後日譚:推し活は愛を実らせる!カスパール君のツンデレ大爆発
(1)新たな兆候と聖騎士団との関係
私たち五人は、この新しく、そして自由になった世界を、それぞれの想いを胸に見守っていた。
悲劇や絶望的な戦いを乗り越え、かけがえのない愛する人を得て、私たちの魂の絆は、もはや何があっても揺らぐことはないだろう。
魔王となったルシアン様と共に、私たちは、これからも、ずっと。
人間界は、ガイア様の直接的な抑圧から解放されて、文字通り、自由と幸福を謳歌していた。
驚くほどの多様な文化と技術が花開き、世界は、見たこともないような彩りに満ちていく。
そんな折、ガイア様の聖騎士団の王アシュレイ様が、ルシアン様がいる城へ会いに来たんだ。
ガイア様が私たちを倒すよう命じなくなったため、彼らもどうしていいか分からず、状況を探りに来たのだろう。
ルシアン様は、魔王としての圧倒的な威圧感を抑え、聖騎士団の王と穏やかに言葉を交わした。
「我々はもはやガイアの勇者ではない。この世界を護るために、我々のできることをするだけだ。今後のこの世界の秩序と平和については、ガイアの聖騎士団、お前たちに任せる」
ルシアン様の言葉は、彼らの現在の立場と、新たな世界における役割を明確に示した。
聖騎士団の王は、その言葉に戸惑いつつも、深く納得した様子で城を後にした。
これで、彼らとの間にも、新たな信頼関係が築かれるだろう。
(2)日常のいちゃつきと、ローゼリアの作戦
平和になった城での日常は、小さな喜びと幸せに満ちていた。
ある日、ルシアン様と二人で城下町へ買い物に出かけた。
新鮮な果物を選んでいると、ルシアン様が不意に私の手を握り、指を絡ませてきた。
「セラフィナ、何か欲しいものはないか?なんでも買ってやろう」
「え、ルシアン様、急にどうしたんですか!?」
「お前の喜ぶ顔が見たいだけだ」
そう言って、彼は人目もはばからず私の肩に手をまわした。
周りの視線が痛い!
でも、推しからのスキンシップは……尊い!
私の心臓は高鳴りっぱなしだった。
「ルシアン様、マジ尊い……!」と、私は心の声で叫びながら、彼の腕にぎゅっとしがみついた。
城の庭園で、ルシアン様が魔法の実験をしている時もそうだ。
複雑な術式を展開する彼の真剣な横顔は、普段の穏やかさとは異なる、魔王としての圧倒的な集中力と美しさを見せつけてくれる。
「ルシアン様、カッコいい……!その集中した横顔が……尊い……!」
私が思わず呟くと、彼は実験の手を止め、振り返ってくれた。
「お前は、いつも俺をそんな風に見ているのか?」
少し照れたように微笑む彼に、私は全力で頷いた。
「もちろんです!ルシアン様の一挙手一投足、全てが尊いですから!」
彼はフッと笑い、私の頭を優しく撫でてくれた。
その手つきは、どこまでも愛おしむようで、私はこのまま溶けてしまいそうだった。
一方、ローゼリアちゃんのカスパール君への「推し活」は、日を追うごとに熱を帯びていた。
「ねえ、セラフィナちゃん!今日のカスパール君も最高だったの!」
ある日のティータイム、ローゼリアちゃんが興奮気味に私に話しかけてきた。
「任務でね、ちょっと危険な魔物が出たんだけど、カスパール君が『チッ、こんな雑魚に時間取られてたまるか』って言いながら、一瞬で片付けちゃったの!あの、紫の宝珠のピアスがキラって光って、マントが翻った瞬間、私、思わず『かっこいい……!』って声に出そうになっちゃった!」
ローゼリアちゃんは両手で顔を覆い、興奮を抑えきれない様子だ。
「うんうん、わかるー!カスパール君、ああ見えてやるときはやる男だよね!」
