14 か〇かい上手の澄麗さん? からかい1
それは、あの事件から少しばかり経った、休日の朝のことだった。
「Heyキーくん。アタシとデートしようぜぃ!どーせ青春を持て余して、一人寂しく休日を過ごすんでしょ?若くて滾ってるからって、一人でエレクトリ〇ルパレードばっかりしてちゃあ体に良くないし、遅漏になるぜぃ。あ!でも女の子としては長持ちしてくれた方が嬉しいかも。でも、あんまりダラダラとされるのも辛いからねん。てなわけで、アタシと一緒に太陽の元で、青春をLet’s Partyさ!」
「それじゃあ俺、ちょっと施設に顔を出してきます。そうそう、帰りは夕方くらいになると思うんで、昼ご飯はいりませんから。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいキーちゃん。おチビちゃんたちによろしくね」
「あ、あの、アタシとLet’s Partyは……」
「お夕飯はウチで食べるんでしょ?あまり遅くならないようにね。ああ、それから澄麗。そういうお下品なのはほどほどにね」
玄関口でいきなり妙なテンションの澄麗さんに声をかけられた俺は、何も見なかった、聞かなかったことにして出かけようとしていた。ちなみに華澄さんが下ネタを注意してくれるのはありがたいのだが、何かが引っ掛かる気がするんだが……。
そんな俺を見て、澄麗さんは慌てて俺のシャツを引っ張ってくる。
「ちょっ、ちょいと待ちなよ少年!こんなに美人でセクスィーで優しくて麗しい、おまけにナイスバディのお姉ちゃんが声かけてるのに、なんで無視すんのよ!思春期真っただ中の右手が恋人の男の子としちゃあ、涙を流して喜ぶシチュエーションでしょ?」
「だからこそですよ。澄麗さんがそんなこと言い出すなんて、完璧に怪しいじゃないですか。だいたい俺にたかろうったって、金なんか持ってませんよ」
まあ、金が無いってのは半分は嘘だ。いらないと断ったのだが、華澄さんからはちゃんと小遣いを貰っているし、それはほとんど手つかずで残っている。
だが、お世話になっているうえにお金までっていうのは気が引けるし、本当に必要な分以外はなるべく貯めるようにしているだけだ。
映画やちょっとした食事に行くくらいはあるだろうし、もちろん俺が稼いだものでもないんだから、この家やみんなのために使うのは全然構わない。だが、澄麗さんの場合はろくでもないことに使いそうだしな……。
ちなみに、華澄さんの注意に関してはまったく意味を成していないようだ。右手云々に関しては事実はさておき、何も聞かなかったことにして徹底的にスルーしておく。
「ひっどーい!お姉ちゃんのこと、そんなふうに思ってたなんて。ううっ……。アタシはただ、家族の恩人であるキーくんにお礼がしたいっていう、純粋な気持ちだったのに……。それをそんな疑いの目で……、ぐすん……。およよよ……」
バレバレの妙な泣きまねをする澄麗さんだったが、それ以前に発せられた言葉にドキリとして、ツッコムことすらできなかった。でも、澄麗さんは確かに言ったはずだ、家族の『恩人』だと……。
「あ……、そ、その、俺はそんなつもりじゃ……」
「それに、キーくんにお金が無いことなんてわかってるよ。高校生男子なんて、色々とお金が入り用でしょ?ほら、エッチな雑誌を買ったり、エッチな漫画を買ったり、エッチなDVDを買ったり、女性用のパンツを買ったり……」
「買ってねえよ!しかもなんで金の使い道がエログッズ限定なんだよ!それに最後のは何だよ。俺が女性用パンツを買って、どういう使い道があるんだよ!?」
前言撤回。やはり澄麗さんは澄麗さんだ、思わず素でツッコんでしまった。
「え?そりゃあ、穿く、かぶる、嗅ぐ、こすりつける……。いろいろあると思うんだけど?」
「そんなことするわけないでしょ!」
「えっ?それじゃないってコトは……。アタシが想像もつかないような、もっとスゴいことしてるってコト……?」
「そっちの意味じゃねえよ!俺をどんな変態だと思ってるんですか!」
「にゃっはっは、そう興奮しなさんな。そうだよね、パンツは買わなくても、欲しければアタシの脱ぎたてをあげるしね」
「マ……!?いっ、いや、そっ……、そんなもの、いりませんよ!」
一瞬だが、脱ぎたてパンツに魅力を感じてしまった俺がいた。これではまるで、ホンモノの変態みたいだ……。
だが、さすがは澄麗さんと言うべきか。俺の一瞬の心の葛藤を見抜いたのか、口唇の端をニューっと吊り上げて笑う。
華澄さんはすでに諦めたのか、口を挟む素振りも見せない。しかしながら、口の端がやや上がりかけてるのが気になるんだが……。もしかして、楽しんでるんじゃないだろうか?
