神官長達のある日のお昼
オープン以来通い詰めているカフェにランチに来れば。
「いらっしゃいませ」
いつものように穏やかな表情で父親似の色彩と母親似の顔立ちの立派に育った青年が迎えてくれた。
* * *
「……今日も若手は参加ゼロかー」
夫である青の神官長カミキリが六人掛けテーブルを見回しため息混じりにぼやく。今日は神官間の親睦を深めることを目的にしたランチミーティングだったのだが参加者は……、
「今回も長と副長だけの若さの足りぬ面々だな」
幹部だけだ。
「あらひどい、あたしはまだピチピチなのに」
白の副神官長マチルダがすぐさま抗議するが、
「神官歴は私より長いじゃないかあんた」
間髪を入れず青の副神官長ヒックスが言う、彼女は年はこの場で最も若いが十歳で神官になったベテランの上、十三市最古参だ。
「若く、希望を捨て切れない子達は無駄ーにストイックだものねー」
さらりと副神官長達のやり取りを無視しつつ店員に合図を送るのは緑の神官長エイデン、ここは菜食者用メニューもあるので助かる。
「……真面目は美徳だと思いますが」
そんなことを言いつつもスイーツメニューから目を上げないのは銀の神官長ステイだ。
……ああ本当に、
「ここの神官長は皆破天荒だな」
ランチセットにプラス単品のケーキ三皿を頼みながら私、黒の神官長コルリアが言えば、
「「「あなたも!」」」
との声が上がる。
これが十三迷宮市の神官長だ。
* * *
「あ、そうそう、メイファ姉さんがもうちょっとで帰って来るらしいよ?」
来たランチをつついているとマチルダが思い出したように言った。メイファとは第四迷宮の総本山に定期報告に行っている白の神官長だ。
「……無理難題お土産に持たされてなきゃ良いけどー」
面倒そうにエイデンがつぶやく、私も含めここにいる面々は大神殿の老人や若いのに柔軟さを無くした連中と揉めて飛ばされたはみ出し者だ。愛のムチは少なくは無い。
「……土産がなんであれ暖かく迎えましょう。貧乏くじを進んで引いて下さったのだから」
氷が入り、キンキンに冷えているアイスコーヒーを美味そうに飲みながらステイが言う。
……そうだな。
「製氷の魔具どころか冷蔵の魔具さえ無いあの都市へ行って下さったのだものな」
かの土地は、快適さは島内一であろう十三迷宮市に慣れ切った我等には行くだけで修業かも知れない。
『第四迷宮市《神の都》』
七つの浮き島とそこから伸びる二重螺旋階段からなり、
それぞれ一柱の『神』への祭壇がある迷宮を囲み出来た都市。
魔法をとにかく忌避し、魔具が一つも無い。
住み辛い迷宮市トップランク。




