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第八話 毒舌姫様、嵐、監禁結婚式

「ぬわぁんちゃって。大体さぁ、城でも一番の嫌われ者の僕が君達の味方なんてすると思ってるのかなぁ?本当に頭が天国極楽なんだからなぁ、驚いちゃうよ」


馬鹿にするようにけらけらネルヴィナが笑い始めると、放たれた毒の羽は矛先を変えて騎士達に襲いかかる。


突然の事に、隊長などの多少は出来る者以外は毒によってぐじゅぐじゅの肉のスープに変えられてしまう。


「あはは、僕を嫌って馬鹿にした連中は死ねばいいのさぁ!毒鳥神の力を国力に組み込みながら、そのせいで他人を悪く言わざるを得ない僕を嫌悪するクズどもなんて死ねばいいのさ!その上、預言に従い異世界人の娼婦にまでしようとするなんて、こんな国滅びればいいのさぁ!」


赤や青の混じった液体の上にぷかりぷかりと紫色の羽が浮かんでいるのが余りにも無惨。


『うげぇぇぇぇ!この吐き気のする臭いは毒鳥神パトフーイじゃ!ひぃぃいあのバカスケベ鳥と来たら、鳥流の求愛方法で妾に虫ばかり贈ってきたのじゃ!しかも力のせいで腐ってでろでろになってたのじゃ!おぇぇ、思い出すだけで吐きそうじゃ。それにパトフーイは「私の思いが実らないならば、せめて貴方を見守る事をお許し下さい」などとほざいてストーカーしてきたのじゃ!妾は光神じゃから光に惹かれてくるものも多いためにストーカーされ歴と経験は多いが、あれほど不気味なストーカーも中々おらぬのじゃ!驚くほどの隠密で普段は気付かぬが、ふと気付くと奴がいた場所は毒で腐っているのじゃ。もはやホラーじゃ!妾は奴のせいで夜中に電気を消して眠れなくなったのじゃ。妾の神界には隠れる所がないように一面を平野にして光で満たしたのじゃ。なんじゃなんじゃ今日はストーカーどもの同窓会か何かか!最低の同窓会じゃ!』


「あ、ヴァーナ。僕もそこのうだつの上がらなそうな坊やに毒鳥神パトフーイのせいでどろどろに惚れちゃうっていう最悪の反吐が出る事態になったから宜しく頼むよぉ。あ、ちなみに坊や、僕は毒鳥神パトフーイのせいで滅茶苦茶毒舌だから許してほしいなぁ。僕は毒を吐きまくるからヴァーナ以外にまともな知り合いがいなくてさぁ。父上と母上に姉上と騎士達まで僕を嫌い抜いてるのさぁ。まあ別に許してくれなくても勝手についてくけどね!」


何かストーカー予備軍が二人に増えているんですけど。誰かー助けてくださーい。


神様に影響されるってストーカーされる体質とかもなのかよ!


「姫様!ご乱心成されたのですか!貴方様を今まで育んできた国に矛を向け、あろうことか貴方様をこれまで守ってきた騎士達への仕打ち、正気の人間のものではないですよ!」


毒の魔手から逃れた騎士がネルヴィナの正気を問う。


「ううーん?正気だよ正気ー。だってこの国は預言に従い、僕の旦那様に牙を剥くつもりなんだろ?だったら今のうちに力を削いでおかなくちゃね。むしろ僕の頭は今こそ冴え渡ってるのさぁ!さぁて、ちゃっちゃと死んでねー」


ネルヴィナの背に生えた翼が震え、再び腐毒の雨を降らせようとする。


生き残っている騎士達はそれに対して身構えるが。


「…… 姫様。これはどういうことですかな」


頭の禿げた中年の熊のような大男の騎士が現れる。


「おおっと、嵐神バルルと契約している騎士団長の禿げ親父じゃあないか。これは僕と相性が悪いなぁ。でも今の僕は反吐が出る愛とやらで頭が回ってしょうがないのさぁ。な、の、で、即行逃げるのさぁ!」


