チートなおじさんが国王様と会いました。
遅くなってすいません。短いです。おじさん戸惑います。
リアンを先頭にしばらく歩いていると、リアンが廊下を進んだ先にある巨大な木の扉の前で止まった。カサネと話していたのでそれに気づかず、リアンの背中に思いきり鼻をぶつけてしまったので、リアンにゴミを見るような目で睨まれたのは置いといて、リアンがゆっくりと扉を開けた瞬間、あまりの光景に本日何度目か分からない驚きで目を見開いた。
そこは、よくゲームの国王様がいるような豪華な部屋でもなく、先程の純白の壁やレッドカーペットも無い、そう、一番適切なのは、『学校の教室』。木の机や椅子が黒板に向かって並び、壁には可愛らしい掲示物が壁に貼ってある。教室と唯一違う点は、壁の色だった。ただの赤ではなく、血を塗ったような赤黒い色。その異様な光景の中に、一番端の机にどっかりと座った少年が一人。少年は紫がかった黒髪を肩の辺りで揃えており、瞳は鰐のような金色で、服装はちらりと見える裏地が紫の学ランだった。その美しい外見のせいか、唇に刻まれた何かを企んでいるような笑みがとても気味悪く見える。少年は、笑いながらカクリと玩具のように首を傾げると、こちらにその細い指を指した。
「君は僕の客人か?」
国王と言う名のわりには若い声だった。
「ああ…はい」
コクンと頷く。すると少年は机に座っていて宙に浮いていた足を床に着地させ、こちらにゆっくりと向かってきた。
「やっぱりね。僕はイミ・ブレイクボールドウィン。カサネの父親だよ。これでも齢は80以上だ。自分で言うのも何だが、『人は外見では判断できない』を体全体で表現している容姿だと心から思う。君は?」
「僕は…ケンジ。名字は、」
「ううん、名前だけでいい。名字は出生が簡単に分かるモノだから、簡単に他人に教えるのは駄目だよ。もし僕が悪人だったらどうするつもりだい?まぁ、それは置いといて。僕が聞きたいのは君のその目の事さ」
鋭い視線でまくし立てるように言われ、指された指先にある自分の変色した瞳のことをやっと思い出した。
「君の目は、あいつに似ている」
「あいつ?」
「会ったばかりで申し訳無い、失礼な事を言うが、君の目は、あいつに似ているんだ。最強最弱の、『あいつ』に」
その言葉の意味を理解する前に、隣にいるリアンが咎めるようにイミを睨み、カサネも不穏な空気を感じ取って体に力を入れた。
「業」
「ッ!」
カサネの表情が驚きに変わった。それがなぜだかはまだ分からない。
「カサネ、君はまだ話していないのか?ああ、多分そうだと思った。思った通りだ。君はまた記憶に無いとか覚えていないとか嘯いて詳しく話していないのだろう。面倒だから、僕が話してあげよう」
イミは一呼吸置いて微笑みながら呟いた。
「罪深い男のお伽噺を」




