【終話】伸びてる? あ、伸びてる ~レディは耳を好きになる~
むかし、むかし、あるところに、シャルマントと言う女の子がオオカミと一緒に暗い夜道を家に向って歩いていました。
シャルマントの家に着くと、ザバンはシャルマントから再び強く抱きしめられ、「ありがとう」の言葉を聞くと、森の、自分の家族が待つ樹洞へと向かって暗い闇の中へと消えて行きました。
シャルマントは疲れ切っていて、夜中に目をさます事も無く、ネズミさん達とのお話しもできないまま朝をむかえています。
「シャルマント、朝よ、起きなさい。」
とお母さんが起こしに来るまでそれはもうぐっすりと眠っていました。
「は~~~い。」
眠い目をこすり、ベッドから這い出すように起き上がると、
ピコッ! ピコッ! ピコッ!
例の音が、今回は3つも鳴りました。
シャルマントは不思議に思っていましたが、その音がどうして鳴ったのかを知るすべが有りません。
それは、ライツちゃんの病気が治り、ライツちゃんとライツちゃんのお父さんとお母さんの三人が喜んだからでした。
それから数日が過ぎ、学校へ行くと教室にライツちゃんが居るではありませんか。
「ライツちゃん。」
「シャルちゃん。」
二人は久しぶりの再会に駆け寄って抱きあい、喜びの笑顔をかわしました。
それから、数日が過ぎたある日の事です。
そう、むかし、むかし、骨付き生肉を重たそうに引き摺りながら森に入っていく赤いずきんを被った少女がいました。
ズリズリズリ ズリズリ ズリズリズリズリ
少女はその重い肉を嫌な顔もせず、むしろ大切なおみやげを持って行くかの様にゆっくりと森の中を歩いています。そうです、この大きなお肉は病気が治ったライツちゃんのご両親からのプレゼントだったのです。
どれ程歩いたのでしょうか、少し薄暗くなった森の小道の脇の大きな木から鋭い目つきのオオカミが一匹、シャルマントを見据えて出てくるではありませんか。シャルマントはドキッとして立ち止まります。そして、恐る恐る言いました。
「ザ バ ン?」
「やっ、 シャル様。」
「ザバン!」
シャルマントはその場に肉を置き、オオカミに駆け寄るとその首に抱き着きました。
「あらまだフカフカじゃない。凄いわ妖精の泉。」
「へへへ、子供たちにも気に入られてんだ。それに、母ちゃんなんか、「あなたってやっぱり男前だね、惚れ直したよ。」ってすり寄ってくるんだぜ。」
久しぶりの再会に喜び合うと、ザバンはおみやげの肉を銜えオオカミの住みかへと一緒に行きました。
オオカミ家族と楽しい時間を過ごし、家に戻ったシャルマントはその夜名前も付けて仲良くなったネズミさん達と楽しい話しをしています。
そんな時、
「なあ、お前の耳、少し伸びてないか?」
太っちょネズミのボムが言いました。
シャルマントがカチューシャの耳に手を当て、さわさわと触ってみると確かに少し伸びています。
「本当だ、伸びてる。」
「良かったじゃねえか。」
細い、少しひょろひょろしたネズミのシュットが言いました。
「う~ん、リス・・・・いや、イタチ位かな?」
ボムが言います。
シャルマントは思いました。形はどうであれ、大きくなったことがとても嬉しく、ずっとカチューシャの耳をイジイジして笑顔になっていました。
それから数日が経っても、少し大きくなった耳が嬉しく、赤いずきんの中に手を差し込んでさわさわと触りながら森の近くを歩いていました。
すると、どこからか聞いた事のない鳥のさえずりが聞こえ、見渡すと、森の入り口の木の枝に見た事も無い羽根の色をした鳥が数羽とまっているではありませんか。シャルマントは興味津々で鳥たちの会話を聞きます。
「キケキケピコピコ キクキクピョンピョン
キイタラズンズン ハヨノビロ、さあ鳥さん。」
いつもの様に呪文を唱え、手を赤いずきんの上に乗せ、耳のように立てて鳥たちの会話を聞きます。
「はぁ、やっとここか。」
「目的地はもうすぐだな。」
「秋が来るまでに南に行かないと寒くなっちゃうからな。」
「それにしてもさ~、仲間たちと離れちゃったな~。」
「そうだね、皆は何処まで行ってんだろうな。」
「仕方ないさ、あれは必死で逃げるしかなかったもんな。」
「本当びっくりしたな~、急に向かって来るんだもの。」
「ああ、アイツに出くわしたら何されるか分かったもんじゃないからな。」
「そうそう、あの “むらさきリボンの魔女” にはさ。」
(ん? むらさきリボンの魔女? それって、グロルのむらさき魔女?)
シャルマントはその魔女の特徴を聞いた途端、思わず鳥たちに話し掛けてしまいました。
「ねえ、その “むらさきリボンの魔女” に何処で会ったの?」
鳥たちは何処からともなく聞こえてきたシャルマントの声に驚き、急いで辺りを警戒するために首をキョロキョロとさせ、その声の出所を探しています。
シャルマントは再び聞きました。
「ねえ、鳥さん達、グロルのむらさき魔女に何処で会ったの? 教えて!」
今度は先程よりも強い口調になっています。
その声の強さに怯えた鳥たちは一斉に飛び立って、どこか遠くの空へと消えてしまいました。
シャルマントは「しまった」と思い、両手で口をふさいだのですが既に鳥たちは消えています。そしてシャルマントは思いました。
(そうだ、忘れちゃダメなんだ。私の目標はこの呪われたカチューシャを取っ払って、あの『グロルのむらさき魔女』をぶん殴ることなんだから。)
赤いずきんの上から、その中に隠されたカチューシャの耳を両手で抑えたシャルマントは、鳥たちが消えた空に鋭い視線を向け、再び強く心に誓うのでした。
シャルマント ~赤いずきんと呪いのカチューシャ~ 完。
長々と読んでくださり、ありがとうございます。
いや~~、大変でした。
小学生にも読めるようにと、すべての漢字にルビをふろうとしたのが失敗です。
本当に大変でした。 それでも始めてしまったのならしょうがありませんからね・・・・。
童話にはまだまだ多くの登場キャラクターがいますよね。
書き終わってから、そうだった、王様、お姫様、王子様、子豚にロバ、馬に羊・・・・。
そこで、速報!!
『シャルマントⅡ ~赤いずきんと呪われの王子~(仮)』
ゆっくりと、楽しんで書き始めています。
また、皆様とお会いできる日を楽しみに、その時をエネルギーの源にして書きつづりますね。
本当に、ありがとうございました。