私が笑いながら相槌を打つと、ローゼリアちゃんは身を乗り出した。
「そうなの!いつもツンツンしてるけど、実は優しいの! この前もね、私がちょっと体調崩しちゃった時に、薬が置いてあったの。カスパール君の従属魔物のリトルが『ご主人様が、ローゼリア様のためにって、こっそり置いていきましたー!』って教えてくれたの!『別に大したことねぇだろ』ってごまかしてたけど、絶対カスパール君の優しさだよ!」
「ふふ、そういうとこがカスパール君らしいよね」
「あとね、転生してからのあの長髪を緩く括ってるスタイル、すごく好みなんだ。 昔の洗練されたスタイルも素敵だったけど、今のワイルドな感じも……!そしてね、セラフィナちゃん!私がカスパール君にあげたネックレス、いつもつけてくれてるの! 彼、身長も高いし、……なんだか、いちいち、全部がかっこよく見えちゃって……私、どうしよう……!」
ローゼリアちゃんは、真剣な顔で私を見つめる。
「セラフィナちゃんみたいに、ノートに書いたりスケッチしたりするまではまだできないんだけど、私の心の中では、毎日カスパール君の『推し活』してるの。 これって……完全に『推し』だよね?」
「うん、間違いない!立派な『推し活』だよ、ローゼリアちゃん! 私が公認するから、安心して推しちゃいな!」
私の言葉に、ローゼリアちゃんは「えへへ……」と嬉しそうに笑った。
彼女の純粋な「推し愛」は、城の中に温かい光を灯しているようだった。
(3)王からの招待と、パーティ準備の攻防
そんな穏やかな日々の中、私たちの城に、以前ルシアン様が対面した聖騎士団の王、アシュレイ様が訪れた。
彼は流れるような金髪に、人を惹きつける明るい笑顔が特徴の色男で、その洗練された立ち居振る舞いは、女性たちの間で常に憧れの的だという。
ガイア様が、最近は規制を緩和しているため、彼ら聖騎士団も今後の方向性を見定めているようだった。
ルシアン様は冷静に彼らと対話したが、どうやらアシュレイ様は、ローゼリアちゃんの純粋な笑顔と、ひまわりのような明るさに目を奪われたらしい。
「ローゼリア様、貴女の笑顔は、この平和な世界に最も相応しい輝きです」
ローゼリアちゃんは驚きつつも、どこか嬉しそうに頬を染めた。
その光景を横で見ていたカスパール君は、みるみるうちに顔色が悪くなった。
「ッ……なんなんだ、あのチャラ男は!」と、誰にも聞こえない声で舌打ちしているのを、私は見逃さなかった。
彼の耳元に輝く紫の宝珠が、まるで怒りの感情に共鳴するように、微かに瞬いた。
数日後、アシュレイ様から私たち勇者たちに、聖騎士団の本拠地で開かれる盛大な祝賀パーティへの招待状が届いた。
世界の平和を祝う公式な場として、各職務の王や名だたる権力者たちが招かれるという。
「うわぁ、パーティなんて久しぶりだね!」ローゼリアちゃんは目を輝かせた。
「どんなドレスを着ていこうかな!?」
そんなローゼリアちゃんを横目に、カスパール君は不機嫌そうに舌打ちした。
「ったく、面倒なことになりやがって。俺はこういうのは苦手なんだよ。」
しかし、その言葉とは裏腹に、彼は時折ローゼリアちゃんの様子をちらりと気にしている。
特に、アシュレイ様がローゼリアちゃんに舞踏会でのダンスを申し込んでいると知ってから、カスパール君の機嫌はさらに悪くなった。
「フン、あの野郎、調子に乗ってやがる……!」と、毒づきながらも、彼の紫の瞳は、ローゼリアちゃんの様子に目が離せない。
私たちはこのパーティこそ、カスパール君がローゼリアちゃんへの本音を吐き出す絶好の機会だと考えた。
