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ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
四周目 ある人達の話
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第七十八ゲーム・二人の英雄


湊はハナトの前にこうべを垂れる二人のー?ータロットカード達を見てまるで王とその臣下のようだと感じた。短剣と敵から奪った武器を握る手に思わず力が入る。魔神族はまだ侵略を続けている。ヒイロから薙刀を渡されたハナトはうん、と力強く頷き、二人を見た。


「アナタたちの力、心を、見せてください!」

『承知した』

『まっかせてー!』


ウィンとヒイロが力強く返事を返す。そしてヒイロは彼女の背後を通りすぎようとした魔神族の首根っこを後ろを見ずに掴み挙げるとコンクリートに叩きつけた。突然の攻撃に驚く敵に起き上がる時間さえ与えずにその腹に足を振り落とす。さらに道に食い込む魔神族の首をピッと人差し指でなぞる。なぞられた箇所から紅い血痕が滲み、最終的には首が掻き切られた。ヒイロはその手についた、いや、まるで刃物のように鋭く伸びた鉤爪についた血をペロリと舐め、ニヤリと笑った。その笑みがヒイロを少女と云うよりも妖艶な女性と錯覚させ、彼女に襲いかかろうとしていた魔神族が腰を引いた。ハナトが自身の方へ飛んで来た魔神族の翼を薙刀で切り裂き、薙刀を両肩の上で回しながら左へと持ち手を変えると、落下し別の攻撃手段を取ろうとする魔神族の頭に刃を落とした。それでも倒れなかったが、ハナトは諦めずに再び薙刀を振り落とす。一瞬一瞬を無駄にはしない、と言いたげなその素早い薙刀捌きは敵の体力を的確に奪って行く。と、突然、ハナトが退いた。チャンスだと魔神族が跳躍しかける。


「ウィン!」

毒地獄へようこそ(ポイズン・ヘル)!』


ウィンが杖の切っ先をハナトが相手にしていた魔神族がいる範囲、正確には彼の足下計直径四メートル範囲に向けて振る。途端、コンクリートがブクブクと音を立てて溶け始め、溶け始めたところからは不気味で恐ろしい色をした毒がまるで噴水のように吹き出る。その範囲内に収まってしまった魔神族達は逃げようともがくがそれよりも早く、黒い無数の手が敵を毒沼へと引きずり込み、敵を絡め取る。毒に触れた魔神族は気が触れた?とでも思ってしまうような奇声の悲鳴を上げながら毒に蝕まれ、成すすべなく倒れていく。範囲内にいた魔神族全てが倒れると先程まで地獄絵図だった不気味な毒沼はまるで「用はすんだし帰るわ」と言わんばかりに姿を消した。それを間近で見ていた湊とツキカゲ、そして清光はあんぐりと口を開け、笑った。


「ハナト、強いじゃん!」

「へへ…薙刀は得意なんです」


湊の称賛にハナトは照れたのか頬を赤く染めながら後ろ手で敵を沈黙させていた。見ずに行ったので湊は目を丸くした。凄い。私も出来るかな?その後ろではヒイロが魔神族の顔に飛び蹴りを食らわせていた。湊はツキカゲと顔を見合わせると頷き合った。嗚呼、彼がそうならば


「行くよツキカゲ、清光!」

「にゃんみゃ!」

「無理はしないようにね!」

「分かってるよ!」


私達だって、歓迎しよう!

湊はツキカゲと手首を軽くぶつけ合うと彼らは大きく跳躍した。湊が標的にしたのは大きな刃を肩に担いだ魔神族だ。片手に敵から奪ったままの武器を、短刀を握りしめたまま彼女は滑るように敵に接近する。湊に気づいた魔神族が刃を大きく振った。ブンッと云う音と共に風圧が湊を襲う。が湊は刃が振られると同時に上空へと大きく跳躍していた。空中で体勢を維持しながら魔神族の元へと降下する。だが敵もそこまで馬鹿ではない。上空から落ちてくる湊を察し、刃の切っ先をこちらに向けた。降下してくる湊を突いてやろうということらしい。湊がその切っ先に触れる…と云うところで右足を勢いよく横に蹴った。そしてそのまま短剣を刃に擦りつけるように切つけた。衝撃に刃が軽くよろめくがすぐに体勢を立て直す敵。湊もそれを見越し、着地すると素早く相手の背後に回り込んだ。敵が彼女を探す中、気配を消して短刀を腰の辺りに突き刺し、容赦なく抜き放つと続けて殴るように振り回して攻撃した。魔神族が苦痛の声をあげ、刃を振り回す。しゃがんでよけたはずが、半回転していきなり戻って来てしまい、その刃が湊の前髪を軽く持って行った。空に散る微かな色。湊はまさかの動きに驚き、こけてしまい、後方に転がってしまった。そのついでに頭を打った。地味に痛い。


