scene7 ギルドホール
「ただいまー!」
「おかえりなさい、シャーロック君」
えっちらおっちらと階段を上り、帰って来ましたギルドホール! じゃまず、
「下五『守護者』のメダルです」
他のモンスターと違い『守護者』は倒して直ぐ消えちゃうからか討伐後、『試しの間』の出口にメダルが現れるんだよね、今日初めて知ったよ。
「はい、確認しました」
ちなみに提出しなくて良いそうです。記念品的な?
「それと常設のゴブリンの耳と魔石です」
ちなみに二十九匹分です。んー、計五十八個の耳、グロいなー、あ、先輩がブロンズゴーレムを倒すのに使った魔石も回収済みです。
「それと魔石の買い取りお願いしたいんですが……」
先輩と相談の上、『守護者』とキラービー、フレイムバッドとブロンズの分だけを今回売ることにしました。シルバーとゴールデンのはへそくりと素材にします。
「…………ちょっと待って!? あ、……チーフ!」
ん? どしたの? あ、チーフさん来た、お姉さんとひそひそ話してるね。あ、こっち来た。
「……ええと『とりあえず』様? 量が量ですので別室で査定を」
どうやら窓口での取引額を超えちゃったようです。
……うん、シルバーとゴールデンの魔石を出したら大騒動だったね。
……現状充分ザワッてるけど。
* * *
ロマンスグレーのチーフさんがルーペ片手にかれこれ二十分ほど鑑定中です。……んー、あとどれくらいかなー? そろそろ夕飯の支度が……あ、終わったみたい、で、おいくら?
「こちらの小さめの魔石は合わせて七百、こちらの五つ、『守護者』の魔石は合わせて五百、で、この十六個の大きめの魔石は……合わせて一万、で、いかがでしょう?」
ちまっ……えっと、ちょっと普段聞かない単位で……ええと、
「……十六の方はもう少し上だろう」
わ、さすが先輩! こんだけの大金でも動じないとは!
「……では三千追加で」
「七千」
「いえ、その、品質が……」
「最高だろうが……一万五千以下なら持ち帰る」
うわっ強気!
「……わかりました。……では魔石の合計が一万六千三百、そして依頼達成報酬がまず『守護者』討伐が二千、ゴブリン討伐が……計五千八百で計二万四千百プロフ、ですね」
「……ああ、わかった」
……ええとトントンだから取り分は一万二千五十、だね? ……うわーお、
「ではこちらは口座に?」
「ん、そうしてく」
「え、僕口座持って無いです」
……うう、そんな目で見ないで、お二人!
「……作れば良いだろうが」
はい、そうお思いでしょうが、
「一身上の都合で不可能です」
死活問題ですので、……ん、説明ね……あー、この『島』の銀行業と貨幣発行は銀星騎士団っていう神殿──掟の神の神官達が行ってるんだー、で、僕は、
「神殿で誓うとかホント無理です」
口座開設の為の宣誓が出来ないんだよね。ふふ、理由は内緒さ。
「……現金で、と、なりますとお時間が……」
うーん、そこそこ大金だもんねー。ん? どしたの先輩また僕をじっと見て、やっぱり見とれてる?
「……ちょっと席を外してもらえるか?」
んん? どゆこと? あ、チーフさん? 二人っきりにする? なんか不穏な空気感じ無い? あ、あー、
二人っきりになりました。……ええと、
「あの、僕本当に宣誓は」
「しなくていい」
ん? じゃあなんです?
「……今日、儲かったよな」
「はい、これまでの冒険者収入の十倍以上稼ぎました」
ビックリだよね!
「……俺もここまで一日で稼いだのは初めてだ。というかその日の内に帰れたのが初めてだ」
あー、なるほど、先輩の体質だとそうかー、で、
「あの、結論は?」
何が言いたいの?
「……このまま組まないか?」
……………………?
「へ? 先輩と僕が?」
「俺とお前が」
んん? いやいや、
「実力差ありすぎでしょう!」
強さをレベル換算したら九と九十ぐらい違うから!
「だからなんだ? ……そもそも俺は同行者に戦闘力は求めていない、巻き添えにならず、足を引っ張らない、贅沢を言えば少々フォローしてくれれば嬉しい、そのくらいだ」
……あー、確かに先輩と助け合える戦闘力の持ち主は……うん、この市では幹部クラスだね。……で、フォローかー、
「……巻き添えにも足手まといにもならないよう立ち回るくらいは出来ますけど……フォローはなー」
ちょっと難しいかな? あ、でも贅沢か、じゃあ粗食で僕?