「ローゼリアちゃん、このパーティで、アシュレイ様とたくさん踊って、カスパール君に嫉妬させちゃおうよ!」
私はローゼリアちゃんにそっと耳打ちした。
「え、ええ!?そ、そんなこと……できるかなぁ……でも……」
ローゼリアちゃんの目がキラキラと輝き、彼女の顔には密かな決意が宿った。
彼女の「カスパール君嫉妬作戦」のはじまりだ。
パーティまでの一週間は、城内がドレスや正装の準備で大わらわだった。
「ねぇ、セラフィナちゃん、このドレス、どうかな?」
ローゼリアちゃんは、桃色の可憐なドレスと、深い紫色のシックなドレスを手に悩んでいた。
「どっちもローゼリアちゃんに似合うと思うけど……もしかして、カスパール君とお揃いの色がいい?」
私がニヤリと笑うと、ローゼリアちゃんは顔を真っ赤にした。
「えっ!?ち、違うわよ!でも……その、紫も素敵だなって……」
彼女はちらりとカスパール君のいる方向を気にしている。
そんな会話を横で聞いていたルシアン様が、私の腰にそっと手を回し、耳元で囁いた。
「セラフィナはどんなドレスを着ても美しい。だが、俺が選ぶとしたら……」
彼の蒼い瞳が私を優しく見つめ、思わずドキッとする。
彼は私にウインクすると、まるで子供に語りかけるように言う。
「お前が一番輝く色を、俺が選んでやろう。」
きゃー!
ルシアン様の「ぐいぐい」アプローチが止まらない!
皆の目がある前で、私は恥ずかしさで顔が真っ赤になったけれど、ルシアン様はどこ吹く風で、私の手を取り、私の瞳の色に合わせた深緑のドレスを選んでくれた。
一方、カスパール君の部屋では、フワワとリトルたちが彼を急かしている。
「ご主人様!早くタキシードを選んでくださいー!」
カスパール君は顔をしかめ、「うるせぇ!お前らが選べばいいだろ!」と怒鳴っている。
だが、彼は結局、ローゼリアちゃんが気になっていた紫色と同じ色のタキシードを選んでいる。
彼は、ローゼリアちゃんが自分のために選んでくれた色だと知っているからだ。
「カスパール、その髪、少し切った方がパーティには相応しいんじゃないか?」
アルドロンさんが助言すると、ローゼリアちゃんは慌てて叫んだ。
「だ、ダメ!切らないで!その、今のワイルドな感じも、すごく素敵だから!」
カスパール君は「フン」とそっぽを向いたが、顔は耳まで真っ赤になっていた。
そんなやり取りに、アルドロンさんは静かに微笑み、ルシアン様は楽しそうに目を細めていた。
(4)星降る夜の舞踏会、そして不器用な愛の行方
パーティ当日。
聖騎士団の本拠地は、まばゆい光に包まれていた。
各職務の王や、名だたる権力者たちが集い、会場はきらびやかな衣装と、楽しげなざわめきで満ちている。
ルシアン様は、漆黒の正装に身を包み、彼の長く輝く銀髪が背中に流れる姿は、まさしく「魔王」としての威厳と、彼本来の王としての気品を兼ね備えていた。
マントが翻るたびに、会場の視線が彼に釘付けになる。
その圧倒的な存在感に、誰もが息を呑み、女性たちはうっとりとしたため息を漏らした。
彼が会場を歩けば、人々が自然と道を空け、その姿に畏敬の念を抱くのが見て取れる。
隣に立つ私も、ルシアン様が選んでくれた深緑のドレスで、いつもよりずっと大人っぽく、美しく着飾っている。
ルシアン様は私をエスコートしながら、時折そっと私の手を握り、彼の蒼い瞳で優しく微笑んでくれた。
「セラフィナ、お前は本当に美しい。この世のどんな宝石よりも輝いている」
耳元で囁かれた言葉に、私の心臓は爆発寸前だ。
ルシアン様は、周囲の視線も気にせず、私の腰に手をまわし引き寄せた。
ああ、尊い!
