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第29話「ズレと再現」

見知らぬ女が現れる。

その問いは、正しさだった。


「それに、意味はあるのですか?」

楽しさや笑いを、“価値”として測ろうとする視線。


それに対して、レインが見ているものは――まったく別のものだった。

見知らぬ女は、木彫りの人形を持ったまま――言った。

「目的は何ですか?」

「教えて下さい」



子供たちのざわめきが止まる。

その場にいる誰もが、無意識に距離を取った。



――“管理する側”の人間。

その空気だけで、十分だった。

「違反をしてまで」

一拍。



「その行いに、意味はあるのですか?」

もう一歩、踏み込む。

「それで――何が学べるのですか?」



子供たちがざわつく。

誰かが、小さく言った。

「……楽しい」

間。

「笑うと……嬉しい」



「楽しい、嬉しいだけ?」



女は首を傾げる。

「“だけ”では、価値が測れません」

一拍。

「報酬は?」



一歩。レインに近づく。

「あなたは、これをどう定義しますか?」



――少し間。

レイン

「……笑うことは、報酬にならないのか」



「笑うと、元気になる!」

ミレアが言った。

「それじゃダメなの?」



一瞬、沈黙。

女はミレアを見る。

「笑うことに、必要性はありますか」

「再現性がありません。価値にはなりません」



子供たちがぽかんとする。



カイがぼそっと言う。

「なんだこいつ……」

「人間……だよな」



女は、静かに一礼した。

「申し遅れました」

「わたくしは、リゼル・セートンと申します」

「13歳から16歳を担当します」

「よろしくお願い致します」



サリアは思い出したように言った。

「……そういえば、神官、変わったって聞いたかも」



ミレアが目を丸くする。

「サリアと見た目、同じくらいだよ?」



サリアは小さく頷いた。

「そうね、若そう」

「でも年は上だと思うわ」



リゼルはレインだけを見ていた。



レインは、ゆっくり顔を上げていた。

(……違う)

さっきまでの“見てる側”じゃない。

(これは)

一歩、前に出る。



「……再現できる」

「感情も」

リゼルの目が、わずかに細くなる。

「条件がある」

一拍。

「ズレだ」



レインはメモを探す。

見つからない。

奥に、ノートが落ちていた。

手を伸ばす。



――その時だった。

鳥が、バサバサッと目の前を横切る。

「あっ、派手な鳥!」

ミレアが指を差す。



レインが振り向く。

――一拍。

イボガエルが、飛んできた。

「うわっ」



遅れて、レインは転んだ。

砂を打つ音が、あとから響く。



子供たちの中で、

ひとりが、遅れて笑った。

それにつられるように、



またひとり。

――揃わない。

笑いが、波みたいに広がっていく。

子供たちの笑いが、揃っていなかった。



リゼル

「……これがズレですか」

一拍。

「理解しました」



レインは首を振った。

「違う」

「……起きただけだ」

一拍。



リゼルの目が、わずかに細くなる。

「“起きただけ”の現象が」

「複数回、同様に発生しています」

「それを――再現と呼びます」



リゼルは一歩、近づいた。

「条件は?」



レインは黙る。

「何をすれば、発生するのですか?」



レイン 「……わからない」

一拍。

「でも」

「ズレた時に、起きる」



リゼルは淡々と言った。

「――ですが」



一拍。

「それは、何が面白いのですか?」

「私には、理解できません」

ここで、価値観の衝突がはっきり出てきました。


新しい登場人物、リゼル・セートン(25)

物事を「価値」「再現性」で測る思考を持つ。


感情よりも効率を優先し、無駄を嫌う。


笑いや楽しさといった曖昧なものを理解できない。

リゼルは「再現できるか」「価値になるか」で物事を見ています。


一方レインは、「起きた現象」をそのまま捉えている。


このズレが、この物語の中心です。

笑いは作るものなのか。


それとも、起きるものなのか。


次回も読んで頂けると嬉しいです。

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少しずつ、三カ国の全貌が見え始める。 『笑い』『選別』『価値』が交差する異世界ファンタジー。 (※執筆・画像すべてスマホ1台で制作しています)
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