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第十一章

時間が消えたのは、最初からではなかった。


初めのうちは、まだいつもの支えにしがみついていた。

会議。

報告。

名家の名。

魔法の計算。

誰が何を企んでいるかという、あのうっとうしい話。

外の世界は止まっていなかった。

戦は終わっていない。

政治も消えていない。

ラヴァルンもなくなっていない。

エドランは相変わらず王で、ヴェイルは相変わらず十手先まで考えていた。

魔法もまた、依然として形と規律と支配を求めていた。


だが、それら全部はすぐに、厚い壁の向こうから聞こえてくる音みたいになっていった。


それ自体の意味がなくなったわけではない。


ただ、彼の中にそれを上回るものができてしまったのだ。

もっと濃いもの。

もっと生きたもの。

もっと逃れようのないもの。


自分の巣だった。


彼は本当に溺れた。


快楽に、ではない。

そんな言い方では浅すぎる。

愛に、でもない。

それでもまだ足りない。


彼は、共に生きているという事実そのものに溺れた。

あの家はもう、壊れた者たちや異なる肉の偶然の寄せ集めではなかった。

本物の巣になっていた。

生きていて、あたたかく、貪欲で、ときに息が詰まるほど重いくせに、最後の隅まで自分のものだった。


腹の中で娘を育てているリラ。

息子を産み、それでも相変わらず鋭く生きているカイラ。

もう空ではなくなり、身籠ったことで以前より深くなったアヤノ。

猫のようで、牝で、捕食者で、羞恥を知らぬほど生きすぎているネリッサ。

そして彼自身――もう、自分と世界のあいだに都合のいい距離を保とうとする男ではなかった。


彼らはみな、時間の外へ落ちていた。


最後に外の出来事を本気で追っていたのがいつだったのか、彼はあとになって思い出せなかった。

あの頃はまだ、何が重要かを言葉で並べられた。

どの家が揺れているか。

どの貴族がどちらへ転ぶか。

どの古い魔法使いを引き寄せられるか。

新しいやり方をどう広げるか。

誰をどこへ置くか。


そのあと、全部が滲み始めた。


報告は机の上に置かれる。

人は来る。

問いは投げられる。

答えもたぶん返していた。


だが彼は、話を半分だけ聞き、必要なことだけ短く返し、その場を離れる前からもう内側へ帰っていた。

部屋へ、ですらない。

寝台へ、でもない。

肉そのものへ、でもない。


ただ、そこにこそ本当の生があるという感覚へ。


外側は、危険で、騒がしく、どうしようもなく現実的な背景にすぎなくなった。


彼は役に立たなくなったわけではない。

馬鹿にもなっていない。

自分の役目を放り捨ててもいない。


だが、それはもう中心ではなかった。


中心が、ずれたのだ。


そしておそらくいちばん恐ろしかったのは、彼がそれを元に戻したいと少しも思わなかったことだ。


朝、目を覚ましたとき、いまが何月なのかすぐに分からないことがあった。

最後にエドランとどんな話をしたのか、昨日何を決めたのか、今週が本当に「一週間」だったのか、それともいくつもの夜明けを引きずった、ひと続きの長い日だったのか。

家は別の律動で動いていた。


呼吸。

子の泣き声。

重くなっていく女たちの身体。

食事。

眠り。

不意に漏れる笑い。

毛布の下にこもるぬるい熱。

半ば眠りながら交わされる短い言葉。

そして、常にある互いの気配。


その律動の中で、外の世界は嘘ではなくなった。


ただ、二番目になっただけだ。


政治なんて知るか。

戦なんて知るか。

魔法も、計算も、名門のクソどもも、その野心も陰謀も、新しい秩序がどうこうという大げさな問いも、全部どうでもよかった。

彼はもう、世界に燃えていなかった。


燃えていたのは家だった。


だからこそ、現実への引き戻しはあまりにも鋭かった。


リラの陣痛は、夜に始まった。


前触れらしい前触れもなかった。

ゆっくりとした準備もなかった。

最初から劇的だったわけでもない。


彼女がただ、ふっと目を覚まし、そのまま止まっただけだった。

だが彼には分かった。

顔つきではない。

全身が一瞬で、自分の内側の痛みへ向かってぎゅっと集まったからだ。

それまでの妊婦としての重い身体ではなく、出産そのものへ入った身体へ変わったのが分かった。


彼はすぐに起き上がった。


リラは短く歯のあいだから息を吐き、小さく頷いた。

それで十分だった。


