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シスターエルザの憂鬱 後編(シスター視点)

誤字報告どうもありがとうございます!

これからもよろしくお願いします

もういい、終わりにする。



「これは最後まで使いたくなかったんだけど、あたしの本気を見せてあげる。でもこれを見た以上は何があっても生かして帰せないの。それでも良い?」

「好きにするが良い。どのみち、悪を成すものを放っておく事は無い。」


それなら、遠慮なく。

あたしは更に擬態を解除した。


「フゥゥ、オ、オォ、ォ。」


全身の筋肉が盛り上がり、更にそれを厚い脂肪が包み込んだ。

骨格もどんどん大きくなり、擬態が解けきった時には頭が天井にギリギリつかないくらいまでの大きさになった。

自分で顔を見る事はできないけれども、醜い男のような顔になっているはず。


「ンフフ、おまたせ。これが私の本気を出す時の姿よ。恥ずかしいから誰にも言わないでね。」


あたしはサキュバスの中でも特殊で、精気を吸った男の力を取り込む事ができる。

筋力も、魔力も、そして体つきや顔つきまでも見境なく全てを吸収して取り込んでしまうから、若い頃はそれで仲間からイジメられた。

けど、力を溜めてから全員消してやった。


魔族の中でもあまり知られていない、私の秘密。

だから最近は顔が良い男の子を捕まえて精気を吸い、少しでも顔つきをマシにしようとしているのだけど、全然足りない。


コイツも声からして顔は悪くない筈だろうけれど、気が変わった。

もう原形を留めない程にしてやる。


「体は大きくなったからって、ノロくなったと思わない事ね、寧ろ。」


一瞬で奴の後ろに移動して、


「さっきよりも速いわよ。」


打つ。


完全に捉えたと思ったけれど、感触は軽かった。

反対側に跳んで威力を殺したか。


「意外に反応出来るのね、でも避けるので精一杯といった所かしら?」

「それだけ力があるのなら、シスターより良い仕事がありそうだがな………引っ越し業者かな。」


奴は危なげなく着地をすると、ポンポンと体の埃をはらった。


「あら、シスターも天職だと思っているわ。お化粧すれば、女は化けるのよ。」

「そうだな、こちらも少しお化粧をさせてもらおうか。」


そう言うとブツブツと何事か呟いた。


「モード:エクスキューショナー」


すると奴の肩や胸の防具に切れ込みが入り、切れ込みが僅かに開いた。

その切れ込みの溝にはキラキラと光が走り、兜の目元部分にも赤い光が灯っている。


「なんだかショボい変化ねぇ………」

「別に、お前の感想は重要では無い。そう思うなら試してみるが良い。」

「そう、後悔しない事ねっ!」


再び、一気に間合いを詰め、拳を振り下ろす。

あたしの拳に合わせるように、手の平を上げて来

た、ガードのつもり?


あたしの本気の一撃は、ミスリルすら熟した果物の如くグシャグシャにできる。

試した事はないけど、魔族領でもまともに受け止められる奴は殆ど居ない筈だ。

何しろ人間社会に紛れこんで、長い時を掛けて男達から吸収し、溜め続けた力だ。

自前の魔力だけで満足してるような奴らに負ける訳がない。


そんな私の最高の一撃。

ガードごと押し潰すはずだったあたしの拳は、あっさりそのまま受け止められてしまった。


「な、なんで?」

「力を受け止める時に、同じだけの力を用意する必要は無い。重要なのは技術だ。」


奴が足元を指差す。

つられて見てみると奴の足の下、石畳にヒビが入っている。

放射状に、まるで蜘蛛の巣のような綺麗なヒビだ。


「馬鹿な、そんな筈がない!何か仕掛けがあるのね!」


私は下から左右から拳を繰り出したけれど、それら全てを受け止められ、捌かれてしまった。


「こ、この………ちょこまかと!」


最後に突き出したストレートを掴まれ、そのまま投げられてしまった。


「ぐぁ!」

この程度の投げ………ダメージは無い筈なのに、ストレスで体が重く感じる。


「“ギルティバインド”」


立ち上がったあたしの両手が左右から伸びてきた鎖に捕らわれた。

引っ張って千切ってやろうとしたけれども、どれだけの強度持っているのか、鎖には傷一つつかなかった。


「無駄だ。この鎖は犯した罪の分だけ強度が増す。」

「ググ………」

「“ボルカノンロッド”」


奴の手に、光輝く剣状の棒が出現した。

アレは、まずい。

一体どれだけのエネルギーを秘めているのか、全く想像がつかない。

それでも、あたしはまだ余裕だった。



あたしの最後の切り札、紋章転生。

今の体で死んでしまっても、紋章を刻み込んだ相手の頭を乗っ取って転生できる。

誰に対しても転生できる訳ではない、同性で有る事、すぐ近くにいる事、相手の同意が必要な事など、クリアしなければならない条件がある。

だから、快楽漬けにして判断力を落とし、半強制的に同意させるのだ。

今回の転生の対象はそこで昏倒しているレイ。

この体を手放すのは惜しいが、しょうがない、レイならば魔力も強いし、器としてはこの上ない。

この黒ずくめが老いるまで雌伏し、それから再び力をつけよう。


「“ジャストリンカネーション”………あれ?」


転生魔法を発動したけど、様子がおかしい。

レイとの転生のリンクが切れている?

何故?まさかレイの方が先に死んだ?

確認の為、レイが飛ばされた方を見ると、レイはさっきあたしが喰おうとした少年に抱き止められていた。


「え………な、なんで?」

色々状況の理解が追い付かない。

どうしてリンクが切れてしまったのか。

どうしてあの少年は誰からの命令も無いのに、レイを抱き止めるという事ができているのか。

どうして少年は全てを理解したような顔で、こちらにウインクまでしてくるのか。


「祈りの時間は終わりだ。」


すぐ近くで声がした。

奴が既に剣を構えている。


「や、あの、ちょっと待っ………、」


命乞いの間もなく、奴の剣があたしの体に突き立った。

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