アルドロンさんとリリアさんも、優雅に登場した。
二人の間には、長きにわたる愛情と信頼が作り出す、まるで後光が差しているかのような神々しい雰囲気が漂っており、多くの人々がため息をついて見とれていた。
彼らがダンスを踊り始めると、その優雅さと息の合った動きに、会場中から感嘆の声が上がる。
そして、ローゼリアちゃんは、カスパール君が内心「可愛い」と認めている紫色のドレスに身を包み、普段の明るさに加え、どこか大人びた雰囲気を纏っていた。
彼女が会場に足を踏み入れると、その可憐な姿に多くの紳士たちが目を奪われた。
「ローゼリア様、この夜を共に踊っていただけますか?」
聖騎士団の王アシュレイ様が、待ちかねたように彼女の手を取り、ダンスフロアへ誘う。
ローゼリアちゃんは少し照れながらも、にこやかにアシュレイ様とダンスを踊り始めた。
二人の流れるようなダンスは、会場の注目を集める。
カスパール君は、その光景を遠巻きに見ていたが、みるみるうちに顔色が悪くなっていった。
彼はグラスを握りしめ、眉間に深い皺を寄せている。
「ったく、何が楽しくてあんなチャラチャラした真似を……!」と、毒づきながらも、彼の紫の瞳は、ローゼリアちゃんとアシュレイ様の姿から目を離せない。
彼の従属魔物であるリトルたちは、「ご主人様、嫉妬してるー!」「早くローゼリア様を奪い返してくださいー!」と、カスパール君の周りをせわしなく飛び回っている。
しかし、その声は、ローゼリアちゃんには届いていないようだった。
ローゼリアちゃんは、アシュレイ様とのダンスを楽しんでいるが、時折、カスパール君のいる方向をちらりと見て、その視線は彼を追いかけているのが分かった。
アシュレイ様が甘い言葉を囁くたびに、彼女はカスパール君の方を一瞥し、彼の不機嫌そうな顔を見て、内心「ふふ」と微笑んでいる。
彼女の「推し」が、自分に嫉妬しているのが嬉しいのだ。
これは、まさに「カスパール君嫉妬作戦」が順調に進んでいるように見えた。
しばらくすると、カスパール君は苛立ちを隠しきれない様子で、誰にも告げずに会場を後にした。
ローゼリアちゃんは、慌てて追いかけようとしたが、彼の紫の宝珠が、怒りに共鳴するように激しく瞬きながら、遠ざかっていくのが見えた。
ローゼリアちゃんは、一瞬寂しそうな顔を見せた。
そして、「やりすぎたかな……」と小さくつぶやいた。
その頃、ルシアン様が私の手をそっと取り、ダンスフロアの中央へと誘った。
会場の喧騒が一瞬静まり、すべての視線が私たちに集まる。
ルシアン様は私を優しく抱き寄せ、流れるような音楽に合わせて一歩踏み出した。
彼のリードは完璧で、まるで私が彼の腕の中で空を舞っているかのようだ。
深緑のドレスの裾が、彼の漆黒の正装と美しく絡み合い、私たちの動きは一つの芸術作品のように優雅だった。
彼の蒼い瞳が私を深く見つめ、その中に揺れる愛おしさに、私の心は満たされていく。
私たちは言葉を交わすことなく、ただ視線と触れ合う手だけで、互いの存在を確かめ合っていた。
会場からは、感嘆のため息と、静かな拍手が起こる。
この瞬間、私たちは世界でただ二人の存在であるかのように、全てを忘れて踊り続けた。
一曲が終わり、ルシアン様が優雅に一礼する。
私は、彼の手を握ったまま、少しだけ俯いた。
周りからの称賛の視線を感じながらも、私の頭の中はルシアン様でいっぱいだ。
彼は私の顔をそっと持ち上げ、その蒼い瞳で私の目を見つめ、優しく微笑んだ。
「セラフィナ、お前と踊れるなら、どんな場所でも至福だ」
パーティも終盤に差し掛かり、ルシアン様と私は城に戻る準備をしていた。
***
その頃、カスパールは、城の地下にある実験室で魔導書を乱暴にめくっていた。
肩にはいつものようにフワワが乗っている。
彼の従属魔物であるリトルたちは、部屋の隅でせっせと埃を拭いている。
「ったく、くだらねぇ……あんな時間に付き合ってられるか。あんなことしてる暇があったら、本でも読んだ方がマシだ」
カスパールは、ぶっきらぼうに呟く。
しかし、その表情はどこか苛立ちと、隠しきれない焦燥に満ちているのが見て取れた。
自分が帰ってしまった後、アシュレイ王とローゼリアは何をしているのか?
