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花崎繭香のちょい斜め上な愛情編


八千穂と付き合うようになってから、1年が過ぎようとしていた。

会社の事務の四重苦(改称)はどうやらそれぞれ、彼氏ができたらしい。それは、八千穂による鉄壁の守りに一矢報いることができず、八千穂以外の他の彼氏候補生へと舵を切り直した結果からだ。

日にちを遡ろう。

日々努力を費やしているのに、しかし八千穂をなかなか落とせないとなると、鬱憤は溜まり、私にもその攻撃が向けられることとなる。

主に酒向さんからだが、そんなある日。

「ねえ花崎さんってさ。ブスだよね」

唇の端をくいっとあげながら憎々しそうに言ってくる。そっちがそう来るなら、目には目を歯には歯を鼻には点鼻薬をの姿勢を貫いてやる。

「ねえ知ってる? ブスって言う方が、実はもっとブスなんだよ。これ英国オックスフォードの研究で証明されてるんだって。ブスの定理ってね」

と。

オックスフォードは嘘だし、まるで小学生のような返しだが、効果は絶大だ。

「何ですって! 私、ブスじゃないもん! きぃーーー!」

そして、自尊心を取り戻すべく、まだギリちやほやしてくれる男子の園、営業部へと逃亡する。

そしてまたある日。

「花崎さん八千穂くんに全然釣り合ってないっ」

逆ギレでそんなこと言われてもと呆れながら、

「じゃあさ。逆に酒向さんだったら釣り合うのかしら? この前作ったって言ってた『ズッパディペッシェ』あんまり美味しくなかったって、営業の加賀くんがこぼしてたよ。その程度の料理の腕で、うちの八千穂の隣に並ぼうなんざ、100億光年早いわ」

何度も言うが小学生のような低レベルな返しだが、向こうも次第にアホらしくなったのか、こうして私への苦言(私はそう捉えている)は収まっていった。

そう。彼女たちにとっては恋人という存在が最重要課題でもある。彼氏できたらもう私たちのことなんか、ぷい! ってなもんで。ね。

で、そうこうしているうちに、八千穂の甘々が加速していったというわけです。

「おい花崎、八千穂の溺愛が病的だって、八千穂の同僚から苦言が来てるぞ」

香山チーフが小声で進言してくる。

「八千穂さ、この前個室もらっただろ?」

はい。成績トップの八千穂ですから、もちろん会社には大事にされております。

「そのデスク、お前の写真で埋め尽くされているらしいわ」

「話を聞くだけでもぞっとしますね。そっこーやめさせます」

「頼んだぞ」

そんなことがあったもんだから、私は仕事が終わり退社後、いつも待ち合わせをしている小さな公園へと向かった。私と八千穂はここで合流し、スーパーかコンビニに寄って買い物をして帰る。

同棲? まだ早ーい! でも半同棲ですがなにか? (八千穂はすっかり結婚前提な同棲と信じ切っているが)

今日は退社が少し遅くなってしまったので二人、帰り道にあるコンビニに寄る。カゴはもちろん八千穂が持ってくれる。某アニメとのコラボコーヒープレミアム缶を買いに行った時は、香山チーフが持ってくれたなあと、なんの気なしに一言言っただけで、これからは永遠に俺が持つ! みたいになった。

「類くん、これ買っていい?」

そっとカゴに入れる。モンブランだ。

「今日、仕事忙しかった? 疲れたの? 甘いもの食べたいの?」

ちょっとだけ心配顔を寄越してくる。そこで、私はううんとかぶりを振った。

「類くん、仕事のデスクに私の写真飾ってくれてるんだって? きっと私の写真に向かって話し掛けてくれてるんだよね? ありがとう、すごく嬉しい。でも写真だとしても類くん会社で私に、1秒に1回会える、みたいな、そういう環境ってことだよね? でさ、そんなに会ってたらよ? そのうちに類くんに飽きられちゃうんじゃないかって心配になっちゃって。それでついモンブラン買っちゃったの(←?)」

「え、え、え! そんなこと絶対ないって! 飽きるだって? そんなことあり得ないから!! モンブランなんて不要だから!!」

「だよね。でもちょっとまだ心配だから、モンブランでも食べてなんとか気を持ち直そうかな……」

苦悶の表情を浮かべ……てみる。

「わわわわかった。写真、減らすから! 23枚あるけど……10枚くらいに」

「モンブランもう1個買っていい?」

「じゃあ! 2、3枚なら? それならいいでしょ?」

「うん。それなら飽きられるっていう心配もなくなるね!」

そう言って、私はモンブランを1個、カゴへと追加した。

コンビニで買った商品が入ったエコバックをぶらぶらさせながら、手を繋いで家へと帰る。

八千穂が夜空を見上げながら、

「繭香さ、結局モンブラン買ってたけど、飽きる日なんて永遠に来ないから」

と呟いた。

「うん。私もない。本当は甘いもの食べたかっただけ」

そう言って笑いかけると、八千穂が嬉しそうに握っていた手にぎゅっと力を入れた。

「帰ったらモンブラン1個ずつ食べよーね」

肩を抱き締めてくれたから、お礼と称してキスをした。


fin

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作品の完結、お疲れさまでした。 ハイスペの類くんが、実家住まいだったとは。 両思いだとお互いにわかってからの類くんの溺愛が、コメディ寄りの超甘々で微笑ましかったです。 番外編はどちらもとて…
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