ネルヴィナは騎士達へと毒羽を射出する。


禿げた親父が剣を一閃すると、膨大な圧力が生まれ、小規模の嵐が発生する。


それらはずたずたに毒の羽を切り裂いていく。


その隙にネルヴィナは壁を腐毒で破壊し、俺とヴァーナの首を掴んで壁の向こうの空へと飛び立つ。


「はっはぁ!壮快だねぇ!痛快だねぇ!いやぁ、汚ならしい身なりだけどこれだけ愉快な事をしてくれたんだ、君とつがいになるのも存外悪くはないねぇ。って……」


既に結構な距離が城から離れていたが、城の方から何かがごうごうと音を立てて迫ってくる。


それは竜巻だ。


一つの町ならば壊滅させてしまいそうなトルネードが三人を目標として周りの物を空へと巻き上げながらこちらへやって来る。


「うわぁ最悪だよあの禿げたおっさんは!躊躇なく僕ごと嵐神の力で消し飛ばすつもりだよこれ。ねぇねぇ旦那やんよ、どうにかならんかねあれ」


俺はネルヴィナに促されて、残った力を振り絞って光雨の魔法を放とうとするが、魔力が殆ど枯渇しているからかルベール戦の時と比べて半分にも満たない出力だ。


これではあの天災とも言える暴威に立ち向かえない。


「それじゃ足りないでしょ。私の神剣も使うわ」


そう言うと一本の剣を出現させる。


「私が剣神より貸し与えられた神剣インディーラ。剣神オーグゥンが持つ千の剣の中で友人である雷神インディルから譲り受けたもの。私が貸し与えられた剣の中で最強であり、魔力に応じて雷を自在に撃つ事が出来る」


黄土色をした燭台の様な形状であり、先端にはは稲妻で刃が形作られている。


「タイミングを合わせて。行くわよ」


ヴァーナの声にあわせて、光砲を竜巻へと叩き込む。


ヴァーナの神剣からも極大な稲妻が葉脈状に竜巻へと注ぎ込まれる。


荒れ狂う風の集合体に、光と雷の生み出す破壊のエネルギーがぶつかり、大気が震え、三人の下にある王都の町並みが余波でがらがらと崩れていき、人々の悲鳴が絶える事なく響く。


その世紀末的な光景を目にした後に、魔力切れと体力切れから俺は意識を失った。


意識を再び取り戻すと、そこは暗い部屋だった。


ぴちゃり、ぴちゃりと何かが這いずる様な音がする。


やがて目が暗闇に慣れていくと、闇にぼんやりと二つの白い女性の裸体が浮かび上がる。


ヴァーナとネルヴィナだ。


「起きたのね、んちゅ、ぺろ、意識がない貴方には悪いけど、先に楽しませてもらったわ」


「あはー、こりゃ癖になるよ。んぅー、脱出って最高さぁ。ここが、ここが楽園だったんだね!」


二人が裸体で裸の俺に絡み付き、舌を顔やら首やらに犬みたいにぺろぺろ這わせているのだ。


『うわぁぁぁん!ヒデオがぁ、妾の愛しい者がぁ、変態神達の巫女に汚されてるのじゃあ!犯されるのじゃあ!ひんひん』


身体が何か鋼鉄の手錠のようなもので拘束されてやがる。


くそっ、こんな奴等、俺のアルガーさえ万全ならば負けたりなんかしないのにっ。


「さてネルヴィナ、一応私の方が先にヒデオを婿にしたんだからキスは私が先よ」


「あーあ、しょうがないかぁ。ヴァーナの間接キス付きってのが気に入らないけど、まぁヴァーナは割りと気に入ってる方だから我慢してやるさぁ」


ぬぷぷっ、と俺の口の中に舌を入れ、ぬちゃりぬちゃりとかき回す。


とろとろと唾液を俺に飲ませ、じゅるじゅると俺の唾液を吸いとっていく。


恍惚としていた表情のヴァーナが突然不機嫌そうになる。


「ネルヴィナ、この子なんか慣れてる。私なんか恐る恐る舌を動かしてるのに何か自然に動きに合わせてくる。もしかして経験豊富?」


ヴァーナは俺の耳を指で引っ張りながら頬を膨らませる。


「えぇー!そんなぁ!僕らはまっさらさらなのにぃ!ずっずるいっ!卑怯!スケコマシのヤリチンの節操なしの色情狂!ひどいやひどいや僕らを弄んだんだねヒデオ!ヒデオが初めてだって信じてたのに!童貞っぽい顔してるくせにヤリチンなんて詐欺だよ陰謀だよクーデターだよぅ!」


童貞という言葉にびくりとしてしまう。ひ、非童貞ちゃうわっ。


「おやぁ?おやおやぁ?そのキョドり具合、ふむ、ヴァーナ!どうやら僕達はヒデオから感じる女の影より先に行けそうだよ!」


「うんうん、良かった良かった。じゃあ始めましょうか。私が貴方の物で、貴方が私の物だということを貴方に教える儀式を」


「僕もいるよぉ!さぁてこれから僕らは仔犬のようにじゃれ合って貞操を汚し冒涜し合うのさっ!ピース!」


『うわあー!ヒデオ!ヒデオぉぉ!ぅぅ、ぐすっ、いいのじゃ、映像を記録しておいて楽しむのじゃ……。うぅぅぅ』


姉ちゃん、麻里、お元気ですか。こうして俺に異世界でお嫁さんが出来ました。


可愛くて俺のみに優しくて尽くしてくれて俺に依存してる二人ですが、強く生きようと思います……。

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