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特使団が部屋を出ていったあとも、関東軍幹部たちはすぐには席を立たなかった。机の上には未来日本から持ち込まれた文書があり、閉じられたPCと再生機が残した印象も消えていない。
吉本が最初に口を開いた。
「どう思われます」
梅津はすぐには答えなかった。
「分からん」
短い返事だった。
「しかし、あの飛行機は本物だ」
「はい」
「南雲中将の件も確認する必要がある」
「すぐに照会させます」
「東京にもだ」
吉本は一瞬黙った。
「東京につながれば、ですが」
その言葉で、部屋は再び静かになった。
彼らがまだ知らない最大の異常は、そこにあった。
1941年の東京へ連絡しようとしても、そこにあるのはもう彼らの知っている東京ではない。
一方、司令部から少し離れた場所では、甘粕正彦のもとへ新しい情報が届いていた。奇妙な航空機から降りてきたのは日本人だったこと。陸軍でも海軍でもない「自衛隊」と名乗ったこと。そして、関東軍司令官との会見が行われたこと。
甘粕は報告を最後まで聞いた。
「自衛隊、か」
聞いたことのない言葉を、一度だけ口の中で転がした。
「連中はどこに泊まる」
「そこまではまだ」
「分かったら教えてくれ」
「会われるんですか」
甘粕は答えなかった。
机の上には満映の書類が積まれていた。その横には、撮影予定の映画についての資料もある。
甘粕はその一枚を手に取ったが、すぐに戻した。
空中で止まり、そのまま地面へ降りた日本の航空機。
存在しないはずの組織。
未来から来たと名乗る日本人。
関東軍が彼らを逮捕せず、会見の席まで用意した。
ただの狂人なら、そうはならない。
甘粕は椅子から立ち上がり、窓の外へ目を向けた。
新京の街はいつもと変わらず動いていた。
だが、どこかで何かが大きく狂い始めている。
そんな気がしていた。




