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『僕』と『先輩』の迷宮と日常  作者:
第五話 僕はお家に帰りたい。
35/63

scene2 兄さんと出会いました。

 





 引き続き絶体絶命な、腕力もお金も無い美少年なシャーロックです。


 天を仰ぎ嘆いてもどうにもなりませんので……、


「エイッ! っと」


 取り上げられてなかった荷物から自警団から貰ったのろし玉──音と煙りが派手な花火です──を取り出して、これまた取り上げられてなかった弓矢で天に放ちます。


「うん、たーまやー」


 ……さてと、


「とりあえず救援が来るまでの時間稼ぎくらいしますね?」


 いくら僕がか弱い美少年でも、


「冒険者、ですから」


 非戦闘員は守ります。



   *   *   *



 ──一人一人は弱っちいけど数が多いなー。


 護衛の皆さんと協力してお姉さん達を守っている僕です。護衛さんが結構強かったのと盗賊達が弱っちかったのでまだこちらには怪我人は出てません。が、


 ──ジリ貧だよねー。矢、無くなりそうだし。


 戦闘になる予定なんてなかった僕は、迷宮用ながっちり装備じゃないんだよ……対魔機能しかないマントで接近戦とか……ほんと勘弁です。


「あー、どうしよう?」


 救援、来てくれるかなー……そこそこちゃんとした街道だけど、主要所では無いっぽいんだよねー。


「来なかったらアウトだなー」


 と、ため息をこっそりとこぼしたら、


「『氷の矢雨(フリーズアローズ)』」


 盗賊達に透明な矢が降り注ぎ、


「無事ですかっ!? 皆さん!!」


 音楽的なバリトンを響かせ栗毛の馬に乗った銀色のえらく顔の良いお兄さんが木々の間からやって来ました。


 ちなみにこの時の僕の感想は、


 ──白馬じゃないのかー。惜しい!


 でした。


 ……エヘッ、実はまだ余裕だったんだー。



   *   *   *



 銀色のお兄さん一瞬で盗賊達を捕縛いたしました。


 ……ううむ、先輩もそうだけど魔法剣士ってガチで一騎当千だよねー。っていうか、


 ──この人絶対噂の『銀騎士』さんだよねー。


 自警団の制服、その上の銀色の軽鎧、銀色のレイピア……うん、


 ──自警団七班、副班長の『銀竜』ギースさんだ。


 先輩とタイマンはれるらしい魔法騎士……美形っぷりもトントンだねー、こちらは銀髪に紫の瞳、雪花石膏アラバスターの肌……うん、優しげな貴公子風で若いお嬢さん方に受けそう、だ…………あ!


「ギース兄ーさーん!!」


 閃いたんだよ! 速やかにお家に帰る秘策を、


「会いたかったよー! 出張で三ヶ月も帰らないで心配したよー! そりゃ兄さんが頼んでくれたから宿屋のみんな、優しかったけどさー! 可愛い弟を一人にするとか酷いよー!」


 題して! 《僕にはちゃんとした身内がいるから大丈夫です作戦!》


「え、は、いや、あの、君……誰?」


 うん、当然そういう反応ですよねお兄さん? でも僕の速やかな帰宅の為にっ!


「酷いや兄さん! 僕だよっ! ギース兄さんの弟のシャーロックだよっ!」


 はい! ここでヒシッと抱き着く! ……うん、鎧が痛い、


「え、いや、は?」


「そりゃ兄さんの言い付け守ん無いで十三迷宮市出たのは悪いと思ってるよっ! でもそんな目で……う、うう」


 はい! ここで涙をポロリー! ふふ、美少年たるもの涙腺の一つや二つ操れるものさっ! すると、


「やーっと追いついたー、ギース、お前先行し過ぎ! 後詰めの連中は捕らえといたが」


 進行方向からそんなことを叫びながら一団がやってきます。後詰め……うん、いるよね。


「あ、あ! あの、班長! ちょっとこの子が、」


「うわーん、マルティさーん! 兄さんが酷いんだー!」


 そして僕はお兄さんが班長と呼んだ三十代くらいの赤毛のお兄さんに泣きつく。……自警団の班長さんなら、


「おいこらギース、弟泣かすな!」


 やっぱり乗ってくれるよねー!


 実力以上に空気が読めるのが班長の重要条件だそうです。





  

『自警団七班』


十三迷宮市自警団所属の遊撃部隊。

赤毛のマルティが班長を銀髪のギースが副班長を勤める、

自警団内でも武闘派の集団。

現在商会長の護衛で長期出張中。

帰路につく彼らと出会えたのはシャーロックの日頃の行い故です。


……多分。

 

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