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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第十章 光と影 -Heroes-
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第154話 念願のレベルアップ

 俺は使い終わった銛を千堂から受け取ると、預かっていた木刀を渡す。

 千堂は木刀で素振りを数回行うと、使い慣れたその感触を思い出していた。


「やはりこっちの方が使い勝手がいいな」


 俺はあずかった銛の柄の部分の結合部のねじを外して三分割すると、専用の袋へとしまった。

 三人とも第二階層で戦う準備は万端のようなので、俺は説明を始める。


「俺が初めて第二階層に来たときは、ジャイアントトードの事を岩だと勘違いして驚いたりしたんだ。やっぱりスライム以外の魔物を初めて目にするとびっくりするかもしれないけど、冷静さを失わないような」


 俺の偉そうな説明を、三人は真剣な顔で黙って聞いていた。

 まじめなやつらだ。

 すると、千堂がスキルを使ったのか、魔物を発見したことを報告してくる。


「前方に魔物の気配がする」


 俺たちは気を引き締めて、千堂が言った方向に意識を向けた。

 俺はみんなの緊張を緩めるように説明をする。


「安心しろ。この階層の魔物は動きがそれほど機敏じゃない。唯一大コウモリだけは動きが速いが、地面を歩いているやつは大抵遅いから、落ち着いて対処するんだ」


 そして俺たちが慎重に前に進んでいくと、現れたのは巨大ななめくじの魔物、ラージスラグだった。

 ラージスラグはテラテラと光らせたぬめりのある体表をゆらしながら、こちらへとじわじわにじり寄ってきた。

 そのスピードの遅さから、あまり危険ではないと判断した三人は冷静に対応しようと構える。


「まず俺に行かせてくれ」


 一番強力な武器、メイスを持った赤石が一歩前に出る。

 その言葉に千堂と紫村は頷いた。

 赤石は慎重にラージスラグに近づいていくと、野球のバットを振るように思い切りメイスを振りかぶる。

 そしてブンという空気を切る音をさせながら、全力でラージスラグをぶん殴った。


 バチャン!


 ラージスラグは勢いよく飛び散った。

 一瞬の出来事だったため、すぐにその体は消失してしまったが、あれが迷宮の魔物ではなく地上で実際に存在する生き物だった場合、赤石はドロドロに汚れていたところだろう。

 赤石は一撃で倒してしまったことに少しあっけなさを感じているようだ。


「すごいな赤石君!」


「ああ、確かにすごい一撃だった!」


 紫村と千堂が先ほどの一撃を褒める。

 ん?俺が初めてレベル2で第二階層に来た時はもっと苦戦したような気が……。赤石のメイスって攻撃力高くないか?

 い、いや、俺が戦ったのはジャイアントトード、あいつの方がラージスラグより硬かった。

 だからだと思うが……。それを踏まえても赤石の攻撃力の高さは一目置くところがある。

 イオリも第二階層辺りじゃ敵なしだったが、何かD組ってみんなすごくないか?

