第七十三話「日の出」
冷たい風が吹き抜ける真夜中の荒野。
乾いた大地に背中を付けて横たわり、空高くに昇った2つの月と無数に煌めく夜空の星々を見つめる。
「It's always darkest before the dawn.(夜明け前が一番暗い。)」
シェイクスピアを生んだお国柄だろうか。
イギリスの諺はセンスがいい。
ごろごろ ごろごろ
狭い寝床を右に左に寝転がる。
「ひ・ま。」
今日は、少しばかり寝ざめが早すぎたのだ。
電気の灯りが灯らぬ自然界。
夜の訪れは早く、眠りに就く時間も当然に早い。
このような夜更けに眠りから覚めると言うことも、同様にして当然のことなのだろう。
「星でも数えよ。」
夜空に広がる星の海。
この世界の星々は、本当に明るい。
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「少し明るくなってきたかな。」
無数に煌めいていた星々は徐々に光度を落とし、漆黒だった空もまた少しずつ明度を上げてきているのだ。
気が付けば、空の色は群青色である。
赤土の大地から体を起こし、ゆっくりと伸びをしながら辺りを見回す。
群青色の空の中、森の方角が微かに赤い。
まだ少し早いが、そろそろ活動を開始しよう。
土をかけて焚火の炎を消し、寝床のバリケードを開け放つ。
今日こそは、水無し川の対岸に新しい寝床を作るのだ。
とことこ とことこ
森を右手にして、荒野を歩く。
視界の右側が、ほんのり赤い。
もうすぐ夜が明けるのだ。
足を止めて、空を見上げる。
先ほどまでは群青色だった空が、薄っすらと白い。
夜明け前、徐々に夜が白んできたのだ。
あれだけ輝いていた夜空の星々も、今や幾つかの一等星を残すのみである。
森の方角に目を移せば、出立時には微かだった赤が厚く、森の方向とは逆・・・山脈の方角に目を移せば、未だ空の青みが濃い。
真っ暗だった夜空は、いつしか赤、白、青のグラデーションである。
「きれい。」
森の方角に体を向けて、刻一刻と変わりゆく空の色合いをただ見つめる。
地平線の上で赤い朝焼けの層が少しずつ厚みを増し、空に残った星々が一つまた一つと姿を消していく。
地平線に広がる朝焼けの最も厚い部分・・・あそこから太陽が昇るのだろう。
夜明けが近い。
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地平線に光が走り、太陽が昇る。
光射す。
森に、荒野に、山脈に。
光を遮るものの無い荒野。
僅かに生えた草木、地上に転がる小石に長い長い影が生まれる。
ああ、太陽の新鮮な光が、僕の体に降り注ぐ。
世界各地で行われてきた太陽信仰。
その源流は、この朝日の中にあるのだろうか。
この光の中で、心の扉が開かれるような、とても神聖な気持ちを感じているのだ。
両膝を大地に付けて、太陽に向かって祈りを奉じる。
(願わくば、今日もいい日になりますように。)
転生生活五日目、始まりである。




