 町の中を見渡しても目立って大きな被害は無さそうだったのでひとまず安心した。

 元々家も少ないし蜘蛛の糸の絨毯のおかげもあると思うけど戦ってる時に下で移動していた気配も感じていたし、多分その人たちが頑張って被害を抑えたんだと思う。大きな怪我をした人も居なかったみたいだし無事で何より。


 それにしても…岩壁、穴ぼこだらけになっちゃったなぁ…どこを見ても戦いの跡ばかり。んー、ちょっとやらかしちゃった?

 そこでふと思いつく。私たちが暮らしてる洞窟みたいに崖を掘れば家になるんじゃない?組んだ木に布を貼ってる家よりも何倍もマシになるんじゃないかな?それに洞窟の中なら今日みたいな魔獣が出てきても守られる気もするし。よし!明日マイくんに提案してみよ〜っと!


 は道半ばまで来たあたりで風にのって沢山の笑い声が聞こえてきた。みんな美味しく楽しくご飯食べてるんだね。そう思うと胸の奥がぽかぽかする。1人で食べるご飯は寂しいもん。

 腕の中で心地良さそうに寝息を立てているマイくんに目をやる。

 私が大したことない人間な事は私が1番わかってる。それでも少し、ほんの少しでいいから、マイくんが独りじゃなくなってるといいな。今はサーシャちゃんもいるしね!


今日はなんだか星が綺麗だ。

気分良く上を見あげた瞬間、ゾワッと背筋に何かが登った。バッと気配がした右斜め後ろを見る。崖の方、町の隅っこから誰かが見ている。男か女か若いか年寄りか人間なのかもわからないけど、身体の芯から震えてしまうほどそれは気持ち悪いものだった。

 

そしてそれは酷く歪んだ笑みを浮かべていた。


 どうしよう気持ち悪い。すごく嫌だ。マイくんを起こすか、それとも今すぐ逃げるか。

 ぐるぐる回る思考がまとまらない。一瞬の静寂を挟んだあと気配を察したのか手の中のマイくんが動く。


「なんだ…どうかしたのか…」


 目を覚ましたマイくんが目を擦りながら頭を上げた。そんな一瞬、マイくんに目を向けて前を見るともう変な気配は消えていた。


「…えっと、ごめん、なんでもない。まだ着いてない、からもうちょっと寝てていーよ。」


 一瞬の気配など気のせいだったのか、何もない平穏が流れている。でも身体を巡った寒気は本物だ。気持ち悪くて早く人のいるところに行きたい。

 そんな私を見てそうか、とだけ言ったマイくんはまた眠りに落ちた。

 それを見届けた私は今度こそ少し小走りでみんなが居る食堂に向かった。




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