第八話
・お酒は二十歳になってから。
・お酒は節度を持って楽しみましょう。
・最近飲んだお酒:「穏 白麹DRY」(日本酒)
工場の中に入ると、腸詰めやらなんやらの匂いがしており、これだけで一杯のお酒が飲めるなと明海は思った。いや、いっぱいではないと補足をしておく。
通路を進んでいくと、ところどころ破壊された跡があった。しかし、なぜイブシー市を襲撃する必要がありこの工場を破壊しなくてはならないのだろうか。
そんなことを思っていると、前方から敵が現れた。しかしながら、その敵をものともせず、ノーマンが切り捨てていく。どうやらさっきまで背負っていた葡萄酒の樽を下したおかげで身が軽くなったらしい。
通路を走り抜けていくと、工場の心臓部に繋がる入り口に今までの敵とはあからさまに違い、強敵だとわかるようなオーラをまとった男が立っていた。
「まさか、占拠してからこんなに早く王国の人間が入ってくるとはなあ。それに王国の兵士は大したことないってもっぱらの話だったのに驚いたぜ。しかしまあ、その勢いもここまでだ」
「はっ、アルコー王国を見くびっていたようだったな。アルコー王国第一王子、ノーマン・アルコーいざ参る!」
「王国の王子か、その首もらえばイブシー市だけでなく王国を落とすのも造作もなさそうだ!」
ノーマンの剣と敵の剣がぶつかり合い、火花を散らす。剣を交えながらお互いの実力を見極めているようだ。
「明海、今のうちに中へ!」
「わかった!」
明海が中へ入ろうとするのを逃しはしまいと敵が割り入ろうとしたが、ノーマンがそれをさせない。
「よそ見している暇がお前にあるかな」
「ケッ、この野郎め。まあいい、どうせあの小娘たちはナイ様にやられるだけだ」
◇
明海が中へ入ると、見た目からして敵のボスらしき男が立っていた。
「やあようこそ、お嬢さんたち。まさか、王子ではなくお嬢さんたちが来るとは思わなかったが」
背格好は先ほどの男よりも細く、すらりとしていた。
「あなたたちは何者なの」
明海が尋ねると、男は口を歪ませるようにして話し始めた。
「私は、ナイ・ヨッテ。このゲコゲコ団の幹部である」
「何そのセンスのないネーミング。コードネームにしてはダサすぎないかしら」
名前を聞いた瞬間笑いをこらえきれなかった。
「本名だ!このアルコール中毒ども馬鹿にしやがって!我々は、アルコール中毒どもが跋扈する社会を正すために結成された崇高な組織である。アルコールをなくすためにまずは周辺都市を壊滅させようとしているんだ!その計画を邪魔する者たちは一人残さず粛清してやる」
「小さい男ね。それにアルコールをなくすなんてこと、無理だわ。なぜなら、アルコールをなくそうとしても、そうはならないことをアメリカの禁酒法のように歴史が証明してきたわ」
「アメリカだか歴史だかなんだか知らんが、我々は毒水であるアルコールをなくすだけだ!」
次回は8月15日土曜日投稿予定です。