第18話「自由参加」
“自由”と言われた時、 本当に試されるのは、その後かもしれない。
今回は、 リゼルが去った後の話です。
風が吹く。 貼り出された紙の端が、かすかに揺れた。
いつもと同じように。
けれど、その軽さが逆に不自然で、誰もすぐには返事をしなかった。
トーマは森の方を親指で示す。
「あっちだ。話すなら、ここじゃない」
一拍。
「来たい奴だけ来い」
「来なくてもいい」
言い方はいつも通りだった。
けれど、それは“自由”というより、
“選ばせる”声だった。
ミレアが、すぐに頷いた。
「行く」
カイは舌打ちしそうな顔のまま、短く言う。 「……俺も」
サリアは掲示板をもう一度見たあと、小さく息を吐いた。
「私も行くわ」
ジョンだけが、周囲を見回しながら首を傾げていた。
「ナンダ?」
「ミンナ、カオ、クライ」
誰も答えない。
トーマはそれ以上何も言わず、
先に歩き出した。
子供たちの何人かも、不安そうに顔を見合わせながらついてった。
来ない子もいた。
その場から動けず、ただ立ち尽くしていた子もいた。
自由参加。 けれど、それは“どちらもいい”という意味じゃない。
この場から先に進むかどうかを、自分で決めろということだった。
「……消したくないな」
ぬいぐるみを持つ手にチカラが入る。
小さく呟く。
その時だった。
「じゃあ、行くなよ」
カイが低く言った。
空気が止まる。
レインは少しだけ黙ったあと、 静かに答えた。
「行きたくはない」
それは、本音だった。
「怖いし」 「正直、意味分かんないし」
一拍。
「でも」
「何でこんなに隠すんだろうって思う」
風が吹いた。
紙が揺れる。
森の空気は冷たい。
小屋の中には、まだ少しだけ熱が残っていた。
それは、焚き火の名残じゃない。
笑いと、声と、時間の残り火だった。
レインは、それを見ていた。
トーマは、扉のそばで立ち止まった。
「わかった」
「絶対に帰ってこい」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
今回は、大きな事件というより、 “空気”を書く回でした。
誰もすぐには泣かない。 誰もすぐには叫ばない。 でも確実に、今までの日常が崩れ始めています。
トーマの「来たい奴だけ来い」も、 自由に見えて、実際はかなり重い言葉です。
そしてレイン達は、 “知らないままでいる”か、 “先へ進む”かを選ばされ始めています。
小屋に残っていた熱は、 ただの焚き火じゃなく、 この第一章で積み上げてきた“笑い”や“居場所”そのものです。




