第24話「決める前の一歩」
それぞれの「価値」がぶつかった後の話です。
正しいかどうかじゃなくて、
“それでも進むのかどうか”。
ここから、止まっていたものが少しずつ動き始めます。
アリアは俯いたまま、小さく笑った。
「……綺麗だね」
誰も動かない。
「“後悔したくない”」
「“諦めたくない”」
静か。
「そういうの」
「すっごく綺麗」
ゆっくり、顔が上がる。
「でもさ」
「失敗したら?」
空気が止まる。
アリアの目だけが笑っていなかった。
「誰にも見てもらえなかったら?」
「全部、無駄だったら?」
沈黙。
アリアは胸元をぎゅっと掴んだ。
「私は嫌」
「そんなの、絶対嫌」
声が少しだけ震える。
「だって私は」
「一番じゃないと意味ないから」
ヴァンの眉が動く。
アリアは止まらなかった。
「皆、“夢は自由”とか」
「“やりたいことをやればいい”とか言うけどさ」
笑う。
空っぽだった。
「結局」
「勝った人しか見てないじゃん」
静か。
「売れない歌」
「見られない舞台」
「誰にも選ばれないアイドル」
一拍。
「そんなの」
「存在してないのと同じでしょ?」
ティアが小さく息を飲む。
アリアは視線を逸らしたまま続けた。
「私は」
「皆を照らしたい」
ぽつり。
「夢を見せたい」
「すごいって言われたい」
「この人見てると元気になるって」 「そう思われたい」
少しだけ、間。
「でも」
「そのためには」
「私が一番じゃなきゃダメなの」
静か。
「だって」
「一番じゃない人間の言葉なんて」
「誰も聞かないから」
レインは黙ってアリアを見る。
アリアの手が小さく震えていた。
「だから」
「負けるのが怖い」
小さい声。
「失敗して」
「誰にも見られなくなって」
「“なんだったんだろうね、あの子”って言われるの」
俯く。
「……そんなの」
「耐えられない」
沈黙。
レインは小さく息を吐いた。
「じゃあ」
「誰かに“お前が一番だ”って言われないと」
「生きられないのか?」
空気が止まる。
アリアの目が、ゆっくり開いた。
「……は?」
レインは続ける。
「お前」
「ずっと周り見てる」
静か。
「誰が見てるか」
「誰が褒めるか」
「誰が選ぶか」
一拍。
「でも」
「お前自身は」
「どうしたいんだ」
沈黙。
アリアの肩が震える。
そして。
「……っ」
「うるさい……!」
顔が上がる。
「そうだよ!!」
声が、部屋に響いた。
「悪い!?」
「私は一番になりたいの!!」
息が乱れる。
アリアは唇を噛む。
「……どうせ」
「皆そうやって綺麗事言う」
目を逸らす。
「負けても意味あるとか」
「頑張っただけで価値あるとか」
小さく笑う。
「そんなの」
「勝ってる側しか言えないじゃん」
静か。
「誰にも見られなくなった瞬間」
「終わるんだよ」
ぽつり。
「私は」
「消えたくないの」
空気が落ちる。
その時。
「……それ」
レインが小さく言う。
アリアは睨むように顔を上げた。
「何」
レインは少し考える。
「たぶん」
「皆、同じだろ」
静か。
「俺も」
「シオンも」
「ヴァンも」
「ティアも」
視線が動く。
「消えたくないから」
「ここから出たいんだろ」
沈黙。
シオンの目が少しだけ動いた。
レインは続ける。
「違うのは」
「何を残したいかだ」
静か。
「お前は」
「自分を見てほしい」
「ティアは」
「止まった時間を進めたい」
「シオンは」
「価値が消えるのを知ってるから諦めてる」
「ヴァンは」
「見捨てたくない」
一拍。
「俺は」
「この国の歪みが気持ち悪い」
この回は、結論を出す話ではありません。
でも、「止まったままかどうか」は変わります。
アリアの本音。
レインの整理。
それを聞いた“他の三人”がどう動くか。
ここからは、それぞれが自分の理由で選び始めます。
そして、その選択はもう“戻らない”ものになります。
次回も読んで頂けると嬉しいです。




