第十章(1):宝珠は指し示す、推しへの道
大賢者アルドロンさんの緑、私の赤、大僧侶ローゼリアちゃんの桃色、そして大魔導士カスパール君の紫。
私たち四人の宝珠が、それぞれの縁の地で全て覚醒した!
宝珠は私たちの装備にセットされ、その力は、あの頃の前世の全盛期を超えているかもしれないほどのものだ。
アルドロンさんの膨大な知識、私の聖剣技、ローゼリアちゃんの癒やし、そしてカスパール君の規格外の魔法!
四つの宝珠が放つ光は、今、一点に集まり、力強い光の柱となって、遥か彼方へと伸びていく。
アルドロンさんが、杖の先の緑の宝珠を光らせながら、確かな声で言った。
「宝珠はお互いを導きあう性質を持つ。ここには、完全に覚醒した四つの宝珠がある。これらの宝珠が指し示す場所は…つまり…ルシアンの宝珠のある場所…あるいは、ルシアンの気配が強く残る場所だ!」
「ルシアン様の宝珠のある場所! この光が指し示している…! ルシアン様のいる場所へ…!」
感動と、ルシアン様との再会へのあまりにも大きな期待で、私の心臓はバクバクと激しく鳴り響いている。
長い、長い旅だった。
三千年という途方もない時を超えて、転生して、かけがえのない仲間と再会して、そしてルシアン様が遺してくれた宝珠を覚醒させて…この全ては、この瞬間のためだったんだ!
私の「推し」に、やっと会えるかもしれない…!
期待と、そして少しばかりの不安が入り混じった感情で、胸がいっぱいになる。
宝珠の示す光の柱は、物理的な道というより、世界の理を越えるような、次元を歪めるような感覚を伴うものだった。
その光を追って進むにつれて、周りの景色は次第に奇妙になっていく。
空の色は澱み、地面は不自然に波打ち、遠くで聞いたこともないような、不協和音のような音が響く。
世界の理が歪み始めている…
異界の気配が強くなっている証拠だ。
「ここから先は、次元が不安定になっている領域だ。創造神ガイアの管轄から外れつつある…あるいは、既に外れている領域…異界に近い」
アルドロンさんが、杖の緑の宝珠を光らせながら、冷静に分析する。
彼の額には、少しばかり緊張の色が浮かんでいる。
未知の領域への警戒心だ。
「この空気…なんだか、少し異様な感じがします…」
ローゼリアちゃんが、桃色の宝珠のペンダントをそっと握りしめ、不安げに呟く。彼女の敏感な心が、異界の不穏な気配を、肌で感じ取っている。
「フン…ようやくか。退屈だったんだよ。異界だろうがなんだろうが、構わねぇ。もっとヤバい場所へ行こうぜ、ルシアン様のところへ!」
カスパール君は、耳元の紫色の宝珠のピアスを指先で弾き、不敵な笑みを浮かべた。
彼の紫色の瞳は、未知の領域への探求心と、ルシアン様への執着でギラギラと輝いている。
彼の体から放たれる魔力も、覚醒したばかりの紫色の宝珠の力で、以前よりもさらに強力で、そして少し危険な気配を纏っている。