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『僕』と『先輩』の迷宮と日常  作者:
第六話 勇者じゃなくても救える命。
47/63

scene7 決意

 





「わたしプルちゃんの弟子になる!」


 目覚めた少女の選択はそれだった。


 ……うん、博士子供に好かれてるんだよね。魔法で面白いもの出したりするから、


【今の君じゃ無理】


 抱き着いてきた少女をべりっと剥がし博士が断る。


「あのねヴィラ嬢。今、あんたが話せてるのは薬が効いてるからなのさ。それが切れたらまたあんたは凍りついちゃって……今度こそ死ぬかも知れないよ」


 そして続けざまに一番医学に精通している神官である白の姐さまが警告するけど、


「……じゃあ、欠かさずお薬飲む!」


 少女は決意を曲げない。


「……いや、塗り薬だから……それに副作用もあるし」


「ふくさよう?」


 あ、僕の出番だね。


「ええとね? 生活するのに長袖長ズボン手袋が必要で、それでも人と触れ合うのは短い時間におさめないといけないんだよ。その薬は」


 低温火傷をおこすからね。服越しでも、


「……我慢する」


 うん、曲げないね。


「……ねぇシャロ君。その薬でずっと対処出来るの?」


 娘に呆れた視線を向けつつレディヴィノーが尋ねる。


「……難しいかな。成長すれば魔力量も増えるし」


 そもそも材料を採りに行くだけで大変だし、


「……ええといや、そもそもシャロ君? あたしの記憶じゃこの薬、肌がボロボロになるもんだった気がするんだけど?」


 え、何言ってるの姐さま?


「なんですその粗悪品。僕のレシピでは患者さんにはそれ程ダメージは無いですよ?」


 薬だし。けれどそんな僕の言葉に姐さまとカミキリさんは頭を抱えて……シャロ君のその知識……いや、シャロ君だし、とぶつぶつ言い出した。……あ、やっちゃった?


 …………うん、さすが『英知の魔女』と呼ばれるお母さんレシピだね! ……うん、


「……ヴィラ、わがまま言わずに神官になりなさい。……多分そう悪いものではありませんから」


 微妙な空気の中発言したのは市長です。厳しく娘を諭します。……が、


「いーやー! だって聞こえてたもん! みんながうちはダメって言ってるの!」


 との娘の言葉に、


「…………聞こえて、たのか」


 と、撃沈しました。



   *   *   *



 ──ううむ、やっぱり僕の出番だな。


 神官になれ! いや魔法師になる! との親子のエンドレスループをしばし聞いていた僕ですが、ヴィラちゃんの意思の固さに感じ入り、できれば使いたくなかった。もう一つの方法を使うことを決意しました。


 手を叩き、みんなの注目を集め、僕は意を決して口を開いた。


「……実は、僕、


 ──魔力を抑える薬持っているんです」


 そう、僕は持っている。少女に猶予を与える特効薬を、


「……意識が無い状態で使うと目覚め無いことがあるので先程は使いませんでしたが……一度魔力量を減らすことで暴走状態を脱する可能性は高いです」


 そんな特効薬をずっと言えなかった理由は、


「……それ魔法師と神官には最悪の毒だな」


 そう先輩が言うような──諸刃の剣な効果。


「……皆さんを信じてるから教えました。……それで、博士、あなたの施術の成功率は?」


 ……うん、この薬も対症療法だからね。……成功率が低いなら無理矢理にでも神官を選ばせないと、


【…………九割以上で成功すると、教わった施術がある。が、行ったことは無いので確信は無い】


 あ、かなり高いね。……じゃあ、もうこれは……、


「……ヴィラ、どうする?」


 当人の意思。


「わたし、プルちゃんを信じてる!」


 近い将来、十三市にキュートな魔法師が誕生することが決定した瞬間だった。



   *   *   *



「ではこの薬を、ヴィラちゃん、飲んで?」


 ギルドのお姉さんにお風呂の用意をしてもらい、ヴィラちゃんに魔力抑制剤を与える。で、三十分後、


「……っ!? あ、体が熱い!」


「うん、問題無く効いたね。じゃあヴィラちゃん、これで急いで体を洗うんだ!」


 もちろん塗布薬の専用リムーバーも用意してあるよ?


「……さて、ではこの塗布薬を渡しておきます」


 姐さまと共にお風呂に向かったヴィラちゃんを見送った僕はご両親に塗布薬の方を渡しておく。……そして、


「で、博士にはこの魔力抑制剤を」


 博士に抑制剤を、


【いいの?】


「はい、暴走がおこった時に、僕がすぐ駆け付けられるかわからないですし」


 迷宮に潜ってるかも知れないしね。


「博士なら、ちゃんと保管できるでしょ?」


 魔法師として、それが知れ渡る危険を強く感じてるだろうから、


「備えあれば憂い無しです!」


 たくす相手は貴方しかいないもの。






 ってことで僕達221Bだからこそ助けられた女の子はこの二年後、キュートでパワフルな魔法師になったって訳なんだー。


 ……って!? うわ! もうこんな時間!?


 叱られるー。ので帰ります!


 え、次はいつ頃来るか?


 うーん、なるべく早く来たいけど、ちょっと、ね。


 なるべく早く来られるよう善処するからっ!


 じゃ、またね!











 第六話 勇者じゃなくても救える命。終 

『魔法師』


強い魔力を持つ子供に『術式』を刻むことで『魔法』を使える肉体に変容させた存在。

『術式』は師である者が自らの魔力で刻むが師の能力により弟子への負担は様々で死亡率も高い。

基本、師には逆らえ無いよう、枷がはめられ、師より強くなれ無い為、師殺しが宿命。


常識を持たない者が多数、狂人の代名詞、まともな者が割を食う。

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