scene6 治療
「薬出来ました! 患者さんの容態は!?」
ただ今ギルド内の浴場の一つに付きました。またしても人形のように運ばれているシャーロック君です。……調合を終え、遮光瓶に詰め扉を開けると待っていたキサさんに抱えられたんですよ。
「脈は弱まってるけどちゃんとあるし、プルトの兄さん達魔法師のおかげで体表に霜もついて無いよっ!」
……ま、間に合った……、
「じゃあ、患者さんを……って、ヴィラちゃん!?」
博士の腕に抱かれ、お湯に浸かる患者さんは知っている子……市長さんとレディヴィノーのお嬢さんであるヴィラちゃん、だった。
「……知人が患者だと知ったら焦りが生まれるかと、私の判断です」
……うん、なるほど……さすがチーフ、じゃあ改めて……、
「……では、これから治療を開始しますので……男性陣退席!」
後は僕と姐さまとキサさんで充分です!
* * *
僕達は協力してヴィラちゃんの衣服を脱がせて行く、魔力による熱が無くなった為、体表は凍りそうなほど冷たい。
「……では塗布して行きます、まずは胴体から」
脱がし終わり柔らかなバスタオルの上に寝かせたヴィラちゃんに、僕は出来たばかりの薬を、刷毛で塗っていく、
「……キサさん、背中を僕側に……はい、次は顔と頭部……」
丁寧に均等に。
* * *
全身隈なく塗り、その全てが問題無く発熱しているのを確認した僕は、二人に様子を見ているよう頼み、ヴィラちゃんの洋服を取りに行った。
「……あ、レディヴィノー、市長」
すると、脱衣所には今にも崩れそうなレディヴィノーと、彼女を支える市長がいた。
「シャロ、君、ヴィラ、は」
レディヴィノーのかすれた声での問いに僕は、
「ひとまずは安心です。一時間以内に意識も戻るでしょう」
力強い笑顔を作り答えて見せた。
そして涙を流しながらもしっかりと一人で立った彼女とヴィラちゃんに服を着せ、そこで漸く娘に会えた市長が抱き上げ、僕達は話し合いの為、広い応接室に向かった。
* * *
「問題はどこの神官になってもらうか。だな」
市長一家と治療に当たった僕達が入室すると、何故か陰欝な空気が漂っていた応接室で、待機していた神官長達を代表し、コルリア姉さんが重々しく、口を開いた。ついでステイさんが
「……銀星騎士団と黒荊戦士団は武闘派ですし、青鳳教会白蓉聖歌会は、倫理的に……かと言って緑羊清齋会の不殺は……成長期の少女には……」
と、……うん、みんながズーンと沈んでいるのは神官はとっても大変だから、です。銀と黒はいわゆる脳筋、な人達だし、青は知識欲の権化、白は性に奔放、緑は穏健だけど不殺、一切の肉食はアウトって厳しい掟が……うん、神官はやっぱり、信仰心の厚い人が決意してなるものだよね。
「……でも、神官になるしか方法は無いんですよね?」
市長はとても苦々しい顔で確認する。
「ああ、魔力暴走は変換機構を作る以外、押さえる手が無いのが現状さ。……魔法師、って選択肢もあるはあるが……」
姐さまがチラリと博士を見やる。……すると、
【魔法師を作るのは第二次性徴を迎えたばかりの時で無いと施術の成功率激減。特にそれ以前はほぼ失敗……死ぬ】
との文字が目線近くに受かんだ。……あ、うん、説明ね? 博士、プルトさんは『術式』つまり魔法師の魔力変換機構を喉に刻まれているんだって、だから普通に喋ってるのにうっかり魔法が発動することがあるらしく、魔法で空間に文字を書くことで会話をするんだ。さらに説明すると、神官になるのはほぼ失敗しないのに対し魔法師になるのは……四割以下って言われている。
で、それから神官長達──ただ今総本山に出張中の白のメイファさんを除く──によるうちのここがきつい、発表会が続いてたんだけど……、
「……それは私達が話し合っても意味無いでしょ? 決めるのはこの子なんだから」
とのレディヴィノーの発言で終わりを迎えた。
ちなみに僕の感想。
絶対神官にはならない!
……ほんと信仰心が無くちゃやれない仕事だったよ。
『神官』
祭壇で儀式をし自らの体内に簡易祭壇を作る事で、
それぞれの神との『契約』と自らに課した『誓約』の下、
魔力と体力を使い、自らと付近の他者の肉体を強化したり、
癒したりすることが出来る術『祈り』を使える存在。
仕える神によってその性質は様々。