家は、慌てて起きたのではなかった。

緊張で目を覚ました。


カイラは、一つ音を聞いただけで起きた獣みたいに跳ね起きた。

アヤノは寝起きの鈍さをほんの一瞬だけ見せたが、その次にはもう完全にこちら側へ戻っていた。

ネリッサは自分で意識するより先に立ち上がっていて、尾は張り、耳はまっすぐ立っていた。彼女の全身が、いまこの瞬間に何かが起きていると告げていた。

サレットも、まるで最初からこのときを待っていたみたいに、すぐに現れた。


そこでようやく、外の世界が戻ってきた。


政治としてでも、戦としてでもない。


痛みとして。

血として。

リラの身体が、彼の目の前で、あの古くて恐ろしい仕事へ入っていくという事実として。


陣痛は、すぐに「始まった」という段階を越えた。


それは部屋の現実になった。

音になった。

拍になった。

空気そのものになった。


リラは最初、叫ばなかった。

それがむしろきつかった。

彼女は深く、低く呼吸し、ときおり彼の手を短く握った。

それだけで十分だった。

指が白くなり、首筋が張りつめるのを見れば、どれほど強い波が通っているのかが分かったからだ。


彼女は強かった。

もともとそういう女だった。

だがこの強さは、戦の強さではなかった。

耐える技術でもなかった。

別種のものだった。


いまこの苦しみを、身体の最後まで通し切るしかない。

誰も代わってはくれない。

その事実をまるごと引き受ける強さだった。


カイラは、ほとんど腹を立てているみたいな顔でそばにいた。


優しくないからではない。

逆だ。

あまりにも強く共感しすぎて、やわらかくなれなかった。

水を渡し、余計な声を切り、誰にも無駄に動かせず、リラの顔だけを見ていた。

もし痛みそのものを噛み殺せるなら、本当にそうしただろうという目だった。


アヤノは、いちばん静かだった。


それが彼には少し意外ですらあった。

おそらく、自分の中にも新しい命があるからだろう。

自分の身体がもう、痛みと意味のあいだの線を、前よりずっと深く理解しているのだろう。

彼女は必要なときに必要なだけ動き、支え、手を貸し、黙るべきところでは黙った。

一度も無駄がなかった。


ネリッサだけは、最初ほとんど戸惑っていた。


生きすぎているせいで。

獣すぎるせいで。

身体の方が先に反応してしまうせいで。


出産は、彼女が知っているどんな場にも似ていなかった。

そこでは、飛びかかることも、喉を裂くことも、痛みを肩代わりすることもできない。

力でねじ伏せることもできない。


だから最初のあいだ、彼女は部屋の端でほとんど落ち着きを失っていた。

音もなく動き、止まり、また動き、何かにいつ飛びかかってもおかしくない獣みたいな緊張だけがそこにあった。


サレットが、ほんの一言でそれを止めた。


「邪魔をするな」


それだけだった。


ネリッサは止まった。


そして、そのあとで彼女はようやく、自分にできる唯一の役割を見つけた。

寝台の頭側に立ち、そのまま動かずにいること。

黙って。

張りつめたまま。

それでも余計なことはしないで。

獣がようやく理解するように――いまここで守るというのは、前へ飛び出すことではなく、崩れないことなのだと。


どれだけ時間が経ったのか、彼には分からなかった。


こういう場では、時計は無意味だ。


世界はリラの身体にまで縮んでいた。

呼吸。

一つずつ来る痛み。

そのあいだにあるわずかな静けさ。

額に張りつく髪。

強張る喉。

やがてとうとう抑えきれず漏れた、あの短く本物の叫び。


それからまた。

さらに。

次々と。


彼は彼女を支えながら、ある瞬間、自分がほとんど呼吸を止めていることに気づいた。

壊されるのか、終わるのかも分からない一撃を待つみたいに。


そして――泣き声が上がった。


細い。

激しい。

とてつもなく生きている声だった。


その瞬間、世界が彼のところへ戻ってきた。


「現実」という抽象ではない。

もっと直接的なものだった。

壁。

空気。

窓の向こうの朝。

自分の手の震え。

押し潰されるほど疲れきって、それでもあまりにも美しいリラの顔。

そして、いまここに確かにいる、泣いている、小さな生き物。


その瞬間、彼には二つのことが一度に分かった。


自分には、もう二人の子がいる。


そして、冬が終わっていた。


もちろん、文字通りその瞬間に季節が変わったわけではない。

だが、そう感じたのだ。

