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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第一章 迷宮と少年たちのはじまり -The Beginning of Labyrinth and Youths-
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第12話 初めて迷宮探索するにあたっての授業

説明回

 水曜日になり、朝の教室内は昨日のスキル実践の話題で持ち切りだった。

 確かにいろんなスキルを目にした衝撃は大きかった。だが全員がスキルを使えるわけでもないし、今後スキルを取得できる可能性は限りなく低い。大切なのはスキルを使う仲間とパーティーを組んだ時のバランスと、スキルのない自分はスキル持ちに負けないくらいに武器を持って戦う力を身につけなければいけないということだ。

 そしてスキルを使う人がいることが日常だと受け入れること。仲間がスキルを使うたびに驚いていては迷宮探索もなかなか進まなくなるだろう。


 今日から普通の授業も始まったが、迷宮のことで頭がいっぱいな俺は授業の内容があまり頭に入ってこなかった。みんなもそうじゃないだろうか?

 そして午後になり、今日もダンジョンについての授業が始まった。


「明日はいよいよ初めてのダンジョン探索を行う。一年生の一学期の探索範囲は迷宮の第一階層だ。そこで夏休みが始まるまでに全員がレベル2になれるようにがんばろう」


 1学期、つまり4月、5月、6月、7月の四か月間は第一階層の探索を続け、全員がレベル2になるのだという。早くレベルが上がった者も1学期の間は他のみんなと一緒に第一階層の探索しかできないらしい。


「それじゃあ、探索についての注意事項を説明するぞ。まず第一階層に出る魔物はスライムだ。みんなが知っての通り、スライムは不定形の魔物で、スライムに触れると皮膚がだんだんと溶けてゆく。スライムの体は弱い酸性だということが分かっている。まあ最弱の魔物なので、木の棒でたたくだけで倒すことができる。叩いて飛び散ったスライムの体は何故か中性になっているので、安全メガネをかけたりする必要はない。スライムが生きている状態で触るのだけはなるべく避けるように。万が一触れてしまった時は、すぐに水で洗い流せるように、第一階層の探索時は水筒を忘れないように。また治癒魔法をかければスライムによるやけどは簡単に完治する。早坂、鮫島、近くにやけどした者がいたら治癒魔法をかけてやってくれ。また保健室の城之内先生に治療してもらってもいい。病院や治療院に行くとそれなりに治療費がかかるが、城之内先生に頼めばタダだからな。学生でいる間は保健室をうまく使ってくれ」


 保健室の先生、城之内先生も治癒魔法スキル持ちとのことだ。

 スキルレベル1では迷宮の外で治癒魔法は使えない。ということは城之内先生の治癒魔法スキルはレベル2以上だということだ。


「次にジェムについてだ。魔物を倒すと宝石のような石を落とす。それがジェムだ。一般的にドロップするジェムは黒い色をしており、マジックジェムとも呼ばれている。マジックジェムには魔力が籠っており、魔法スキルで指向性を与えるとエネルギーを発生させる。例えば熱を与えるとジェム自体から発熱をする。その特性を利用し、ジェムを使った魔力発電に利用されているので、ジェムは学園で買い取りを行っている。魔物を倒したら忘れずに回収するように」


 魔物はロールプレイングゲームのようにお金を落とすことはないが、このジェムを回収し売ることで収入を得ることができる。第一階層のスライムが落とすジェムは一個で百円にしかならないが、階層が進み魔物が強くなるにつれジェムの魔力が強くなり高額で買い取りをしてもらえるようになる。

 つまり俺たちはまだ学生だが、迷宮探索をすることで収入を得ることができるということだ。階層が進むほどバイトをするよりも断然良い収入を得ることができる。楽しみだ。お金がたくさん稼いだら何を買おうか。まあ、まずは迷宮探索のための装備をそろえるところからになりそうだが。


「次にポーションについてだ。魔物は、時々違う色のジェムを落とすことがある。マジックジェムよりも一回り小さい青い色のジェムは、ヒールジェムと呼ばれており、これが通称ポーションとも呼ばれている。名前が示すように、ヒールジェムを口にすると外傷が治ってゆく。効果は治癒魔法スキルと同じと考えていい。またヒールジェムには数字が浮かんでおり、数字が大きくなるほど治癒効果が大きくなる。第一階層に出る魔物、スライムも時々ランク1ヒールジェムを落とすことがあるから、もしドロップしたら忘れずに拾うように」


 学園の売店でもポーションは売っているが、まず大きな怪我をする可能性がないのならば慌てて買う必要はないだろう。万が一怪我をしたとしても、早坂に治してもらうか、保健室に行けばいい。

 だが探索が進み強い魔物が出てくるようになる頃にはポーションを入手しておきたい。

 ランク1ポーションで1万円ほどするらしいので、できれば買わずにスライムを倒して手に入れたいものだ。


「それとポーションはダンジョンを出て使うと効果が弱まるので注意が必要だ。治癒魔法も同じだ。怪我を治すならできるだけダンジョンの中で済ませておくように。それと早坂と鮫島、まだスキルは昨日初めて使ったばかりで慣れないだろうが、魔法を使える回数には限りがある。使った方がスキルの熟練度が上がっていくが、使いすぎてしまうといざという時に魔力切れで使えなくなるから、自分がどれくらい使えるのかの感覚も迷宮探索をしながら掴んでいってくれ」


「はい」


 早坂と鮫島が元気よく答える。

 俺はスキルを持っていないからあまり関係のない話だが、おそらく俺たちにはゲームで言うMPというものがある。スキルボードには表示されないから分かりにくいが、人によってMPの最大量に差があり、魔法スキルの使い方によっても消費MPにも違いがあるのだろう。

 アメリカでは数値化させようと調査を行ったらしいが、誤差が大きすぎて正確な数字は出せなかったらしい。

 つまり魔法を使う側からしたら、参考になるのは自分の感覚ということだ。

 ちなみに魔法の威力や精度も人によって大きな差があるらしいが、知力(INT=intelligence)が高いほど威力や精度が増すらしい。

 俺も将来魔法スキルを取得する機会があるだろうか?だとしたら(みんなよりも少しだけ)知力の低い俺が使う魔法の威力は低そうだ。


「それとエクスプローラーレコーダーの説明をしておくぞ」


 そう言って担任の真島はヘルメットを取り出した。

 真島はヘルメットの正面に取り付けられているカメラを指さす。


「エクスプローラーレコーダー、要するに迷宮探索時用の小型ビデオカメラだな。迷宮探索には危険が付きまとうが、学園の授業ではまず危険はないような安全な探索の計画がされている。だが時にはトラブルもある。それは魔物に対してよりも、対人の方が多い。入手したアイテムの所有権をめぐっての争いや、横取り、使ったアイテムの代金の支払いなど迷宮内では口約束が多く、言った言わないでの言い争いも絶えない。そこで証拠となるのが映像だ。義務ではないが、レコーダーの装着は強く推奨されている。また学園外の迷宮では犯罪は多い。強盗、傷害、窃盗などの被害にあった場合にも、犯人を逮捕するためにはこのレコーダーの記録が必要となってくる。ヘルメットだけでなく、胸ポケットに装着するものなど様々なタイプのエクスプローラーレコーダーが発売されているので、邪魔にならないタイプのものを使用してくれ」


 装備は重要だ。それは性能だけでなく見た目でも。

 はっきり言って真島の見せたヘルメット装着タイプはかっこ悪い。もっと目立たないタイプのものを探して買おうと思う。

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