 俺が驚いて絶句していると、紫村と千堂が黙っている俺を気にして振り返る。


「あ、ああ。見事な一撃だったな。やっぱりその武器がすごいんだろう」


「そうだな。良い武器を買えた」


 赤石は今日買ったばかりのメイスを気に入っているようだ。


「それじゃ次は僕たちも良いところを見せないとね」


「ああ、断然やる気がわいてきたよ」


 そんな二人の獲物を探しながら、俺たちは第二階層を進む。

 途中、別のパーティーがビッグリザードを囲って戦っている場面に遭遇し、その場を通り過ぎる。


「やっぱりここは人が多いよね。獲物を探すのにも大変だ」


「そうだな、赤石はこの階層なら余裕そうだから、紫村と千堂がそれぞれ戦って感覚を掴んだら、すぐに第三階層を目指そう」


「そうだよね、今日の目的は第三階層探索ということだよね」


 紫村が真剣な表情で頷く。

 そして再び千堂が魔物を発見する。


「こっちに二匹の魔物の気配がする」


「それじゃあ、今度は紫村と千堂がそれぞれ一匹ずつ倒そう。赤石は何かあった時のサポートだな」


「うん」「ああ」「わかった」


 なんかこいつら俺の生徒みたいに思えてきた。


 そして少し進むと、次に現れたのは空を飛ぶ大コウモリだった。

 不規則にバタバタと飛行し、こちらへの攻撃の機会を伺っている。


「こいつらは動きが速いから攻撃を当てるのは難しいけれど、耐久力は低いから攻撃を当てさえすれば簡単に倒せるぞ。ただし、当てるのが難しいんだ」


 二人は黙って俺の言葉に頷いた。集中しているようだ。

 そして、二匹がそれぞれ紫村と千堂のところへ飛んできた時、二人の攻撃が同時に繰り出される。

 二人の木刀の一振りは見事に大コウモリを捉え、一撃で大コウモリを倒すことに成功した。

 すると紫村が声を上げる。


「今何か力がみなぎる感覚があった!もしかしてレベルが上がったかもしれない!」


 満面の笑顔で紫村がそう言った。

 俺はすぐに紫村のステータスを覗き見る。


 ・・・・・・・・

 紫村響哉:LV2

 スキル:雷魔法LV1

 パーティメンバー:千堂衛、赤石哲弥、一ノ瀬獅郎

 ・・・・・・・・


 おっ!紫村もついに念願のレベル2になったな!

 ……あれ?今もしかしてレベル1なのに第二階層の魔物を一撃で倒した?

 俺の視線の先では、千堂と赤石が紫村のレベルアップを祝福していた。

 紫村は二人に照れながら答える。


「スキルボードを確認するまではまだ分からないよ」


 うん、でも俺はこっそり確認したので、これで紫村も第三階層にチャレンジしても大丈夫だということが分かった。


「それじゃ階層主、行こうか!」


・・・・・・・・


 ここでも行列待ちをして、そして第二階層主戦へと挑む。

 第二階層主、ジャイアントリザード。


「キシャーッ!」


 見た目はほぼワニ、口が短いワニだ。だがたぶん歩行速度はワニより早い。


「これまでの魔物よりも耐久力が高い。噛まれないように気を付けろよ。まあ噛まれてもポーションがあるから大丈夫だけど、噛まれると痛いだろうからな。あと四つ足で踏ん張ったら尻尾を振り回してくるからな」


 俺の説明を聞いてから、三人はフォーメーションを組んでジャイアントリザードに向かっていく。

 正面に赤石が立ち、右手に紫村、左手に千堂が回り込む。

 ジャイアントリザードは赤石に向かって走り出した。赤石はメイスを振りかぶると、思い切り振り下ろした。

 バシン!という音と共に、ジャイアントリザードの脳天に一撃が加わる。

 ジャイアントリザードの頭部のうろこは傷つき、血を流している。

 すぐさま右側から紫村が、電撃を纏った一撃を加えた。その一撃がさく裂した瞬間、ジャイアントリザードは飛び跳ねるような反応を示し、そしてひっくり返って痙攣をしていた。


「おい!チャンスじゃん!」


 おそらく電撃で麻痺したのだろう。ひっくり返ったジャイアントリザードを三人でタコ殴りすると、驚くほどあっさりと倒すことに成功した。


「驚いたな。もしかしたらヒュージスライムよりも簡単に倒せたかもしれない」


 紫村が感想を述べる。


「ヒュージスライムは核以外に攻撃が通らないから、相性が悪かったのかもな。それと紫村の雷魔法がこいつには有効だったのもあるだろう」


「なるほど」


 俺の説明に紫村たちは納得をする。


「それじゃ次が本番の第三階層だ。初めての人型の魔物に戸惑うかもしれないが、お前たちが修行してる剣術が本当に役立つはずだ!行こう!」


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