市民の幸福に為に、処刑は必須です
「よし、後は一人を残すのみだな。」
「結構大変だったね。」
「ああ、全くだ。」
この人達仲間がいてもお構いなしに魔法を撃ち込んできたり、一人が抱きついてきて諸共後ろから槍で貫こうとしたりと仲間や自分を簡単に犠牲にしようとするので、厄介この上ない。
「ぐぬ…少年は添え物程度という報告だったが…そのせいで予定が狂ったか…」
いや、指揮官が無能だったせいだと思うよ。
個々の判断にまかせていればもう少し手強かっただろうな。
司祭さんがめっちゃこっちを睨んでいる。
視線で人が殺せるなら10回ぐらい殺せそうな怖い顔だ。
「神に認められた聖女が邪教徒に屈するとは情けない。事が済んだら全員自害して神に許しを請え!」
「全員自害とは穏やかじゃないですね。貴方もご一緒するので?」
「私は生きてこの事態を見守らねばならない。そして公式には、君達は聖女の大量殺人を犯した極悪人という事になる。」
わーお。
すごいね、宗教。
「それは参ったな。そんな事したら聖女さんの人数が足りなくなっちゃうのでは?」
「心配には及ばない。優秀な聖女候補はいくらでもいる。例えば、隣の国の学園で聖女と称されるレイア嬢だな。本当の聖女に任命すると言えば、喜んで馳せ参じる事だろう。ギルドの有望株を連れて来ても良い。」
「ここで貴方自身をどうにかするとは考えないのですか?」
「脅しなど無駄だ。ここの責任者は私であり、私の身に何かあれば犯人は自動的に君達という事になる。そして何事もなく後任がやってくる。それが」
「そうですか…大量殺人犯に認定されるのは御免だな、降参だ。降参します。」
ここまで人の命を安く扱うとは…
もしこのまま俺達が逃げたら、この司祭さんは本当にそうするだろうからな。
それに、まさか実家の姉さんの名前が挙がるとは思わなかった。
あっちに自覚は無いだろうけど、家族を人質にされちゃあねぇ。
とりあえず一度捕まって、《彼》にでも救出してもらおう。
「二人とも捕まえるが、君は明日に処刑だ。ソフィ君の方も、どうも体内の魔力反応がおかしい、適切な治療が必要だ。」
「どうして処刑なんです?」
「邪教徒は原則公開処刑なんだ。民衆の為にもなるし、これはこれで重要なのだよ。」
あー、日本でも昔はそうゆうのあったらしいな。
処刑を人に見せてストレス発散させるって奴。
俺が生きてた時代はそれが進化して、生きた人間を吊し上げて自殺させる方法が流行ってたな。
「まぁ、聖女に付いてきた時点で、そうなる事は確定していたのだから、気に病む必要は無い。諦めて心置きなく死んでほしい。」
「まさか、聖女になる時に未練を断ち切るってのは…」
「彼女らは聖女になる時、もれなく障害となるものを連れて来る。それは恋人であったり、親友であったり、親の形見などの物だったりするのだが、それを自分自身の手で捨て切ってもらうのだ。」
つまりこの人達、聖女にチャームをかけた後に同伴していた恋人なんかを自らの手で処刑させてたってことか。
そうすりゃ心の拠り所が無くなるわけだから、よりチャームにかかりやすくなるから一石二鳥。
胸糞悪い。
どうにか彼女らのチャームを解いてやろうかとおもったけど、これじゃだめだ。
無理矢理解除なんかしたら、自分のやった事を思い出して最悪な選択をしかねない。
「と言う訳で君達には捕まってもらうが、まずは…これを付けてもらおう。」
司祭さんが取り出したのは、古臭いデザインの腕輪だ。
「自分でそれを腕に嵌めなさい。」
さてさて、鬼が出るか蛇がでるか…
一応無言で薄く魔法障壁を肌に張り付けながら腕輪に嵌めてみる。
腕輪にくっついている魔石が赤く点滅し始めた。
「?」
あれ?特に何も感じないけど?
ソフィの方も困惑した表情だ。
そんな中、司祭さんはにこやかに話しかけてきた。
「なんの効果もなくて拍子抜けしているのかね?安心すると良い。その腕輪は今、装着した者の魔力の波長を解析しているのだ。そして解析が終わると、」
点滅が終了し、魔石がさっきより強い光を放ち始めた。
何だかモスキート音のような甲高い音も同時に発し始めた。
「装着した者を無力化してくれるのだ。我々にも詳しい事は分かっていないがね。古代文明の作り出したマジックアイテムなのでね。…ああ、もう聞こえていないかな?どうだい、苦しいのかな?」
聞こえてるよ。
でも、それに答える余裕は無くなってしまっている。
俺は床に突っ伏して脂汗をかいていた、原因は勿論この腕輪。
体中がぐしゃぐしゃかき回されているような感覚…体内の魔素を振動させてるのか?
魔力障壁を構成する魔素自体を振動されてしまっては、障壁の意味も無くなってしまう。
隣では、ソフィも倒れ込んでいた。
ソフィなんて体内に魔石がある分、苦しみもひとしおだろう…嘔吐しながらのたうち回ってる。
司祭さんは奥から人を呼ぶと指示を出し始めた。
「娘は処置が必要だ…例の部屋へ運んでおけ。少年は暴れないようにしてから牢に入れておけ…目に見える所は傷つけないようにな。公開処刑の質が下がる。」