「おやおやぁ?返答に間があったねぇ?ん~、でも今日のはあんまりお洒落じゃないから、明日でいい?とびっきりの勝負パンツをサービスしてあげよう」
「すすすすっ、澄麗姉!!ここ、こいつにそんなモン渡したら……」
「あれれぇ?もしかして、那澄菜が渡したいのかにゃ?でも、那澄菜のはお洒落さとセクシーさに欠けるし、実用には……。でも、ああいう素朴なのがいいって男の人も一定数はいるし、キーくんはどっちかな?……って、冗談冗談。でも、デートってのはホントだよん」
「は!?」
那澄菜が爆発する前に、澄麗さんはサラッと話題を変える。
そういえば、那澄菜が怒っているのはいつもどおりだが、デート自体に反対しているわけではなさそうだ。それに、いつもなら自分もついて行くって言い張る美澄ちゃんも口を出さない。
ひょっとして、先日のことを華澄さんに聞いたのだろうか。でも、娘には心配をさせたくないからって……。
そもそも、あの男のことは俺も口止めをされている。華澄さんがわざわざ喋ることはないはずだ。
だとすれば、やっぱりこの家族には強い絆があるのだろう。言葉ではなく、相手の態度で察するほどの……。
「だって、みんなばっかりずるいにゃ~。ママは一緒のベッドで朝までお楽しみだし、美澄はお風呂でニャンニャンしてるし、那澄菜は楽しくSMプレイで遊んでるし……。アタシだってキーくんと一緒に遊びたいにゃ~」
「エッ……SMプレイなんてしてねえし、楽しんでもねえよ!なんてこと言うんだよ、澄麗姉!」
耳まで真っ赤にして反論する那澄菜に、俺も同意したい。ちなみに捕捉するならば、そもそもあれはSMなどではなく一方的な虐待だ、俺が被害者の……。
「あらあら、私は楽しかったわよ。キーちゃんってば、凄かったしねぇ……。うふふ……」
「美澄も!キーお兄ちゃんのって、すっごく固くて大っきいんだよ!しかも大っきくなったり小っちゃくなったり、ピクピク動いたりするの!」
何かを含んだような、微妙に悪意を感じるような二人の弁は聞かなかったことにしよう……。
いや、那澄菜が物凄い形相で睨んでるし、殺される前にこれだけは弁明しておかねばなるまい。形を変えてピクピクしていたのは、せがまれて動かした大胸筋のことだからな。
ちなみに、華澄さんの言葉を掘り下げると藪から大蛇が出そうなので、そこは触れないでおく。
というか、澄麗さんもお礼にかこつけて自分が遊びに行きたいだけのようだ。
もっとも、この人のことだ。たぶん俺が気を使わないように言ってくれてるんだろう……。いや、そうだとと信じたい。
「なーんてね。心配しなくても、今日はアタシの奢りだよん。ちゃんとお泊りできるお金も持ってるから、大丈夫なのだぁ!」
「わかりましたよ。そういうことなら、遠慮なくご馳走になります」
「テメェ!おおお、お泊りって聞いた途端……。なに考えてんだよ!?もしも澄麗姉に変なことしようってんなら……」
瞬間、那澄菜の殺気が最高潮に達する。
「ちっ、違うって!お泊りに反応したわけじゃない!!澄麗さんも、妙な事言わないでください」
「え~?アタシは全然オッケーなんだけどにゃ~。アタシの身も心も、キーくんのモ・ノ・よん。だから好きにしていいからねん。でも、二人の初めてはロマンチックに、経……験……したい……にゃん。うふぅん」
「すすすすす……、澄麗姉っ!!ばばば……馬鹿な事言ってると、コイツがホントに勘違いしたら……!」
「いいな~。キーお兄ちゃん、次は美澄とデートしようね。すっごい楽しいプラン考えておくからね」
「ダダダっ、ダメだ!美澄にはまだ早えぇ!ま、まだ、お泊りとか……!!」