この泣き声と一緒に、自分の上に被さっていた長い死んだ時間の層が、一気に剥がれ落ちたみたいに。


あとになって、リラが眠り、娘が洗われ、布に包まれてそのそばへ置かれ、家全体が夜明け前の信じられないような静けさへ落ちてから、彼はようやく窓の外を見た。


そしてそこで、ようやく気づいた。


もう冬ではない。


それどころではない。


春も、半分過ぎていた。


彼は外の光を見ながら、ほとんど間抜けなほどの驚きに打たれた。


春の半分。


本当に、そこまで世界から抜け落ちていたのだ。


その事実は、彼に羞恥ではなく、もっと複雑なものをもたらした。

一方では不安に近かった。

外の世界は、そこまで自分から力を失っていたのか、と。

だが他方では、妙に澄んだ納得もあった。

そうだ、自分は間違えていなかった。

本当に世界ではなく巣の方で生きていたのだ。

築くというより、ただその中へ深く沈んでいた。


そして、彼が沈んでいるあいだも、世界は止まってはいなかった。


それがはっきりしたのは、その数日後だった。

彼がようやく中庭へ出て、これまでずっと視界の端でしか見ていなかったものを、初めて正面から見たときだ。


リラ、カイラ、アヤノは、もう完全に自分たちの魔法をものにしていた。


「だいぶ上手くなった」などという話ではない。

「ほとんど使える」でもない。

「もう少し」でもない。


完全に、だ。


それもまた、彼の目の前で起きていたはずなのに、いつのまにかそうなっていた。

いや、正確には、彼のそばで起きていた。

だが彼の注意の中心ではなかった。


彼が家へ、妊娠へ、血へ、身体へ、子へ、ネリッサへ、巣へ、あの貪欲で生きた現実へ沈んでいくあいだ、彼女たちは彼女たちで進み続けていた。


そして辿り着いた。


それは最初の一撃で分かった。


もう以前のような遅れがない。

内側で力を探る時間もない。

散りもない。

余計な緊張もない。


力を取る。

すぐ上げる。

すぐ放つ。

まっすぐに。


的は何列にも立っていた。


最初に動いたのはリラだった。

出産の直後で、身体の動きそのものはまだ慎重だった。

だが、それは魔法に何の影響も与えていなかった。


彼女の一撃には無駄がなかった。

深く、重く、揺るがない確信だけがあった。

掌から放たれた火は、ばらけもせず、揺れもせず、まるで最初からそこへ行く道が決まっていたみたいに、瞬時に的へ届いた。


カイラはまるで違った。


もっと鋭い。

もっと速い。

ほとんど怒っているみたいだった。

彼女にとって外すということ自体が侮辱なのだと、その一撃だけで分かる。

空気が裂ける音がした。

衝撃は短く乾いていて、的はその怒りをそのまま受けた。


そしてアヤノ。


アヤノはいちばん恐ろしかった。


なぜなら、彼女の中には今や、ひどく静かで、ひどく深いものがあったからだ。

妊娠は彼女を弱くしていなかった。

むしろ、重心そのものをさらに深い場所へ落とした。

そのせいで、彼女の魔法はほとんど無表情に見えた。

冷たいのではない。

表面に一切の葛藤がないのだ。

力を取り、上げ、送り出す。

それだけ。

迷いもなく、即座に、正確に。


三発。

三つとも命中。


一瞬で。

完璧に。


彼はそれを見ながら、ようやく本当に理解した。

自分が「世界が滲んでどうでもよくなった」と感じていたそのあいだにも、どれほどのことが進んでいたのかを。


自分には二人の子がいる。

冬は終わった。

春も半分過ぎた。

リラ、カイラ、アヤノは、もう完全な魔法使いになった。


それでも彼は、ずっと「現実の外」にいたわけではなかった。


ただ、別の深さの現実の中にいたのだ。


そしておそらく、ようやく今になって初めて、彼は世界を丸ごと感じた。


外か内か。

戦か家か。

魔法か肉か。

国家か巣か。


そういう二択ではなく、全部がもう分かちがたく繋がっているものとして。


なぜなら、新しい秩序は、玉座から始まるのではないからだ。


戦からでもない。

魔法からですらない。


始まりは、ここだった。


娘が生まれた家。

息子がもういる家。

雌たちが自分の力を完全に掴んだ家。

そして、時間そのものがもう暦ではなく、自分がどれだけ深く自分の世界へ根を下ろしたかを測る尺度へ変わってしまった、その家。


そこから、すべては始まっていた。


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