誰かの思い出話について
上へ上がる階段をゆっくりとした足取りで上がる。上の階に誰がいるのか、把握はしていない。けれど、きっと数人はいるだろう。階段をあがってすぐの部屋の襖を横に引く。此処は和風も洋風もごちゃごちゃに混ざり合って、融合して、調和している。その部屋に入ると窓辺に足を立てて座る男性とその傍らに寄り添う少女、そして近くの壁に寄りかかって同じように外を見ている少年がいた。男性の手には盃が握られており、こんな昼間から酒盛りをしていたのだと思うと、気が抜ける。
「おお、来たか」
男性がこちらに気付き、片手を上げた。こちらに来いと云うことだろう。けれど、そんな余裕はない。その事実を告げようとすると少年がこちらへやって来、抱きついて来た。
「お待ちくださいませ。一緒に召し上がりましょう?」
「何を?」
「極上のお酒です。この間、カミヨさんが手に入れて来ましたの」
ふわふわとした、少年とは思えないような、まるでわたあめのような髪をなびかせ、柔らかい口調で言いながら少年は少女を振り返った。それに少女は一瞬、困ったように笑った。「どうやって?気になるな」と聞けば、彼女は軽く頬をかきながら言う。
「偶々だよ。仕事を終えたら、そのお礼にってもらっちゃったんだ」
「それでも、このお酒は美味しいです。ですよねアサギリさん?」
少年が今度は男性を振り返った。男性はそれに答える代わりに盃に入った酒を一気に飲み干した。そして、傍らの少女の頭を優しく撫でた。突然の事に少女は驚いていたが、嬉しいのか頬を軽く染め、「へへっ」と笑う。その笑みに男性も笑った。少年が再びこちらを見上げる。頭を撫でて欲しいのかと思って、ふわふわの髪に触れる。合っているようで間違っていたようだ。複雑な表情である。だったらなんだと云うのだ。そう主張するように唇を尖らせると少年に突然、手を引かれた。
「レアン…?」
「ふふ、お召し上がりくださいませ?それでチャラとしましょう」
「お、なんだ。貴様もレアンに弱味でも握られたか?」
「もってなに?も、って!違うから!」
お酒を飲まない事に不満があったようだ。無理矢理のように二人の前に連れて行かれ、少年から盃を渡される。そして、有無言う前に酒をこれでもかと言うほどに注がれる。その量を飲まない訳には行かない。本当は、昼間には飲みたくないんだけどなぁ。そう思いながらも一応で盃を受け取ると三人は満足そうに笑った。
「じゃあ、アサギリ兄さん、音頭を取ってよ」
「良いですね。カミヨさんが指定したので、お願い致します」
「ハッ、上等だ」
並々と酒が注がれた盃を太陽の光にかざしながら男性は思考する。そして決まったのか、全員に盃を掲げるように促す。これを飲んだら退室させてもらおう。まだ行くところがたくさんある。男性はそんな事など気にもせず、言う。
「我らが恩師であり恩人に、そして、貴様に」
貴様、と云うところでこちらを向いた。なんとも力強く、信頼していると言わざるを得ない三人の瞳が貫く。それにまた、決意が決まって、揺らいでしまう。
「そして俺達に、末永い栄光と幸福あれ」
「「あれ!」」
カツン、と盃をぶつけ合って三人は酒を飲んだ。自分も酒を一口飲んだが…自分には合わないようだ。舌がヒリヒリするし、苦味がある。それが三人にとっては美味しいのだろうけれども。けれども、喉元まで出かかった言葉と感情を流し込むように苦手だと感じた酒を一気に飲み干した。
此処まで!次は木曜日に投稿します!ゆっくり投稿出来るかな……多分……




