共闘
俺とおっさんは酒場に移動した。
いつもなら夕食時は人でごった返している時間帯のはずなんだけど、何故か無人だった。
「誰もいやがらねぇ、どうゆうこった?」
おっさんも怪訝な表情だ。
それにしてもおかしい、誰もいないなんて事があるか?
ハッ!?まさか気づかない内にマンインザミラーの世界みたいな別次元の世界に飛ばされていたり!?
と思ったけど、そこら辺の文字も何もかも正常通り、探知魔法でも建物の外に人が多数居る事が分かったので、単純に人がいないだけみたい。
人がこれだけみんな外に出てしまうとなると、なんだろう?
王族のパレードでもあんのかねぇ?
「ガストンさん、今日って外でお祭りでもあります?」
「いや、特に何もないはずだが…」
うーん、じゃあ別の理由か…
「見つけたぞ!」
地味君も追いついてきた。そのままタックルをかましてくる。
さっきと同じ、ただ真っ直ぐ突っ込んで来るだけ。
必死な演技をしながら特に苦もなくヘッドスライディング回避、地味君はそこら辺の机や椅子を破壊した。
「おいおい何の騒ぎだ?というか、他の奴らは?」
酒場の隅から顔を出したのは前に足を引きずってたおっさん。
「ロニー、良い所に来たな。他の冒険者はどこ行った?」
「それは俺が聞きてぇな。便所に行って戻ってきたらこうなってた。」
「いつの間にか仲間を呼ぶとは卑劣な奴め…良いだろう、まとめてかかってこい!」
なんだか一人で熱くなってるなぁ。
気分は複数の悪漢に襲われる絶体絶命のヒーローってとこか。
「…で、どうするんです?僕は避けるだけで精一杯ですよ。」
「まぁ、殺すわけにはいかないしなぁ…」
「どうにか拘束するか、気絶させるかだな。これ以上暴れられたら酒場がメチャメチャだ。」
「じゃあ俺とロニーで気を引くから、坊主は援護してくれ。」
「分かりました。水鉄砲くらいにしかなりませんけどね。」
「ガストン、力で真っ向勝負するんじゃないぞ。」
「それくらい分かってらぁっ!」
ガストンさんはまっすぐ地味君へ、ロニーさんは右から後ろに回り込むように移動、というわけで俺は左の方から遊撃でもしようかな。
「C級風情が僕に敵うわけないだろ!」
「ふんっ」
地味君のマッチョボディから繰り出されるパンチを、おっさんがぎりぎりいなす。
そう何発も連続では防ぎきれないな。
2発目のパンチをいなした所でおっさんの体制が大きく崩れる。
「死ねっ!」
「“アクアショット”」
地味君の顔に向かって水鉄砲、地味君はたたらを踏んだ。
そこを後ろからロニーさんが急襲、首筋に手刀を叩きつけた。
しかし、結果はロニーさんの方が腕を押さえて飛びすさった。
「グゥッ!?こいつの首めちゃめちゃ硬いぞ!」
「貧弱だねぇおじさん、もっと鍛えないと!」
地味君がロニーさんの方に向かって拳を振り上げた。
「させねぇ!」
後ろからガストンさんが足を引っかける。
地味君がもんどり打って倒れた所で、ガストンさんが腕を背中側に捻り上げて体重を掛ける。
「やれやれ、これで大人しくなってくれるか?」
「こ、この野郎…この程度でぇ!!」
地味君の顔に青筋が浮かぶ、体中に力を込めてるんだろう。
少しずつ、押さえつけていたおっさんの体が浮いていく。
凄いな、腕一本と体幹の筋肉だけでおっさんの押さえ込みをはね除けた。
「すげぇなこいつ、伊達にオーガ二体狩った訳じゃ無いな。」
「ふりだしか。」
「チョロチョロ鬱陶しい奴らめ、さっきまでは骨折くらいで済ましてやろうと思ったけど、もう許さないぞ!」
いやあんた、さっき死ねって言ってませんでした?