「いったぁ…て、うわ!?」


倒れ込んだ湊の頭目掛けて刃が振り下ろされた。湊は紙一重で横に回転してかわすとこちらに照準を合わせた刃に向かって勢いよく立ち上がりながら飛び蹴りを放った。刃に湊の渾身の一撃が炸裂し、その衝撃が魔神族を後方に仰け反らせる。飛び蹴りをして跳躍した湊は魔神族の頭を足場にしてまた大きく跳躍すると短刀を頭上から脳天狙ってダーツのように投げた。湊が頭上に飛んだのは知っていたが、反応が遅れた魔神族の脳天に短刀は突き刺さり、敵は痙攣して倒れた。湊は倒れた敵の近くに降り立つと短刀を抜こうか一瞬迷った。自分には短剣があるし、なにしろこれは元々敵のだしなぁ…案外短剣と一緒でしっくり来てしまったようだ。そこまで悩んで湊は手を引っ込めた。次の瞬間、まるでその手を強奪するかのように、それでいてしなやかに鞭が叩き付けられた。間一髪で、まだ湊が手を伸ばしていたら鞭の持ち主である魔神族に捕らえられていただろう。短剣を構え、敵に視線を向ける。が、敵は素早いらしく鞭だけが残像を伴って湊を攻撃してくる。残像まみれの鞭が湊の肩を掠め、摩擦熱に思わず肩を庇った。そこを狙い、敵が攻撃を放った。


「にゃんなー!」

「清光!?」


ガシッと鞭を口で上手い具合に咥えた清光。湊が驚きながら清光を見やる。清光は「なー」と口ごもった声を上げながら、グイッと鞭を自分の方へ引っ張った。獣と魔神族ー人の姿ー、力の差は歴然である。魔神族が前のめりに体勢を崩す。その背後にいつの間にか回り込んだツキカゲが刀を振り回す。良い音がして魔神族の首が胴体からおさらばした。が切られた首からまるで手のような黒い影がユラユラと伸び始めた。ツキカゲは軽く目を丸くしつつ顔を歪めた。早く撤退しないと!そう思っていたのはなにもツキカゲだけではない。黒い影は背後にいたツキカゲに向かって手を伸ばす。その手の素早さにツキカゲは抵抗する間もなく捕らえられてしまった。清光の真似なのか、コンクリートに叩きつけるようにしてツキカゲを引っ張る。


「ツキカゲ!」

「僕は大丈夫、っと!」

「?!」


がしかし、ツキカゲが簡単に屈するはずなどなかった。倒れ込む寸前で身動きが取れる両手を前に出し、転倒を防ぐと勢いよくコンクリートを押し出して立ち上がる。まさかの出来事に面食らったー首から上がないので本当に面食らっているのかは謎だがー魔神族の上半身がツキカゲの行動によってまた前のめりになる。ツキカゲは影の隙間に刀の切っ先を滑り込ませると一気に引いた。途端、影はパラパラと消え去る。ツキカゲが手首を軽く動かす。少し捻ったのか、それともぶつかったのか紅い線が見える。しかし、そんな事など気にも止めずにツキカゲ跳躍し、魔神族の胴体に刀を勢いよく叩き込む。あまりの痛さに魔神族が今度は仰け反る。ツキカゲは少し魔神族から距離を取ると首元目掛けて回し蹴りを放つ。吹っ飛んでいく敵の胴体から刀を引き抜くことも忘れずに。吹っ飛んで行った敵をツキカゲから受け継いだのは清光だった。口に咥えた敵の鞭をバシン、バシン!とコンクリートに打ち付けて唸らせながら敵を鞭で絡め取る。そして、容赦なく壁に打ち付けた。逃げ出そうとする前にツキカゲによってつけられた傷に追撃を与え、爪でその部分の肉や骨を切り刻む。びくびくと痙攣を始め、魔神族は次第に動きを止めた。清光は何処かつまらなそうに手を外した。鈍い音がして魔神族が座り込んだ。

湊は周りの状況を確認しつつ、ツキカゲと清光の強さに小さく笑った。


「ツキカゲ、清光!無理しないでね!」

「それ、僕が言ったやつじゃん」

「なぁおん、んなー!」


そして、敵に向かって跳躍した。

連続で投稿するの久しぶりな気がします……

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