なんだろう。勘違いしてテンパってる那澄菜は放っておくとしても、澄麗さんほどの美人にデートに誘われるなんて、普通なら男にとってはこのうえない喜びのはずだ。だが、湧き上がるこの不安感はなんなのか……。
「んふふ~、決まりだね。んじゃ、ちょっくらおめかししてくるから楽しみに待っててねん。う~ん、やっぱ童貞を殺すセーター?いや、鉄板のミニスカ……。いやいや、ここはむしろ、今だからこそ新鮮なボディコンを……」
「ボディコンってなあに?」
「フフフ、美澄が知らないのも無理はない。ボディコンというのは、かつてバブル全盛期に流行ったという、イケてる女の伝説の戦闘服さ。男を悩殺する、体に張り付くようなそれを着て、毎夜ジュリ〇ナで踊りまくるという……。しかも恐ろしいことに、Tバックなどは可愛いほうで、お立ち台の下から覗けば一定数のノーパンが存在したと噂されるほどの……」
「すっ、澄麗姉!美澄になに説明してんだよ!お、おいテメェ!いいか?絶対に妙な気を起こすんじゃねえぞ!もしも澄麗姉になんかしやがったら……」
「痛ぇ!や、やめろって那澄菜!なんにもしてないのに殺す気か!」
「お土産よろしくね。キーお兄ちゃん」
「もう、騒々しいわね……。でもいいこと?若さと勢いに任せるのはいいけど、あなたたちはまだ学生なんだから、避妊だけはちゃんとしておかないとダメよ」
「おぉぅ、ママ公認とな?じゃあまずは薬局かコンビニに直行して、コンド……」
「マッ、ママ!澄麗姉に妙な事吹き込むんじゃねーよ!!」
そして俺の疑問は確信となる。澄麗さんの下ネタは、完全に親譲りのものであることに……。
「あ、そうそう、安心していいよ。下着はちゃんと、デート後のプレゼント用にお気に入りの勝負パンツに替えてくるからねん」
「すっ、澄麗姉!※〇×§×÷……!!」
「那澄菜姉、落ち着いてよ。なに言ってるかわかんないよ?」
そうしてなんだかんだと、いつもどおりに賑やかな皆に見送られ、俺たちは街へと繰り出したのだった。
☆ ☆ ☆
「んふふ~。楽しいねぇ、キーくん」
あれから俺たちは、しっぽりとお泊りデートを楽しんで……いるはずもなく、健全に街をブラついていた。
とはいえ、俺に女性とのデート知識などあるはずがない。
結局は澄麗さんに連れられるまま、なるべく金がかからないようにウインドウショッピングをしたり、カフェでお茶を飲んだりしていたのだ。
もっとも、俺がエスコートしたって亮太と行ったことのあるハンバーガーショップやゲームセンター、スポーツ用品店くらいがせいぜいだ。昼飯だってカレーか牛丼、ラーメンくらいしか思い浮かばないから、これはこれで正解なのだろう。そもそもあまり金を使わせるのも悪いと思うし、それで十分なのだが。
ただ、道行く男たちからの視線には少しばかり閉口した。
せっかくの外出ということで、当然ながら澄麗さんはお洒落をしている。
普段はあまりしない薄化粧をし、これまた家では見たことのないミニスカートを穿き、高校生男子からすれば少しばかり……、いや、かなり刺激の強い、大胆に胸元の開いた服を着ている。
正直に言えば、化粧をしていない素顔のままでも、澄麗さん十二分に美しいと思う。
だが、今日の薄化粧で彩られた顔はさらに美しさを際立たせ、俺のようなアヤカシ、しかもほぼ普段着の高校生のガキとのアンバランスさを生んでいるのだろう。周りからの好奇と嫉妬の入り混じったような視線を感じ、少しばかり気疲れする。
「どったのキーくん?ハッ!ま、まさか、お姉ちゃんとのデートが楽しくないんじゃ……」
「いえ、そんなことはないですよ」
情けない話だが、連れ回される俺が気にならないくらい、澄麗さんのエスコートは完璧だった。