彼の耳元に装着された紫の宝珠が、微かに光っている。
自分が会場を後にするとき、ローゼリアは慌てて追いかけてきたように見えた。
「いつもあんなに慌てて、転びそうになってばかりだし、本当に危なっかしいんだからな。今日もあんなドレスで踊りやがって、俺がいないと、すぐに怪我でもするんじゃねぇのか」
彼はそう言いながら、魔導書のページをめくる。
脳裏には、ローゼリアが任務中に小さな段差につまずきそうになった時、咄嗟に手を伸ばして支えた自分の手がよみがえる。
そして、ローゼリアが「カスパール君、ありがとう!」と自分を見つめて言ったときの可愛い笑顔を思い出した。
「フン……いつも笑顔ばかりで、たまにはもっと俺に頼ってくれてもいいんだぜ、フワワ。俺は別に……お前が困ってたら、助けてやってもいいんだからな」
カスパールは、頬を微かに染めながら、フワワの頭をぽん、と叩いた。フワワは嬉しそうに彼の指にすり寄る。
その時だった。
「カスパール君!!」
突然、実験室の扉が勢いよく開き、息を切らしたローゼリアが紫のドレス姿のまま飛び込んできた。
彼女の桃色の宝珠が、激しく輝いている。
カスパールは、まさかローゼリアがこんな場所まで追いかけてくるとは思わず、驚きで目を見開いた。
「な、なんだよ、急に……!いきなり飛び込んできて、どうしたんだよ!だいたい、なんでこんなところにいるんだ!」
彼はいつものように強がるが、その顔は真っ赤になっている。
フワワは「ポンッ!」と可愛らしく鳴いて、カスパールの頭の上でぴょんぴょん跳ねている。
「カスパール君、なんで先にかえっちゃったの!? パーティ、まだ終わってなかったのに……!」
ローゼリアの問いかけに、カスパールはさらに顔をしかめた。
「うるせぇ!くだらねぇ!あんなくだらない時間、付き合ってられるか!そんなことしてる暇があったら、本でも読めよ!」
彼はそう言いながら、手元の魔導書を乱暴に閉じた。
そして、顔を背けながら、さらに吐き捨てるように言った。
「……お前もだ!くだらない奴と楽しそうに踊りやがって……!」
その言葉を聞いた瞬間、
(もしかして、やきもち作戦……大成功!?)
