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010~ギルド1~

本日2話目です。

読み飛ばしにご注意ください。

 第2階層からダンジョンを出るまでの間アリスの戦闘を見ていたけど、ウルフ2体に苦戦するほどの実力だった。それもそのはず、アリスは最も得意な魔法を使用していなかったのだから。

 その理由を聞いてみたところ『残り魔力が少ないから』、だそうだ。まあ、魔力2であれだけ魔法を使用して書き換えも行っていればそうなるでしょうね。

 そして先ほど、ダンジョンから出てすぐにギルドに寄り、魔石の換金を依頼してからアリスの担当職員さんのところへとやって来た。いえ、正確には2人の担当職員さんのところへとやって来た。

 ダンジョンから最も近い位置にある建物、ギルド。この街に限れば多くの人はダンジョンから出てすぐに来るであろう施設であり、その主な理由はダンジョン内で魔物から得た魔石を換金してもらうため。

 他の大陸にあるダンジョンへは行ったことがないのだけど、この街に限りギルドで魔石をこの街専用の通貨に換金してもらえるみたい。この街ではその通貨以外を使用する店はほとんど無いから、私も持っている手間を考えると換金するのが一番楽だと思う。ギルド以外では研究機関が安値で買い取る程度みたいだから。

 

「アリスちゃん、もしかして危ない魔物と戦わなかった?」

 

「ちょっと希少種と。でも3人で倒したから問題ない」

 

 視線の先ではカウンターを挟んでアリスと1人の女性が向き合って話している。

 肩上までの茶色い髪と青色の綺麗な瞳、頭には髪色と同じ毛色の狐耳と、お尻には同じく髪色と同じ毛色の尻尾をもった獣族の女性。

 アリスの担当職員であり、私の担当職員でもあるダッキさん。

 アリスに問いかけたダッキさんは不安そうな表情だったけど、その答えを聞いて少しだけ安堵した様子だ。

 

「3人、ですか? アリスちゃんとエルピスさんと、もう1人は?」

 

「通りすがりのリア姉。それよりも復活の加護が回復していない冒険者が安全地帯を出たみたいだけど、指導していないの?」

 

「いえ、それはありえません。基本事項はランク6であろうが初めてギルドを利用された方には指導します。仮にしなければ次の日には職員ではありませんので」

 

 ランク6相手でもするのね。

 

「安心した。あの2人はギルドに来てないか、指導よりも優先する理由があっただけ」

 

「その2人に関して教えて頂けますか? ギルドを利用していないとしても、危険な行為なので個人的に注意しておきたいのです」

 

 アリスの言葉に再び心配そうな表情を浮かべて問いかけるダッキさん。ギルド業務の範疇外なのに、相変わらず優しい人ね。

 

「アリサがクラスタに誘うって言ってたから気にしなくてもいいと思う」

 

「アリサ……アイギスクラスタのアリサさんですか!?」

 

 勢いよく机に手を押し付けつつ立ち上がるというリアクションをとりながらも、叫び声は小さく抑えたダッキさんはさすがギルド職員だと思う。まあ、机を叩いて立ち上がる時点でどうかとは思うけど。

 

「そう。帰りの安全地帯でたまたま出会って希少種のことを聞かれたついでに聞いた」

 

「ああ、そうなんですか。アリサさんが誘うのなら心配ありませんね。相手が断ったとしても注意はしてくれるでしょうから」

 

 なぜアリスはリアが注意したことを伝えないのかしら……いえ、ダッキさんが安心するように有名なアリサさんが誘うことを伝えたのかな。

 

「ところでリア姉さんとは、もしかしてコンバラリアさんのことですか?」

 

「そう。知っているの?」

 

「ソロでダンジョンに潜られていますからね、誰かさん達と同じで」

 

 そう言いつつダッキさんは笑顔を浮かべ、その視線の先ではアリスが顔を背けた。

 おお、笑顔が怖いとはこのことね。他人事ではないけど。

 

「……はあ。できれば今のうちから固定パーティを組むか、クラスタに加入するかして連携に慣れておいて欲しいのですけどね。あなたもですよ、エルピスさん」

 

 ダッキさんにはパーティを組まない理由を話してあるけど、それでも彼女はクラスタやパーティを勧めることをやめない。低階層であれダンジョンに1人で挑むのは危ないから、と。

 それでも、魔法が使えない私は足手まといにしかならない。5階層までのボス級以外は問題なく倒せるけど、それも5階層まで。6階層から先は魔法がなければ足手まといになるだろうから。

 

「ごめんなさい」

 

 でも、今日希望の光が見えた。その光を掴んだら、きっとクラスタやパーティにも積極的に参加するから。それまでは誰の足も引っ張らないように1人で頑張りたい。

 

「まあ、そうですよね。アリスちゃんはそろそろクラスタに加入しない? 私の伝手で良いクラスタを紹介するわよ?」

 

「この前と同じで、まだ早い。もう少ししてから考えたい」

 

「だよね~」

 

 諦めた様子のダッキさん。きっと1周間もすれば同じことを聞いてくるだろうけど。

 

「それじゃあ2人ともステータスを確認しましょうね~。アリスちゃんはあっちの椅子で待っていてくれるかな?」

 

「うん」

 

 頷いたアリスは席を立ち、少し離れた椅子へと移動した。

 ステータスの確認は基本的に本人とギルド職員だけで行われる。ステータスから弱点が分かってしまうため、同じクラスタのメンバーや"固定パーティ"を組んでいる相手以外には基本的に見せることすら危険だからだ。とうぜん物騒な理由もあるけど、それ以外にもクラスタ同士の決闘であるクラスタ大戦を行う際に不利になってしまう可能性が高いから。