けっして言葉や態度に出しているつもりはないのだが、俺が飽きてきたと思えばすぐに場所を移動するし、疲れたと思えばカフェに立ち寄る。
「じゃあ……、ハッ!そうなのね。アタシは罪な女だわ。キーくんが緊張してしまうほど美しすぎるなんて……」
「大丈夫です。それはないですから」
「ああ、それなら安心だにゃ……って、ちょっと!どういう意味よ!?」
いや、さすがに恥ずかしくて口には出せないが、美しすぎるっての間違いではない。ぶっちゃけ見た目だけで言えば、普段とのギャップにドキドキしている。
でも、この人はそういう壁を感じさせないように気さくに接してくれるし、この会話も、わざとそういう雰囲気に持って行ってくれているのだろう。
「じゃあ、ナニを気にして……。あ……、ははぁ~ん。んふふふふぅぅぅ~~~」
俺が少しばかり、情けなく思っているのを感じ取ったたのだろうか。だが、次の瞬間何かに気付いたように、口唇の端をニューっと吊り上げて笑う。
「んも~。せっかちなんだからぁ~。でも、まだお日様はあんな高くにあるんだからねぇん」
「はい?太陽が高くにあるって、当たり前じゃないですか。なんの話ですか」
「だ・か・らぁ。気持ちはわかるけど、ナニはまだ早いってコト。お泊りにはまだ時間があるんだから、焦っちゃダ・メ・よ」
「え……?い……、いやいや、お泊らねえよ!」
「にゃっはっは。冗談だよん。相変わらずキーくんは真面目で可愛いにゃー。那澄菜と一緒で、からかいがい満点だね~」
そう言って笑いながら、澄麗さんは少し背伸びをして俺の頭を撫でてくる。
まあ、ちょっとばかり返答に困る話題を振ってくるのが玉に瑕だが、相手に気を使わせないように話しをしてくれる澄麗さんとの会話は楽しかった。
俺なんかにも気を遣ってくれて、那澄菜とはちょっと表現方法が違うけど、この人も家族を大切にしてるのは間違いないと思う。
だからこそ母親や妹たちの幸せを考えて、自分の気持ちを押し殺してでも、あの男との再婚に反対しなかったんだろうし……。
「……っ!?」
だが、そんな時だった。
なぜかはわからないが、俺の中に強烈な悪寒が走る。ピリピリと体に突き刺さるような感覚……。これは……、そう、例えて言うなら、殺気だ。
瞬間、頭によぎったのは先日の出来事。まさかあの男、まだ性懲りもなく……。
「澄麗さん!下がってください!!」
「え!?ど、どったのキーくん?」
俺の出来ること……。そう、決して家族を傷付けるような真似はさせない。慌てて澄麗さんを俺の背後に隠し、不穏な気配のする方へと向き直る。
「……っ!!」
そこあるのは雑多な人ごみだ。休日の街を楽しむカップルや家族連れで賑わう、一見何事もないような日常の風景。
だが、一瞬人の波が割れたその先に…………。
いた!!
人ごみに紛れていながらも、はっきりと感じ取れる殺気。鬼のような形相をし、赤みがかった髪を風に揺らめかせた姿。
さらには『鬼のような』という表現が比喩でない証に、その額からは小ぶりな一本角が顔を覗かせている。
そしてこめかみに血管を浮き上がらせ、俺を射殺しそうな目つきで睨みつけている人物とは……。
「って……、秘密子!?」
そう、阿修羅のごとき形相で俺を睨みつけていたのは、幼馴染にして俺の同族でもある、秘密子だった……。
すみません、下ネタ全開、みんな大好き?お姉ちゃんです。タイトルは何も言いますまい、高〇さんです。秘密子はおデコは出ていませんが、ツノは生えています。ついでに貧にゅ……ゲフンゲフン!です。前回までが少しばかりシリアスなお話だったので、今回はおバカラブコメの原点?へと立ち返りました。




