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第14話「揃わない答え」

同じ話を聞いても、 全員が同じ答えに辿り着くわけじゃない。

何を信じるか。 何を気にするか。 その“ズレ”が、少しずつ見え始めます。

「適正管理棟」に戻ってきた。



さっきより―― 足音。 扉の開閉。 小さな話し声。

廊下を歩く。



(……同じだな)

見える景色は変わらない。 整っている。 揃っている。



でも。

(……中身は、違う)

レインは足を止めない。

部屋の前。 軽くノックする。

コンコン。

返事はない。

「入るぞ」

扉を開ける。



「おかえりー!」

明るい声。 アリアが振り向く。 いつもの笑顔。

「遅かったねー」 くるりと回る。 一人で舞台に立っているみたいに。



シオンはベッドに腰掛けていた。 指先で何かを弄んでいる。 カード。 指の間で、滑る。



ヴァンは壁にもたれている。 腕を組んだまま、動かない。

三人とも、変わらない。

(……いや)

レインは一歩、入る。

(変わってない、だけか)



「どうしたの?」

アリアが首を傾げる。 興味のままの顔。

レインは少しだけ間を置く。

「図書館行ってた」

それだけ。

「へぇー、真面目ー」 アリアは笑う。



「で?」

シオンが言う。 視線はこっちに向けない。 カードを見たまま。

「何見てきたの?」



短く。

レインは言う。

「3カ国の関係」

一拍。

カードが止まる。

ほんの一瞬。

シオンの指が、わずかに止まる。

「……あぁ」

小さく。

すぐに動き出す。



レインは続ける。

「友好関係、って書いてあった」

「オルディアで、こんな歴史習ってないだろ」



アリアが笑う。

「知らなかったけど」

「いいじゃん、それ!」

すぐに。

「仲良しってことでしょ?」



軽い。

「……そうだな」

レインは答える。

「事故も書いてあった」



そのまま。

短い沈黙。

ヴァンが少しだけ顔を上げる。

「事故?」

低い声。

「ノヴァリス王が死んだって」



シオン

「へぇ」

それだけ。



興味は薄い。

「でも」

レインは言う。

「内容は書いてない」



シオンの手が止まる。

今度は、少しだけ長く。

「……そうか」

カードを閉じる。

「綺麗にまとめたんだね」

軽く笑う。



「そういうの、よくあるよな」

「都合悪いとこは消す」

「それに」

「そんなこと調べても、俺らにできることあるわけ?」

さらっと。

当たり前みたいに。



アリアは首を傾げる。

「そうだよー」

一歩、近づく。

「それでうまくいってるなら、よくない?」

にこっと笑う。



「揉めるよりさ」

「仲いい方がいいじゃん」

迷いがない。



ヴァンが口を開く。

「どっちでもいい」

短く。

「強い方が残るだけだろ」

それだけ。



レインは黙る。

一拍。

(……全部、違うな)

同じ話をしているのに。

見てる場所が違う。



「お前は?」

シオンが言う。

今度は、こっちを見る。

「どう思ったの?」

「まさか真実を見つける、くだらないこと言わないよな?」



レインは少しだけ間を置く。

(……決めてない)

そのまま言う。

「分からない」 



一拍。

「でも」

視線を外す。

「おかしいことをおかしいって言うのは変なことじゃないだろ」



シオンは少しだけ笑う。

「面倒臭い男だな」



軽く。

「そういうの」

カードを指で弾く。

「歴史なんて、都合よく改竄されるだろ」 



アリアは笑っている。

ヴァンはもう興味を失っている。



ティアは手を止めない。

何も言わない。

エイルは視線を揺らしたまま、口を開きかけて――閉じた。



同じ部屋。

同じ空間。

でも。

(……揃ってない)

レインは立ったまま、目を閉じる。



さっきの本。

整った文字。

欠けた中身。

(……皆ズレてる)



その時。

エイルがふらっと倒れ込んだ。

バタン。



レインは急いで駆け寄った。

「大丈夫か?」


「正しい」より先に、 “何を見ているか”が違う。

だから同じ話をしていても、 答えは揃わないのかもしれません。

次回も読んで頂けると嬉しいです。

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少しずつ、三カ国の全貌が見え始める。 『笑い』『選別』『価値』が交差する異世界ファンタジー。 (※執筆・画像すべてスマホ1台で制作しています)
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