第51話
そして、その考えは貴族に根強いため、今も平民には必要以上の教育を施さないっていうのは聞いたことがある。
「まずは……精霊術師を育成していかないと」
「そうだね。出来る限り、改善はしていくよ。それでもやっぱり手遅れになってしまうことは多いんだ。……だけど、この立場でしか救えない命があるのも事実なんだ。……だから、そう落ち込まないで」
「……うん」
「ごめんね。悩ませてしまって。キミたちがもっと成長したときに、こういったことがなくなるよう僕たちも頑張るからさ。もう少しだけ、我慢してはくれないかな?」
申し訳なさそうな笑みを浮かべたベールド様。
……そこまで言われてしまって、否定できるはずがなかった。
「ベールド様。私、一つ相談したいことがある」
「なにかな?」
「私は、精霊術師の才能を見つけることができる。だから、専門の教育機関を用意してほしい」
「……え、どういうことだい? み、見つけられるの? え、ほんと?」
「うん」
精霊術師の才能は使ってみないことには分からない。
そのポテンシャルだってどれほどのものかは明確には分からない。
けど、私は微精霊たちに聞くことでその判断ができる。
もっといえば、今精霊術師として才能がない子にも、その子の持つ魔力を好む微精霊を紹介できる。
つまり、精霊術師を増産することも可能だ。
「私がこれから任務の先々で見つけた精霊術師の卵が、平民でもスラムの子でも教育を受けられるようにして欲しい。そういう機関があれば、これから国の戦力はどんどん増えていくと思う」
「……そう、だね。確かにそういう方面からアプローチをすれば、上も動かせるかもしれない。……うん! ルクス、それは素晴らしい提案だよ! ハグさせてくれないか!」
「やめて、セクハラで上に報告するから」
「ああ、もう冷たい反応だね! とにかく、一度上にかけあってみよう! 良い話が出来た、ありがとうルクス! それじゃあ次の任務までゆっくり体を休めてね!」
ひらひら、と手を振ってきたベールド様に頷いてから私は部屋を出た。
今出来ることを全力でやろう。
「精霊術師の発掘、か。それは良い提案だ。たくさん増えれば、ルクスの負担も減るしな」
「うん」
「我も頑張って探してみよう」
『えー、ティルガって全然探知能力ないじゃん!』
「……そ、それは――」
『僕たちの方がこういうのは得意だよ! まっかせてね、ルクス!』
「うん、みんなありがと」
微精霊にずばっと言われ、ティルガは少し落ち込んでいた。そんな背中を軽く撫でる。
すべてを助けるのは難しくても、間に合う命は助けられるように。
精霊術師としての力はもちろん、それ以外の部分でも……多くの人を助けられるように頑張ろう。
私は刀の柄を握りしめ、改めて決意を固めた。