ローゼリアの心の中で、歓喜の声が響いた。
彼女はすぐに表情を引き締め、その澄んだ瞳をカスパールにまっすぐ向けた。
「カスパール君は、私のこと、好きじゃないものね……?」
その言葉は、まるで彼の心臓を抉るかのように響いた。
彼の顔は真っ赤になり、焦りと動揺が隠せない。
「だ、だから、なんだよ!いきなり何を言い出すんだ、お前は!」
「だって……だって、カスパール君、いつもそうやってツンツンしてるんだもん!私のこと、全然気にしてないフリして、でも実は優しいところとか、私が困ってるとすぐに助けてくれるところとか、任務で危険な魔物と戦う時に私の前に立ちはだかってくれるのとか、あの禁断魔法を唱える時のちょっと危ない雰囲気とか、転生してからの長髪を緩く括ってるワイルドな姿も、マントを翻して歩く姿も、私が贈ったネックレスをいつもつけてくれてるのも、全部全部、私、大好きなのに!」
ローゼリアの告白は、まるで一途な「推し」が、その愛する「推し」に、これまで秘めてきた情熱を全てぶつけるかのような、熱量と純粋さに満ちていた。
彼女は、彼の魅力を一つ残らず挙げて、まるで推しプレゼンをするかのように、必死に訴えかけた。
「私……あなたのこと、大魔導士カスパール君として、心から尊敬してるし、大好きです! だから……どうか、私のお傍にいてくれませんか……? 私の、一番大切な……」
「……うるせぇ……」
カスパールは、顔を真っ赤にしながら、ローゼリアの言葉を遮った。
そして、照れ隠しのように、乱暴に彼女の腕を掴み、強く引き寄せた。
「……世話が焼ける女だな、お前は……」
彼の言葉とは裏腹に、カスパールの紫の瞳は、ローゼリアへの深い愛情と、これまでのツンデレな態度の裏に隠されていた、素直な感情で輝いていた。
ローゼリアの体が、カスパールの逞しい胸にすっぽりと収まる。
彼の、普段はひらりと翻る黒いマントが、まるで二人の世界を覆い隠すように、ふわりとローゼリアを包み込んだ。
彼女の鼻腔をくすぐるのは、彼の、少しだけ焦げ付いた魔力と、彼の自身の温かい、男らしい匂い。
安心感と、今まで感じたことのない高揚感が、ローゼリアの全身を駆け巡った。
カスパールは、ローゼリアの柔らかな髪に顔をうずめる。
「……好きだ……」
絞り出すような、掠れた声。
その一言に、ローゼリアの瞳から、嬉し涙が溢れ出した。
***
翌日。
白亜の城の庭園で、私たちはいつも通りの日常を楽しんでいた。
カスパール君は、相変わらずローゼリアちゃんに素直になれないツンデレっぷりを発揮しているが、以前のようなひねくれた態度は鳴りを潜めている。
「おい、ローゼリア。そこでボーっとしてないで、これも手伝え」
カスパール君は庭の手入れをしながら、ローゼリアちゃんに声をかける。
「はーい!カスパール君!」
ローゼリアちゃんは、嬉しそうに駆け寄っていく。
彼女の桃色の宝珠のペンダントが、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
カスパール君は、そんなローゼリアちゃんの姿を、チラリと盗み見て、頬を赤く染めている。
彼の耳元に輝く紫の宝珠のピアスは、そのローゼリアちゃんの姿が、彼の心の中でどれほど「可愛い」と思っているかを、伝えているようだった。
「まったく、本当に手がかかるな……」
カスパール君の言葉とは裏腹に、彼の表情はとても穏やかで、幸せそうだった。
そして、彼の肩には、いつものようにフワワが乗って、二人の様子を嬉しそうに見守っている。
ローゼリアちゃんとカスパール君の、じれったくて、見ている方がキュンとなる、二人の物語は、ここから本当の始まりを迎えたのだ。
彼らの絆は、ルシアン様と私、そしてアルドロンさんとリリアさんの絆と共に、白亜の城に温かい光を灯し続けるだろう。
この度は、「ガイア編」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
初めての連載で、まだまだ拙い部分も多々あるかと思いますが、最後までお付き合いいただけたこと、心より感謝申し上げます。
作品をブックマークや評価してくださり、本当にありがとうございます。その一つ一つが、私の執筆の大きな励みとなっております。
物語は、いよいよ「魔界編」へと続きます。新たな舞台で、彼らがどんな日々を紡いでいくのか、私自身もとても楽しみです。引き続き、セラフィナとルシアン様、そして仲間たちの物語を応援していただけたら嬉しいです。




