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チートなおじさんが国王様のお話を聞きました。

遅くなってすいません!おじさん聞き役です!


『これはある国王様の物語。

まぁ、当たり前だけど僕の事じゃない。

今から数百年前、この第一王国は【魔界】と呼ばれていた。理由はただひとつ。魔王、人外と恐れられる王がいたからだ。そいつこそが、(カルマ)。国王様さ。

その国王様の能力は、詳しくは分かっていないが、【最強】である事は確かだ。

国王様はその【最強】の能力を使って、国ばかりではなく世界をも支配していた。

人ではなかった。神でもなかった。ただのひたすら殲滅する機械だった。そんな国王様を、そんな国王様に護られている民は怖れた。愚かにも。

それと同じ頃のある日、一人の男が「いつの日か自分も殺される」と勝手に思い込んで、寝入った国王様の右目を剣で突き刺した。

当然、その男は右目を刺されて飛び起きた国王様に殺されて、死んだ。騒ぎを聞いて急いで国王様の部屋に来た護衛によると、国王様は泣いていたそうだ。

「どうして、私は強くあらねばならない?尊敬の眼差しと同じように軽蔑と恐れを受けねばならない?私は強くなどなりたくなかった。ただ、民を守りたかった。国を守りたかった。魔王と呼ばれようとも。私は守りたかった。なのに、何故だ。何故だ。私は流行り病でしかないのか。英雄にはなれぬのか。人を外れた者にしかなれぬなら、こんな力など、いらぬ!」

国王様は初めて涙を流した。血と一緒に。手当ては受けなかった。それほど疲弊していた。絶望していた。

多分、そのせいだろう、目の傷は化膿して悪化し、黒目は紅く充血し白目は黒く腐った。それは右目だけではなく、左目も似たように変わってしまった。

民はますます彼を怖れた。

彼はますます信頼を求めた。

そんなとき、聡明な国王様は知ってしまった。

自らの能力を他人に【渡す】方法を。

国王様は早速方法を試した。やはり賢い国王様は、簡単に方法を成功させてしまった。まだ幼い赤子に自らの能力を【渡し】、赤子をその場で刺し殺した。

そして、翌朝国王様は民に言った。

「私は魔王ではない!君達と同じ人間だ!泣きもする!笑いもする!夜空の星の瞬きに遠い母を想ったり!夜明けに感動したり!お伽噺の勇者に憧れたり!人を愛したり憎んだり、愛を求めたり。……私は人間だ。それに最早私に力は無い。簡単に死ぬ。暗殺される危険性も増した。だが、私はあえて言おう。私は力を失った。……が、国は守る。得体の知れぬ魔の力ではなく、人の力で守る。約束する」。

何と神々しい。何と勇ましい。

民は心を……………動かされなかった。

愚かな民は思った。

「力が無くなった王の守る国など本当に安心できるのか?」

とね。そして争いは唐突に始まった。国王様を殺す争いだ。不安に包まれた民はがむしゃらに自分達か何をしているかも考えず国王様を殺して新しい国王様に変えようとした。

結局、無理だったけど。

悲しみを通り越して怒り狂った国王様は、奇跡的に残っていた僅かな唯一の能力を使って国を、守りたかった民を滅ぼした。最強であった国王様は、民を滅ぼした悪者、心が最も弱き者として、蔑まされ、ひっそりと姿を消した。

そしてその荒れた地にこの第一王国を創立したのが異世界からの訪問者…まぁ最後は蛇足だけど、こんなとこさ。別にめでたくないけど、めでたしめでたし』


話が終わった途端、イミの手が自分の右目に触れそうになり、我に返って後退りしようとするがイミは尋常ではない素早さで、反射的に閉じた瞼を常人よりは尖った爪でつぷ、圧迫した。爪の先が食い込んで痛い。

カサネはそれを咎めるようにイミを見つめたが、イミはこちらを見たままだ。開いたままの左目が外気に触れて乾くのを感じる。

「この目は、国王様…つまり(カルマ)にそっくりだ。なぁ、君」

「ッ、ぐ、………ちょっと…?」

「君は信用に値する人間か?」

「…ッ、」

ブチィ、瞼が少し切れた。カサネの息の飲む音と、右腕を刀に変化させている音が耳に入ってきた。

「やっぱり、僕は一国の主だから、危険性のある人物を国にいさせてあげるわけにはいかないんだ。例えカサネの友人でも、ね……」

「ハ…」

圧倒的な凄みに冷や汗が垂れる。それと同時に、自分のぶら下がった右腕の拳の中に小さな風を感じた。所謂、超能力。

【それ】をぶつければ、確実ではないが、イミを驚かせることは出来るかもしれない。

でも。

拳を強く握り、風を消し去る。失礼だと思った。国王に攻撃するなんて。この人は正論を言っている。なのに殴るなど、ダメじゃないか。そう感じた。

「おい…?」

無反応なこちらが不思議なのか、イミは訝しげにこちらを見た。目付きは若干険しくなっている。

「僕は、信用できます。できると思います。目を、潰されても。それは覆せませんよ?」

微笑んで呟くと、イミは数秒呆然としたあと、瞼の指を離していきなりまるで幼子のような笑顔を浮かべた。カサネは右腕の刀を戻して、ポカーンと口を開いている。

「おっもしろいねー愉快愉快!いやいやホント!ごめんねー怖がらせちゃって!あははー試したかっただけだからさっーー!信用するよー勿論!こんな面白い子人生で初めてだー!イヤーこれからヨロシクーッ!」

手を握られブンブンと風を切る音が鳴るほど振られカサネと同じような表情を浮かべながらも、ゆっくりと頷く。

「は…はぁ、はい」

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