後の俺tueeeの為に(勇者視点)
そしてたどり着いたボス部屋
ここに目的のものがある。
僕は息を整えると、 ゆっくりとボス部屋の扉を開いた。
部屋の中央には、 蜘蛛の上に少女の上半身がくっついてる、アラクネシンデレラというボスモンスターがいた。
アラクネってのはその美貌で人を惑わすというけど、あの蜘蛛が全部台無しにしてる。
よくあんなキモい生物に拐かされる人間がいるな、そんな人とは付き合いたくない。
まぁここにもその残念な思考の持ち主がいるんだけどね。
人型の少女の部分が少年とおぼしき金髪の人間の首筋に顔を埋めていた。
あれ?吸血してる?
ゲーム版だと蜘蛛の口でむさぼり食ってて最高にグロいんだけど。
これなら見た目がマイルドで助かる。
僕が召喚されるまでの間にアップデートでもあったのかな?
何にせよ、こっちに注意を向けて貰わないと。
「そこまでだ。」
アラクネの首がグリンッとこっちを見た。
何かブツブツ言ってる。
「邪魔ヲ、スルナアァァァァァ!!!」
抱えていた人間を跳ね飛ばし、猛然とこっちに突っ込んで来る。
あの勢いじゃ、何にしても死体になったなあの坊ちゃん。
ここに来て初めてのまともな戦闘だ。
だけどこいつの攻撃パターンは全部分かってる。
まずは突進からの前脚攻撃。
振りかぶりきったら振りかぶった足の方向に一歩、振りかぶりが小さい時は顔狙いなので首を傾げる。
振りかぶった直後、目が光ったら、横殴りなのでしゃがむ。
何度か繰り返していると、アラクネの蜘蛛の口がカパッと開いた。
この瞬間を待ってたんだ。
キモいけど蜘蛛に接近し、蜘蛛がブルッと体を震わせた直後、蜘蛛の顎部分にアッパーを食らわせる。
吐き出そうとしていた毒が体の中で爆散し、大ダメージプラス毒の効果で、次の一発のみ攻撃への防御が下がる。
そして毒霧キャンセルをすると必ずやってくるのが
初級魔法のダークニードルを四方八方に飛ばしてくるユニークスキル、“ダークニードル・ダウンプア”。
初級魔法の乱れ打ちと侮る事なかれ、こっちの目の前が見えなくなる程の豪雨の如き量なのだ。
このスキルは通常の結界じゃすぐに削りきられちゃうし、上級者でも全てを避けきるのはほぼ不可能。
普通はタンク役に良い防具を持たせて、防御系バフモリモリで乗り切る。
とはいえ、抜け道もいくつか存在する。
その一つがいわゆるシューティングゲームの安地だ。
安地とは安全地帯の事で、一見避けられないようなものでも、一点だけ全く当たらない地点が存在するってもの
だ。
僕は蜘蛛の真横、前脚ろ2本目の足の真ん中から外側に2歩歩いてしゃがみ込んだ。
地面の模様も見飽きるほど練習した、実家のような安心感。
直後、空中に浮かんだ魔法陣からとんでもない量のダークニードルが放たれる。
ゲームでも迫力あったけど、質量を感じると余計に怖い。
今も顔のすぐ横をヒュンと通り過ぎて行った。
大丈夫とは分かっていても、一発でも当たれば無事では済まない。
半ば祈るような気持ちでこの豪雨があけるのをジッと待った。
どれだけの時間が経ったか。実際には15秒位のはずだけど、体感時間はより長く感じた。
………少しずつ弾幕が薄くなってきた。
永遠にも思えた耐久の時間も終わりだ。
僕は空中の魔法陣が消えるのを待って、ゆっくり立ち上がると、蜘蛛の真下に潜り込んだ。
「はい、おつかれさん。」
使うのは光属性を付与する“ホーリーウェポン”と格闘技で突き属性の“貫手”だ。
アラクネにはこの組み合わせが一番ダメージを与えられる。
ズブッという感触があり、手が蜘蛛の内部に差し込まれた。
うへぇ、気持ち悪い。
あれ?このパターンを3回はやらないと装甲を貫通出来ないはずなんだけどな………
まぁ、蜘蛛を触るなんて気持ち悪いこと何度もしたくないし、助かるけれども。
そのまま手を更に突っ込んで辺りを弄ると、手の先に握り拳大の硬いものが引っ掛かった。
あった!
ドキドキしながら手を引き抜くと、紫色の魔石に小さな剣が刺さっているのが出てきた。
ビンゴ!
「良かった、ちゃんと取れた。ゲームだとここを突けば取れるってだけだったから。」
この魔剣パラポネラが欲しかったんだ。
あとは低レベルで強力なボスを倒す事による[ジャイアントキリング]の称号と、それに伴うレベリング。
僕はすぐさま魔剣を魔石から引き抜くと、魔石を放り投げた。
これで勝利条件が満たされ、大量の経験値が入る。
そして、魔剣を抜くのにもたつくと何故か魔剣が消えてしまう。
更にアラクネと、そこで死んでる奴がゾンビ状態で再度襲いかかってくるというおまけ付き。
「僕がほしいのはこれだけだから、魔石は返すよ。呪われてるし。」
すぐさま大量に入ったスキルポイントで上級魔法を習得した。
「じゃーまたね。“テレポート”」
後で会うであろうロコー家の残念息子に一声かけて詠唱。
足下に魔方陣が表れ、一瞬光ったと思うと一気にダンジョンの入口まで帰ってきた。
右手にはまだ蜘蛛の体液がついてる。
「うぃぃ、気持ち悪い。川が近くにあったよね?」
僕は手を洗うべく、近く川に向かって走って行った。