「は? 今日あれだけしといてか?」
へ?
「……フォロー、しました?」
……あ、
「ゴブリン戦の交通整理?」
ぐらいしか思いつかないんだけど、
「……フレイムバッド戦の囮」
ん? ああ、奴ら金属音に過剰反応するからねー、ちょっとナイフと鏃を打ち鳴らしただけなんだけど、一箇所に集めて一網打尽が早いかなー、と、
「……『守護者』戦でも立つ位置を工夫してただろう」
は? …………あ、
「いや、あれは先輩から離れたら危ないから……結果的に誘導したことになったかもだけど」
うん、うん、先輩に背を向ける感じでカタナの間合いの外で警戒、してただけだもん。
「……まあ、いい……足手まといでは無いのはわかってるだろう?」
「え、まあ、僕、逃げるのと避けるのは得意なんで」
『お父さん』から、相対し戦うのは下の下の狩人のすることだ。って言われてたからね。
「……で、俺が一本道でも迷いそうになるのもわかっているだろう?」
「……あ、はい」
ですねー、迷いかけましたねー、ハーブガーデンからの帰り道で、
「俺はお前の方向感覚と素材やモンスターの知識が欲しい。……お前は俺の戦闘力や圧縮魔法、欲しく無いか?」
…………………………、
「欲しい、ですね……」
でも、
「僕、攻略には興味無いんですが……」
自分と、宿の仕事で使う分の採取、それにノルマ依頼くらいしかやる気無いんだよね。
「……下十二が別名薬草園なのは知ってるか?」
! た、確か希少な毒消しや消炎剤の材料が、
「……上十六に期間限定で極上の味と見た目の果物が実るのは?」
え! 何それ!?
「た、食べたい! 使いたい!」
……あ、
「下はともかく上十六に行けるのはこの市では俺を入れて五人にも満たないんだが……どうする?」
……………………、
「よろしくお願いします……」
* * *
「ああ、わかりました。では本日のところは……」
「書面のやり取りだけで頼む……で、明日、出来れば昼前に時間が欲しいが」
「はい、空けておきます。ではパーティー口座の開設について銀の方にも連絡を?」
「頼む」
はい、先輩とパーティーを組み続けることになったシャーロック君です。今は憂いを秘めた瞳が皆様のハートを撃ち抜くだろう美少年です。そんな僕を余所に、先輩はチーフさんと明日の打ち合わせ中です。もう帰らないとまたしても夕飯が遅れますので、一週間に二度はマズイので、っていうか銀行は夕方で閉まるので、
「……はい、ではパーティー名等は今回登録したものでよろしいですか?」
「ああ構わな」
「変えます」
先輩なんでって顔だね。けどさー、
「『とりあえず』は、なんか験が悪いじゃないですか」
一回限りならともかくね、
「……じゃあ明日までに決めておけ」
「ふふ、はい」
ま、実はもう決めてあるんだけどね。
「ではまた明日……ジョン=H=スターリング様」
僕と相棒にピッタリの名前をね。
って感じでパーティーを組んだんだ。
え? その後?
まずその日の夕食にタップリとハーブを使ったローストチキンワイルドライス詰めと、ハーブサラダを作って……あ、違う?
じゃあ翌日の……あ、ゴメン時間切れだ。
いや、気になるって言われても冒険も何も無い日々がこの後一週間続くんだよ?
……え、知りたいの? 単なる宿屋従業員の日常を?
……変わってるなー、まあ僕は構わないけどさー、
ほら、初めに話した『守護者』戦の話とか……、
え? 知らない登場人物がいて集中出来ない?
じゃあ二人との出会いや再会……、
……はい、その前に本当の日常譚を、ね、
わかったよ。……まったくあなたは変人なんだから、
……はは、ゴメンゴメン、冗談冗談、
じゃ、今日はもう帰るね。
ふふ……またね。
第三話 最小!最強?『221B』結成!終
『銀行』
銀星騎士団が運営しており、
ほぼゼロ金利。
各地の神殿で下ろせることが売り。
何時の世でも閉まるのは早い。




