強キャラムーブ
「…ん?」
呼ばれた気がして振り返ってみたけど、誰も居ない。
ソフィだったかな?
中々帰って来ない所を見ると、意外にビギナーズラックで当たったりしてるのかもな。
とりあえずは眼前の勝負に集中だ。
次のゲームで目標額に届く、それが終わったら余剰分で別のゲームでも体験してみようかな?
「…お兄さん、今日は中々ついてますね。」
「そうですね、珍しい事もあるものです。」
ディーラーのお爺さんが話しかけてきた。
表情は崩れていないが、内心穏やかではないだろうな。
そろそろ店側の怒りを買ってしまうこともありそうだし、もう潮時か。
そんなこんなでもう一回だけ勝たせてもらう。
「…お見事。」
「いやはや、今日は本当にラッキーだった。それでは失敬。」
テーブルを離れようとした所で、
「ああ、そうそう。入ってきた時に一緒にいらっしゃったお嬢さんは…どちらにいったのでしょうかねぇ?変な御仁に絡まれていないと良いのですが。」
「まぁあの子に関しては見た目と違ってしっかりしてますからね、大丈夫でしょう。」
お爺さんは笑顔のままだ。
…え、あのソフィに限ってそんな可能性ある?
捕まえようと思ったら相当な強さじゃないと…いや、この間みたいに人間の中に魔族が紛れ込んでる可能性もあるか。
探知魔法を使ってみる…そんなに遠くでは無いけど、いくつか扉を隔てた所にいるみたいだな。
しかも、各所に門番みたいなのから見回りみたいなのがいる。
とりあえずは手近な扉の門番に聞いてみよう。
「あのー、私と同じ仮面の子柄な女性はこの扉を通りませんでしたかね?」
「いや、全く見てないぜ。もっとも、そんなに小さくちゃ視界に入ってないだけかもしれんがな。」
言い終わってガハハと笑う。
こりゃもう何を言っても無駄だな。
観光客ムーブの予定だったけど、しょうがないから強行突破させてもらおうかな。
まぁこんな時の為に仮面をつけて来てる訳だし
「そうか…そっちがそのつもりなら」
「お、なんだ?チビの癖に俺とやろってのか?」
そうだよ。
俺は懐からトランプを取り出した。
「これで通らせてもらおう。」
「なるほどな…トランプで俺と勝負して、勝ったら通してやるってか?人生そんな甘くできちゃいねぇよ。さっさと帰りな、それとも一発殴られねぇと」
カツン。
「分からねぇ…ん?」
門番の男は音と振動を感じて下を見た。
「俺の剣の…鞘?」
「中身も入っているよ、刀身ごと切断したからね。」
「テメッ…!?」
男は手を振り被ろうとするが、手が動かない。
「君は今、何故手が動かないのか不思議でしょうがないんじゃないかな?ちなみに、足も動かなくなってるよ。」
「何をした?」
身動ぎしようとしたので牽制しておく。
「ああ、無理に動かない方が良い、下手に動くと首と胴が離れ離れになってしまうかもしれない。」
「…」
「それじゃ、引き続き形だけ門番しといてね。戻って来たら解放してあげる。」
口ではそんな事言ったけど、実際にはトランプにカードで服の裾を壁に縫い止めただけなんだけどね。
でも多少魔力が伝わってるから、変に動くとまじで切れちゃうかも。
扉をくぐると、真っ赤な絨毯が敷き詰められた廊下になっていた。
こんなんじゃ侵入者がいても足音消えちゃうんじゃないの?
「おい、そこで何をやっている!?ここは一般人は侵入禁止だ!」
と思ったら早速見つかった。
なるほど、見張りをたくさん配置してるのね。
近寄って来た男に2枚トランプを投げつける。
「うぉっ!?」
投げたトランプは男の着ていた服だけをきれいに切り刻んだ。
「ヒィ!?」
股関を押さえて何処かに走り去っていった。
今回は漫画なんかで一瞬強キャラに見えるトランプ使いで行ってみる事にしよう。
「時間が無いから、さっさと行かせてもらうよ。」
そう、トランプ使いが強そうに見えるのは良いとこ週刊で1、2ヶ月だからな。
雰囲気強キャラの賞味期限が切れる前に終わらせる!