 なので大切な相談をする場合には遮音結界を使用することもあるみたい。

 

「それではエルピスさん、こちらが最新のステータスとなります」

 

 ダッキさんは近くに私以外の人がいないことを確認し、黒い鉱石でできたような板である情報端末をカウンターへと置いた。

 

 ◇基本情報

 名称:エルピス 種族:ハーフエルフ 性別:女性

 所属:アルフヘイム

 称号:

 ◇ステータス

 ランク:1

 筋力:10 生命力:8 器用さ:10 素早さ:10 魔力:3 精神力:10 魔力操作:2

 スキル:

 

「生命力が上がってますね。希少種と戦闘したことにより上がったのでしょうか」

 

 久しぶりにステータスが上がったような気がするけど、やはり筋力や素早さはあがってくれない。

 どうやらランクごとに上限ステータスが存在しているらしく、現在判明しているランク1の上限値は"私が"確認している。個性が出始めるランク2以降とは違い、ランク1では上限値に届く前にランク2に上がるのが普通なのだから。

 

「……エルピスさん、1度でいいからパーティを組みませんか? あなたの実力ならばパーティを組めばボス級を倒せます。1度限りであれば同じボス級に挑戦したいランク1の冒険者とパーティを組んでも問題ないはずです。それに一部の人達はあなたが断るのを知っているから、誘わないだけなのですよ?」

 

「それで6階層以降に進んでも仕方ありませんので。それ以降パーティを組まない以上、ソロで倒せなければ意味はありません」

 

 6階層以降を見てみたい気持ちはあるけど、それは5階層のボス級を倒せるだけの実力をつけてから。ステータスがあがらないなら技量を上げればいい。

 それに今の私には新たな希望もある。まだ、頑張れる。

 

「……分かりました。そうであればやはり、魔力武器がほしいところですね。掘り出し物がありましたらお伝えしますのでお金を貯めておいてくださいね?」

 

「ありがとうございます。ただ、私には魔力武器は早いかと」

 

「魔力武器の扱いが不安なら指導者を紹介します。予算に関してもランク1でもギリギリ購入できる程度のものを探しますので問題ありません」

 

 他の職員さんとはあまり話したことがないのだけど、やはりこの人は特別だと思う。こんな良い担当職員さんに当たれたことは運が良かった。

 それでも、指導者を紹介してもらうところまでお世話になるわけにはいかない。

 魔力装備の練習は魔法装備と違い危険が少ないのだからまずは自分で試すべきであり、それでも足りなければ提案されるのではなくこちらから頭を下げてお願いすべきだと思うの。

 

「魔力武器に関しては貰ったものがありますので大丈夫です。ご指導に関しても、技量的に自分が使っても問題ないと判断しましたら練習しますので問題ありません」

 

「あれ、最近貰ったのですか? 確か以前は持っていないと言っていましたよね?」

 

 もしかして以前から探してくれていたのだろうか。そうであれば嬉しいけど、申しわけなくもあるかな。

 

「今日アリスから貰いました」

 

 そう言い鞄から短剣を取り出してカウンターの上へと置く。

 

「あそこに座っているアリスちゃん、ですよね?」

 

「はい」

 

 ダッキさんが視線を向ける先で手を振っているアリスを確認し、頷くことでも肯定する。

 ついでに私も手を振っておこう。

 

「見せてもらっても構いませんか?」

 

「はい」

 

 私の返答を聞き、短剣を手に取り集中した様子で観察し始めたダッキさん。

 

「魔力を流して試し切りしても構いませんか?」

 

「どうぞ」

 

 ダッキさんは右手に持っている短剣に魔力を纏わせ、左手に持った紙をゆっくりと斬り裂く。すると紙は何の抵抗もない様子で二つに分かれていった。

 

「ありがとうございました、お返ししますね」

 

「何か気になることがありましたか?」

 

 ダッキさんの手から短剣を受け取りつつ、気になることを質問しておく。

 

「アリスちゃんが変な装備を掴まされていないか少し気になりまして。さすがにギルドに登録して2週間、その上ランク1の少女が魔力装備を持っていて、それも人にあげるなんて心配しますよ。まあ、問題ないどころかとても良い品なので安心しました」

 

「それもそうですね」

 

 アリスは安物と言っていたけど、どうやらとても良い装備みたいだから掘り出し物を買ったのかしら。そうであれば本当は返したいところだけど、絶対に受け取ってくれないのは分かっているからやめておこう。

 

「それ、使わないのですよね?」

 

「予備の武器として持っておきます。武器の性能だけに頼るような戦闘はしたくありませんので、少なくともランク2になるまでは魔力装備は早いと考えています」

 

「それがあなたの判断でしたら私からは何も言いません。それに、その気持ちは私も分かりますからね」

 

 ダッキさんはやはり冒険者だったのかしら。そういえばギルド職員になる条件にはランクも含まれていると聞いたことがある。ただ、噂なので真実かどうかは分からないのだけどね。

 

「他に何か相談したいことはありますか?」

 

「大丈夫です」

 

「それではアリスちゃんを呼んできてください」

 

「分かりました」

 

 席を立ち、アリスの元へと移動する。

 

「アリス、お待たせ。あなたの番よ」

 

「うん、行ってくるね」

 

 立ち上がりカウンターへと向かったアリスと入れ替わりにその場所へと座る。

 それにしてもパーティとクラスタ、か……。再び魔法が使えるようになれたのなら、その時に考えよう。

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