scene1 兄さんと出会うまで。
──気づいたら僕達は十数人のならず者達に囲まれていた。
……え、いきなりなんだ、って? いやー、たまにはこんな始まりも良いかなぁ? って。
……ははは、はーい、お久しぶり。元気だった? 僕は元気に美少年だったよ。
……うん、ちょっと職場ががたがたしてて。あ、大丈夫、僕以外も元気だから。
……ふふ、あなたは優しいなぁ。
……あはは、ツンデレさんツンデレさん。ふふ、じゃあ今日のお話するね?
これは僕と先輩がパーティーを組んだ翌月。十三市の壁の外で月初め恒例のバザールが開かれた日のこと、
とっても綺麗な銀色の兄さんが僕にできたお話さ。
僕は十数人のならず者と僕を善意から誘拐したキャラバンの戦力差を鑑みて思わず唸った。
……多勢に無勢、しかも足手まとい多数じゃん。って、
キャラバンの護衛は黒の神官一人に引退した冒険者が三人、っていうわびしいものだったんだよ。そして非戦闘員が十四人。……うん、
……僕が助太刀しても確実に負ける。
ってことで僕は天を仰ぎつつどうしてこうなったかを回想した訳さ。これから語るのと違いこの時はダイジェストだったけどね。
* * *
「……海魚は無いかー」
月初め恒例のバザールに買い出しに訪れた僕は欲しかった食材がなかったことにちょっぴりブルーになりました。
僕お魚好きなんだよねー、それも海のが、だけど十三迷宮市は今は迷宮島って呼ばれてるこの島の真ん中らへんにあるじゃん? だから干したのや瓶詰め缶詰があったら良いなー、って感じなんだけど、
「今日は加工品も無しー」
この日は漁村からのキャラバンは来てなかったんだー。
「……切り替えてお買い物しよう」
魚は無いけど、いつも出回って無い食材が盛り沢山だからね!
* * *
「……え、揺れて」
気がついたら僕は荷馬車とおもわれるところに寝かされていた。周囲は木箱でいっぱいだけど体の上下に毛布があるし結構大切に扱われている。……まあ、
「……薬で眠らされたんだけどね」
ここの前の記憶はお茶を主に扱っているキャラバンで、薦められた試飲のこと、飲み込んだ後に気づいた即効性の高い眠り薬の味。
「……邪気も害意も殺意も無かったから油断したー」
多分理由は背負っていた弓について尋ねられた時の僕の回答。
「……冒険者、にしとくのは危ないと思われたんだろうなー」
か弱く賢い美少年な容姿がにく、くは無いけど、
「……また、面倒にー」
得より損が多いことは否定できないよね。……でもまあ、仕方ないとして……、
「……はー……よしっ! すみませーん! ここどこですかー?」
とりあえず迎えに来てくれるだろう先輩に早く合流する為にも馬車を止めよう!
* * *
「いや、ですから僕は本職は冒険者じゃなくて宿屋の従業員なんですって!」
「宿屋! それは逆に危ないでしょう! 坊やのような可愛い子なら!」
「僕の職場はオーナーも先輩も親切で過保護だから平気です!」
「「それ絶対っ!! 下心ありでしょ!?」」
荷馬車を止めさせた林の中の街道で、安全安心な生活をしてます。って若めの女性が多いキャラバンの皆さんに説明中の僕です。でも納得され無ーい。……なんで?
「いやいや、お二人共紳士ですから」
オーナーは最愛の方がいるそうですしー……先輩は……ああ、うん、現状はともかく将来的には……なんか僕の顔とか好きっぽいし……うん、でも、
「(現在は)超安全ですから!」
将来的な保障は無いけどね! と、思いながらニッコリ笑顔でサムズアップをした僕に対する皆さんの反応は、
「……ダメだわこの子。危機感が無い」
でした。……あるぇー? 安心を与える事実しか言って無いんですけどー?
「とにかく! 私達の村にいらっしゃい。……女子供が多い安全な農園だから」
褐色の肌とポッテリ唇がセクシーなリーダーのお姉さんがパンッと、手を叩き三台の馬車と二人の騎馬の護衛さんに出発を指示しました。……え、いや、
「お断りしますっ! 僕はお家に帰りたいんで! っていうかこれ誘拐ですよっ!」
村に住む。追っ手に見つかる。村全滅。僕死亡。……って未来しか見えないよっ!! 非戦闘員がほとんどな土地とか……申し訳なさ過ぎる。
……ああ、うん、僕追っ手持ちでしたので。この時は五年目だったかなー、逃亡歴。……美少年は大変なのです。
ってことでこうなったら逃走も……と、考えていたところで、
──気づいたら僕達は十数人のならず者達に囲まれていた。
のでした。
……いやー、どうしよう?
『キャラバン』
この島では個人向けの販売も行う隊商のことを指す。
運送販売だけの純商人タイプと、
生産者が生産物や近隣の特産を売りに出るタイプの二種類存在し、
シャーロックを善意から誘拐した面々は後者。
はぐれモンスターや盗賊対策、護衛はマストです。




