第十四章(3):神の苦悩と「推し愛」の奇跡
「ああ、佐倉花君。君が、私の作品を読んで、ルシアン君を……そして、この物語を愛してくれていたこと……とても嬉しかったよ」
え、神様が喜んでくれるなんて……!
尊い!
エリアス様の話は続く。
ガイア様がね、ある時、自分が創った私の元の世界に飽きて、エリアス様に譲ってしまったらしいんだ。
それで、エリアス様はその世界を見て、「なんじゃこりゃあ!」ってなったのが、人間独自の文化……漫画とかゲームとかの「面白いカルチャー」だったらしい。
それで、まさかのコミケに女神のコスプレで参戦して、人間の創作活動の熱量に触れて、「私も大好きな五光の勇者の物語書いちゃおっかな!」ってなったんだって!
「……あの時……コミケ会場で……私に、ルシアン様のアクスタくれた、お姉さま……!」
あああああ!
思い出した!
まさか、あの時の麗しいお姉さまがエリアス様でだったなんて!
「私の作ったルシアン君のアクスタに神力を込めておいたんだ。そして、あのアクスタは、君が『佐倉花君としていた元の世界』と『今いるセラフィナの世界』を行き来する鍵なんだよ」
な、なんですってー!?
ルシアン様のアクスタが異世界転移の鍵だったとは!
推しグッズって偉大!
エリアス様は、穏やかな声で、まるで奇跡の種明かしをするように語ってくれた。
「遙か昔……この世界が悪魔ヴェクスによって脅かされていた頃……私は、この世界の運命を知っていたんだ。ヴェクスが滅びても……創造神ガイアは、いつか世界をリセットするだろう……とね。彼女の完璧主義は、世界の『歪み』を許さないんだ……そして、私が『えありす』として描いた、この世界の物語の結末が、悲劇に終わってしまうことに……苦悩していたよ……」
衝撃だった。
私が読んでいた物語、ヴェクスを倒しても世界はリセットされる運命だったなんて!
そして、エリアス様は、その運命を変えたいと願っていた……
作者として、そして推しとして!
神様も推し活するんだ……!
「そんな時……私の神力に、微かな、だが、あまりにも純粋で、強い『祈り』が届くようになったんだ。世界の理の外から……君の、元の世界からだ。一人の少女が、この世界……そして、魔法使いの王ルシアンへの、あまりにも深く、熱い想いを込めて、毎日、毎日、祈っていた……『願わくば、私のルシアン様の明日が、いい日でありますように……。そして、ルシアン様の世界がずっとずっと平和でありますように……。』とね」
エリアス様は、私の顔を見て優しく微笑んだ。
「その祈り……君のものだったんだろう?」
ああ、もう……胸が締め付けられる。
私の……前世での、あの祈りが、神様に届いていたなんて……!
しかも、その祈りが、この物語を動かした……!
私の推し愛、半端ない!
「そして、その祈りと共に、世界の理を越える力を秘めた……君のその、純粋で、あまりにも強い『推し愛』が、世界の理を超えた力……可能性を見出したんだ。君の魂は……この世界に生まれたセラフィナの魂と、響き合っていた……同じ魂、だからこそ……」
エリアス様は、さらに続けた。
「ガイアのリセットを防ぐには……武力でも対話でもない、全く別の力……世界の理にはない、予測不能な『歪み』が必要なんだ。そして、君のその『推し愛』……それは、世界の理の外で生まれた、あまりにも純粋で、強い感情……それこそが、ガイアのリセットを防ぐ鍵になるかもしれないと。だから……私は、君を……この世界へ召喚したんだ……セラフィナとして。君の推し愛が、この物語を……ハッピーエンドに導いてくれるのではないかと、可能性に賭けてみたのさ」
マジか……! 私の推し愛、世界を救う可能性を秘めていたなんて……!
私の推し愛が……世界の命運を握っている……!?
尊い!
アルドロンさん、ローゼリアちゃん、カスパール君も、驚きを隠せない様子だった。
私が転生者なのは知っていたけれど、その理由が神様による召喚で、しかも私の「推し愛」が理由で、さらに目の前の神様が自分たちの「物語」の作者「えありす」だったなんて……!
情報量が多すぎて、みんなの頭がフリーズしているのが分かる!




